「でも水無月くんのことだから、きっと明日には元気に登校してくるよ!だから瀬戸ちゃん、元気出しなよ」


そう言ってぽんっと肩を叩いて去っていくクラスメイトを見送り、首を傾げる。

さっきから何度も同じ慰めの言葉をかけられるが、別に私は落ち込んでいないし、水無月くんがいなくて寂しいなんて思ってもいない。
むしろ、ようやく訪れた平和な日常に喜びで心がはち切れそうだ。

それなのに、みんなには元気がないように見えるらしい。


「……水無月くんの理解不能な話を聞かされなくて済む朝はものすごく平和だし、水無月くんに振り回されて終わる放課後は自由に好きなことが出来るからとっても幸せなのに」


この間もまた、ハヤブサ運送のトラックを捜して街中あてもなく歩き回った末に、ファミリーレストランに引っ張り込まれて反省会を始められ、くたくたになって帰宅したあとの宿題地獄。

結局またやりたいことは何一つ出来なかったが、今日ならばずっとお預けをくらっている漫画の新刊だって、溜まりに溜まった録画だって、お昼寝だっておやつだって、好きなことをし放題だ。

今から放課後が楽しみでしょうがないのに……みんなには、落ち込んでいるように見えているのだろうか。