声がする方を振り返ると。
注文を受けてくれた店員さんが、こちらに向かって小走りしている。
何か忘れ物をしてしまったのか。
そう思っていると、店員さんが俺の目の前に。
「申し訳ありません。呼び止めてしまいまして。
お客様は店長……遥稀さんの同級生の方ですよね?」
え……?
俺のことを知っている……?
「そうですけど……?」
「突然すみません。
前、お客様と遥稀さんが一緒にいるところを見かけたものですから……」
そういうことだったのか。
店員さん、俺と遥稀のことを見かけたのは昨日とは言っていなかったな。
ということは。
合コンで遥稀と偶然再会した、あの日のことを言っているのかな。
「そのことを遥稀さんに話してみました。
そうしたら偶然再会した同級生だと言っていたので……」
やっぱり。
店員さんが見かけたのは、あの日。
「申し遅れました。
僕は政輝亜南と申します」
丁寧な印象。
客相手だからかな……?
「僕は松尾聖志と申します」
つられて。
俺も同じ言葉づかい。
「……あの……
初対面の方に、このようなことをお訊ねするのは、あれなのですが……」
……?
なんだろう。
すごく訊きづらそうにしている。
よほど訊きづらいことなのだろうか。