「ちょっと、これ脅迫状じゃない‼」


 朝海の声が。
 あまりにも大き過ぎて。

 その声に反応して。
 昇降口にいる生徒たちが一斉に私と朝海のことを見た。


「ちょっ……ちょっと、朝海、声が大きい」


 私は小声で朝海にそう言った。

 そのときの様子は。
 生徒たちに一斉に見られて。
 ものすごく焦って動揺したためか。
 そわそわして挙動不審のようになってしまった。


「だっ……だって、こんなものを見たら、
 びっくりして大きな声が出るよ」


 と、言いながらも。
 さすがにまずいと思ったのか。
 今は声のボリュームを抑えて話した、朝海。


「こういうことされるの、今日が初めて?」


 深刻な表情(かお)をして紙を見ている、朝海。


「ううん、ちょうど一週間前に……」


「行こう」


 私が返答をしたすぐ。
 突然、朝海がそう言った。


 朝海?

『行こう』って、どこへ?


「ほら、こういうことは一刻も早くしないと‼」


 朝海はそう言うと、私の腕を掴んで歩き出した。


 どこに行くのか。
 朝海は何も言わない。


 ねぇ、朝海。
 一体どこへ向かっているの?


「あっ……朝海。
 一体どこへ向かって……」


「職員室よ」


 私が言い終わる前に。
 朝海は即答した。


「しょっ……職員室って、
 どうして……」


「『どうして』じゃないでしょ。
 こういうことは、きちんと報告しておかないと」


 またまた言い終わる前に朝海が即答した。


 ダッ……ダメ……ッ。
 職員室はっ。

 そこに行って報告してしまったら。
 騒ぎになって。
 隼理くんに迷惑がかかってしまう‼