「この世紀の瞬間に、瀬戸さんが立ち会ってくれるなんて嬉しいな。もしも素敵な幽霊さんとお知り合いになれたら、瀬戸さんにも紹介してあげるね!」


楽しそうな水無月くんの声を聞きながら、されるがままに握られた手を振られていると、次第にフリーズした脳が機能し始め、どっと疲れが押し寄せてきた。


「あっ、そうだ!せっかくだから、放課後に三階のトイレに行って噂の幽霊さんに会ってこようよ。みんなはすごく怖がっているけど、きっと話してみればそんなに悪い人じゃないと思うんだ」


「ねっ、いいでしょ?」と顔を寄せてくる水無月くんから逃げるように距離を取って、掴まれた手をそっと抜き取り前を向く。
まだホームルームも始まっていないのに、これ以上疲れてしまったら今日一日体が持たない。


「私、別に興味ないから。水無月くんお一人でどうぞ」

「大丈夫!興味はあとからだってついてくるよ。それとも、何か予定でもあるの?」


前に回り込んで顔を覗き込もうとする水無月くんを避けて、今度は顔を横に向ける。