こうして。
 私と隼理くんは。
 生徒たちに私と隼理くんのことを伝えることを決意し、今に至る。

 緊張してパフォーマンスをすることが楽しめないかもしれない。
 そう思ったのは、この為。


 けれど。
 なぜ生徒たちに私と隼理くんのことを伝える必要があったのか。

 私と隼理くんが共に未来を歩いて行くのみなら。
 わざわざ生徒たちに伝える必要はない。

 そうすることになったのは。
 私のため。

『私は大丈夫だから』
 隼理くんにそう言ったのだけど。
 隼理くんは伝えるべきだと言った。

 その理由は。
 私のことを守るため。
 そして。
 警告するため。

『俺がどこにいても。
 夕鶴は俺が守る。
 だから誰にも何もさせない』
 と、間接的に伝えたかったから。


 隼理くんが生徒たちに伝えたこと。
 それは午前の部にパフォーマンスを観覧した生徒たちは聞いていない。

 だけど。
 たぶん午後の部の生徒たちが午前の部の生徒たちに広めるだろう。
 そう想定している。


 私と隼理くんは。
 覚悟を決め。
 生徒たちに伝えた。
 そのことに全く悔いはない。



「行こう、夕鶴」


 隼理くんは私の手を握り。


「悪いな、夕鶴のこと、連れていく」


 バンドメンバーにそう言って。
 その中の一人にマイクを渡した。

 そして――。