「だっ……大丈夫だよっ、職員室に行かなくてもっ。
 ただのイタズラだと思うしっ」


 そう思った私は朝海にそう言ったのだけど。


「イタズラだとしても悪質すぎるでしょ。
 しかも二回も‼
 また同じ目にあったらどうするの」


 そう言った朝海の職員室へ向かう足は止まる気配がない。


 朝海の行動。
 そのことに戸惑っている。
 そんな自分がいる。

 けれど。

 朝海の気持ち。
 それはすごく嬉しい。

 朝海は私のために職員室に行ってくれようとしている。
 それは、とてもありがたく感謝しかない。



「着いた、職員室」


 心の中で朝海に感謝していると。
 あっという間に職員室に着いた。


 まずはノックをして。
 戸を勢いよく開けた。


「失礼します‼」


 朝海が勢いよく戸を開けた音と。
 朝海の大きい声。

 それに反応して。
 何人かの先生たちが私と朝海のことを見た。


 それでも朝海は全くお構いなしの様子。
 私の腕を掴んだまま職員室の中に入っていく。

 そして真っ先に向かったところは―――。


「飛鷹先生‼」


 なんと隼理くんの席。


 って。
 確かに。
 私と隼理くんに関する内容のことだから。
 隼理くんの席に来ても不思議ではない……よね。


「どうした、嬉野。
 ……神城も」


 隼理くんは驚いた様子で私と朝海のことを見た。


「飛鷹先生っ、これ見てください‼」


 朝海は隼理くんに私の下駄箱に入っていた紙を渡した。


「これ、どう見ても脅迫状ですよね」


 朝海から手渡された紙を見た隼理くんは一気に深刻な表情(かお)をした。


「この紙はどこで……?」


「夕鶴が手にしていました。
 夕鶴、紙はどこに?」


「私の下駄箱の中」


「だそうです」


「……これは……相当深刻なことだ。
 今回が初めてか?」


「いえ、ちょうど一週間前にも」


「そのときになぜ言わなかったんだ」


 そう言った隼理くんの瞳の奥が。
 苦しそうで辛そうに見えた。