「……わかった……」


 そう言うしかできなくなってしまう。


「本当っ? 柚翔っ」


 喜んでいる真彩。


「たっ……ただしっ」


 だけど。


「ただし……?」


 100%。


「外へは出ない。
 部屋の中でだけだ」


 真彩の期待には応えられない。

 部屋の中。
 それが限界だ。


「えぇ~、外へは出ないの~」


 少しつまらなさそうにしている真彩。


「部屋の中というのを守ってくれないのなら、その話はなしだっ」


 必死だった、俺も。

 仮装の設定。
 とはいえ、女装をして外には出たくない‼

 それを守る。
 そのためにも、少しは真彩にビシッと言わなくては。


「ぶぅ~」


 言えたのはいいけれど。
 真彩はふてくされてしまった。


「柚翔のケチ」


 まさか。
 思わなかった、言われるとは。
 真彩に『ケチ』だなんて。


「ケチって……」


 その言葉にどう言い返していいのかわからない。


「なんで外に出てはいけないの?」


 その間にも真彩は新たな質問をしてくる。


「なんでって……出たくないから……」


 上手い返答が思い浮かばない。
 なので思っていることを正直に言うと。


「なんで~、
 女装と男装のカップルって、珍しくて面白いのに~」


 気が進まない俺の態度に真彩は残念そうにしている。


「なにが面白いんだよ」


 そんな真彩にツッコミを入れた。