水無月(みなづき)くん、この間のテストでまた学年一位だったらしいよ」

「スポーツテストでもぶっちぎりの一位だったってね」

「わたしなんて、この前生徒会の資料作り手伝ってもらっちゃった!」

「あんなにかっこよくて、こんなに完璧なのに……」


水無月くんは、いわゆる残念なイケメンだ。


「「「神様ってほんと残酷……」」」


深いため息と共に肩を落とす彼女達が言うように、何でも出来る完璧さと、誰もが羨むパーフェクトな容姿を持っていながら、それを打ち消してしまえるほどの欠点をも兼ね備えているのが、水無月くんという人だ。


瀬戸(せと)さーん!」


そして私は、なぜかそんな残念なイケメン水無月くんに、とてつもなく懐かれている。


「おはよう瀬戸さん、いい朝だね!」


窓の向こうには、今にも雨が降りだしそうな重たい灰色をした雲が広がっている。気分まで重たくなりそうなほど、それはそれはどんよりとしている。
今朝の天気予報でも、降水確率は確か百%に近かったはずだ。
何をもって“いい朝”と呼んでいるのか、彼の考えていることはさっぱりわからない。