「おじゃまします」


 しばらくしてから真彩が俺の部屋に来た。


「すごいね、
 いつ来ても、ちゃんと片付いているね」


 俺の部屋に来ると、真彩はいつもそう言ってくれる。


「そうかな」


「そうだよ。
 男子の一人暮らしの部屋で、こんなにも片付いているなんて優秀」


 ……真彩……。

 違うから、本当は。

 必要以上に片付けている。
 それは大事な趣味の小道具たちを隠さなければいけないから。
 そのために必死に片付けているだけだから。

 そんなこと真彩に言うことはできない。





「真彩、何飲む?
 いつものりんごジュースでいい?」


 真彩はりんごジュースが大好き。
 俺の部屋に来たときは、いつもりんごジュースを飲んでいる。

 だから真彩が来る日は、ちゃんとりんごジュースを用意している。


「ありがとう。
 柚翔(ゆずと)はいつも準備がいいね」


 真彩は笑顔でそう言った。


「そう?
 ただ真彩が好きなりんごジュースが冷蔵庫の中にあるだけだよ」


「ほんと優しくて気遣いもあるね、柚翔は」


 真彩にそう言われて少し照れくさくなった。