「えっ⁉ 飛鷹先生⁉」

「どうして、ここに?」

「もしかしてサプライズで登場?」

「飛鷹先生も歌うのかな?」

「飛鷹先生の歌声、聴きたい」


 バンドメンバー、観覧している生徒たち。
 みんな驚いてざわざわしている。

 その理由は。
 隼理くんが体育館の舞台に来たから。


 教師は夏フェスのとき、ほとんど顔を出さない。

 準備や進行など全て生徒たちに任せている。

 何か必要なことがあるときのみ教師が手助けをする。

 なので。
 全てのパフォーマンスを披露し終え、夏フェスが幕を閉じた今。
 教師である隼理くんが舞台に上がってくることは。
 周りの生徒たちからすれば驚きの光景。
 に見えても不思議ではない。


 ……けれど。
 私は。
 全く不思議とは思っていない。

 というより。
 知っていたから。
 隼理くんが夏フェス終了直後に体育館の舞台に来ることを。

 もっと言えば。
 隼理くんと私で話し合って決めたことだから。


 体育館の舞台に来た隼理くんは私の隣に並んだ。

 隼理くんは私のことを見つめ。
 私も隼理くんのことを見つめた。

 私と隼理くん。
 合図をするように頷き合った。

 そのあと隼理くんは。
 私がパフォーマンスのときに使用していたマイクを手に取り。
 視線を私から観覧している生徒たちの方に向けた。

 そして――。


「突然このようなことを伝えることを許してほしい」


 隼理くんは観覧している生徒たちに話し始めた。


「正直なところ本当に伝えていいのか迷うところもあった。
 だけど、このままでは俺と……夕鶴は前に進むことができないと思った」


 夕鶴――。

 隼理くんが生徒たちの前で私のことをそう呼んだから。
 静まりかけていた体育館内が。
 再びざわつき出した。


「俺は――」


 ついに――。


「ここにいる神城夕鶴と付き合っている―――」


 伝えた――。


 マイクを通してスピーカーから放たれた隼理くんの声、そして言葉。
 それを聞いて。
 ざわついていた生徒たちがシンと静まり返った。


 ……?

 あれ……?

 なんか意外な反応。

 まさかシンと静まり返るとは。


 と思った、ら……。