「店長」


「うん?」


「このあと、お時間ありますか」


「うん、あるよ」


「一緒に夕飯食べに行きませんか」


 夕飯……。
 亜南くんと……。


 あの日。

 亜南くんに……想い……を打ち明けられて……。

 その日以来だ……。
 亜南くんと二人で夕ご飯……。


 仕事中は集中しているから思い出すことはほとんどない。

 けれど。
 そこから離れると。
 思い出さない、と言ったら噓になる。

 家に帰れば。
 何回か思い出す。

 ちゃんと考えて。
 答えを出して。
 亜南くんに返事をする。

 どういう答えになるのかは。
 今はまだわからない。

 亜南くんのこと。
 どういう気持ちを抱いているのか。
 はっきりとしていない。

 だけど。
 どちらの答えになろうと。
 誠意をもって伝えなければいけない。

 それは。
 最低限しなければならないこと。


「うん、行こう」


 そう思いながら亜南くんに夕飯を食べに行く返事をした。



 * * *


 夕飯を食べ終え。
 私と亜南くんは、あの日のように公園を歩いている。


 六月の上旬。
 夏の入り口に入り、やさしく吹く風も夏らしい匂いになっている。

 季節の匂い、好きだな。

 春夏秋冬、それぞれの季節を感じることができるから。


 って。


「あっ」


 と、思ったときには。
 身体が傾いていた。

 気付かなかった。
 段差があったことに。

 転んでしまう、このままでは。


 そう思ったとき。
 倒れていくはずの身体が動きを止めた。

 私の身体は。
 亜南くんの両腕で支えられていた。


「大丈夫ですか」


 耳元で亜南くんの声が広がった。


「ありがとう、亜南くん」


 亜南くん。
 スラっとしているように見えても。
 やっぱり男の人だな。
 腕もがっちりとしてたくましい。


 そう思いながら亜南くんから離れようと……。


 って。

 亜南くん……⁉