えへへと嬉しそうに笑ってみせる水無月くんをよそに、まだ半分眠っている脳内で、大型の犬に様々な仕事着を着せてみるが、どれもあまりぴんと来ない。
そもそも、大きくてスピードの速い仕事中の犬とは何者なのか……。


「やっぱりサブさんはすごいね、あんなに大量の荷物を乗せて走るんだから。それも、北は北海道、南は沖縄まで走るんだってよ!船に乗って海も超えちゃうんだってよ!本当にすごいよね」


私の頭の中には今、巨大なリュックを背負って高速道路を物凄いスピードで駆け抜け、時には汽笛の鳴り響く船の甲板で潮風にあたる大型犬がいる。
車と並んで走っていたその犬が急ブレーキをかけて立ち止まった瞬間、手の上からガクッと顎が落ちて、その衝撃に目が覚めた。


「今度見つけた時は、瀬戸さんにも紹介するね。あっ、それとも今日の放課後捜しに行こうか!もしかしたらまだその辺を走っているかもしれないし」


わくわくした表情で放課後の予定を立て始める水無月くんを前に、ようやく覚醒した私は首を傾げる。


「サブって名前の、リュック背負ったでっかい犬の話してたんだっけ……?」


その問いかけに、今度は水無月くんがこてっと首を傾げた。


「違うよ。“サブさん”って名前の、ハヤブサ運送の大型トラックの話をしていたんだよ」