え?
 隼理くんの知っている人?
 栗原さんって?

 そう思いながら隼理くんの方を見ると。


「二年前、栗原が一年生のとき、担任だった」


 私が思っていることを察してくれたのか。
 隼理くんはすぐにそう言った。


 ということは。
 栗原さんは私と同じ学校。
 そして同じ学年。

 栗原さんとは同じクラスになったことがなく、話をしたこともない。
 そのため今まで知る機会がなかった。

 だけど、もしかしたら廊下ですれ違ったことはあったかもしれない。



「飛鷹先生には二年前、お世話になりました。
 神城さんは、初めてだよね?」


 そう思っていると。
 芦達先生は栗原さんの隣に立ってそう言った。


 そのすぐ後。
 栗原さんがソファーから立ち上がり。
 丁寧に会釈をした。


「紹介します。
 僕の妹の雅姫(みやび)です」


 芦達先生はそう言った。
 栗原さんのことを『妹』と。


 それを聞いた瞬間。
 驚き過ぎて声が出なかった。


 芦達先生と栗原さんが兄妹。

 二人は名字が違う。
 そして兄妹で同じ学校の教師と生徒。

 だから二人が兄妹だなんて。
 全くわからなかった。

 というか。
 今日、初めて栗原さんのことを知ったのだから。
 わからないのも無理はない、かな。


「僕と雅姫が兄妹だということは
 学校内だと校長先生以外、誰にも話していませんでした」


 そんな大事な話。
 芦達先生は私と隼理くんに……。

 今日、芦達先生が話すであろう大事な話。
 その話と何か関係があるのだろうか。