「おーい、瀬戸ちゃん。おにぎりの鮭がぽろぽろ零れてるぞー」


友人の声にハッとして視線を落とすと、スカートの上に盛大に鮭フレークが散らばっていた。


「ああ……!」


慌ててスカートの鮭フレークを拾い集めると、ティッシュを広げてそれで包み込む。
思い思いに机にお弁当やら菓子パンやらを広げて昼食中の友人達は、みんなしてそんな私を意味ありげに見つめてくる。


「やっぱり水無月くんがいないと、調子が出ないんだね。瀬戸は」


断じて違う。
今日一日、私が何かやらかすたびに、全てが水無月くんの不在へと結び付けられるが、それは絶対に違う。
でも何度言っても「はいはい」と適当にあしらわれてちっとも聞き入れてもらえないから、私もいい加減諦めた。


「今頃水無月くんも、ベッドの上で熱に浮かされながら瀬戸ちゃんのこと考えてるかもよー」


語尾にハートマークがついたそのセリフは、明らかに私の反応を見て楽しもうとする魂胆が見え見えだったから、さらっと聞き流しておにぎりを頬張る。
具のなくなったおにぎりは、思っていたよりもずっと味気ない。





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