「僕からのメロンパンを受け取ってしまった瀬戸さんは、桃太郎ルールによって僕のお供をしなければならないのです!」


水無月くんが大変得意げに言い放った。


「……桃太郎ルールなんて聞いたことないんですけど」

「きびだんごを受け取ったものは、問答無用で桃太郎のお供をしなければならないっていうあのルールだよ?」

「いや、あれはそういう強制連行的な話じゃなくて……」


得意げな水無月くんの言い分と、ズレまくっている桃太郎についての解釈をなんとかしてやろうと試みるも、独自の世界で生きる彼には悲しいほどに通用しない。


「でも約束は約束だからね!瀬戸さん、メロンパン受け取ったでしょ?」


にっこり笑って指差したパンを、慌てて突き返してやろうと思った瞬間、敗北を告げるチャイムが鳴り響いた。


「それじゃあ放課後ね。忘れないでよ!」


素早い動きで自分の席に戻っていく水無月くんを、突き返せなかったメロンパンと共に呆然と見送って、深々とため息をつきながら机に突っ伏す。
またしても、まんまと彼に乗せられてしまった。