何となくそわそわする気持ちを抑えつつ、いつものように席について、いつものように鞄から教科書やノートなんかを出しながら、ちらちらとドアの方を窺う。


「おはよー」

「昨日お笑い番組やってたの観たか?」

「数学のプリントの最後の問が難問でさ……」


楽しげな、もしくは憂鬱そうなクラスメイト達の会話を聞きながら、何度も何度もドアの方を向いては前に向き直ることを繰り返す。
いつもならもうとっくに登校している時間なのに、今日もまた水無月くんの姿は見えない。


「昨日の今日だもんな……さすがの水無月くんでも」


諦めの混じった気持ちで呟いて机に顔を伏せると、しばらくしてとんとんと柔らかく肩を叩かれた。

またクラスメイトの誰かが、水無月くん不在で落ち込んでいると勘違いして慰めに来たのだろうか……だとしたら激しく見当違いだから放って置いて欲しい。
寂しいのでも、落ち込んでいるのでもなく、今日も水無月くんはお休みなのかどうか、ほんのちょっと気になっているだけなのだから。