芋を山程掘ってきたので、一部をもらいうけて芋畑用とする。
家の裏側は木々が切り倒されていて、地面があちこち掘り返されていた。
どうやらここで、ブルストは芋畑を作ろうとしたのだな。
だが、オーガとは生来生産するということに向かない種族らしい。
適当にやっていたら、近くに埋めすぎた芋同士が栄養を取り合って痩せたものしか取れなかったし、痩せた芋すら猪がみんな食ってしまった。
怒ったブルストが猪を殴り殺し、シチューになって俺の腹に収まったというわけだ。
「生命は繋がっているな。こうして俺の空腹を満たしたと思うと、ブルストの失敗も無駄ではない。いや失敗しないに越したことはないんだけどさ」
俺は芋を前にして、考えた。
さて。
小学校の頃、じゃがいもを植えて観察したな。
まあ、芋なんてのはあんなノリでいいだろう。
だが、あの時、小学生だった俺は貴重な気付きを得たはずだ。
それは、じゃがいもの芽が全部の穴から出るようにしてると、しっちゃかめっちゃかになって大変だということだ。
きっとブルストの芋畑で起きたことも同様だろう。
幸い、この芋はさつまいもタイプではない。
じゃがいもタイプだ。
俺の知見が生きる。
これが、現代知識チートってやつだな……!
この世界の農夫も同じ知識を持ってるような気がするが!
「まずはお見せしよう。これこそ、俺が魔王城の結界を切り裂くために編み出した切断魔法! ジゲンキール(俺命名)!」
俺の突き出した手の先で、虹色に輝くひし形のフィールドが何枚も生まれる。
それは猛烈な勢いで回転をしており、これそのものが世界を切り裂くほどの強度を持つ刃となっているのだ。
そしてこれをそ~っとしゃがみ込んで、芋に当てる……。
スパッと大きなサイコロ状になった。
よしよし、意図したとおり、芽が出てくる穴はサイコロごとにあるな。
気を抜くとこの辺りの世界のテクスチャーを切り裂き引き剥がしてしまうからな。
だが、大は小を兼ねると言うし、強大な魔法はうまく使えばスローライフの助けになる。
俺は魔法を引っ込めた。
「なにそれ?」
「うおわーっ!!」
いきなり声を掛けられてびっくりした。
カトリナである。
殺気がない相手が後ろから近づいてくることなんて滅多にないから、察知できなかった……!
俺は無意識のうちに、敵対する可能性のある相手を識別、判別する自動防壁魔法エーテフィールド(俺命名)を張り巡らせているのだが、これをするりとくぐり抜けてきたのはカトリナが初めてだ。
あ、いや、ブルストも普通に抜けてくるな。なんだあのおっさん。
「どうしたんだカトリナ。もうちょっと先から声を掛けてもらえると安心だ」
「あ、そうか。お芋を切ってるもんね」
「そういうことだよ」
お芋を切ってる魔法を使う時、手が滑ったら世界が滅びかねないからね。
何せ、本来ならば魔王が張った結界を破るために、神々が作り上げた世界を割る槍が必要だったのだ。
しかし魔王マドレノースは狡猾。
槍を作ろうとした鍛冶神をなんやかんやあって、人間の娘に化けて籠絡し、油断したところを殺してしまった。
鍛冶神は最後の力で穂先を作ったが、それは魔王に奪われてしまった。
ということで、力技で結界を突破する羽目になったのだった。
大変だった……。
だがなんとかなった。
ちなみにその穂先こそが、俺の腰に佩いた聖剣、エクスラグナロクカリバーなのだ。
レベル限界突破してない奴が振ろうとすると食われるからね。
触っちゃだめだよ。
「それで、どうしたんだいカトリナ」
思い出から現実に戻ってきた俺が尋ねると、オーガの娘はにっこり微笑んだ。
「お弁当持ってきたの。お仕事頑張ってるでしょ」
「えっ!! こいつはありがたいなあ!」
俺はジーンと来た。
なんて親切な娘なんだろう。
結婚したい。
陶器の器にシチューが入っていて、ざく切りになった蒸した芋が載っている。
「古い器だから、食べ終わったら割ってその辺にまいておいてね。新しいのはお父さんが作ってると思うから」
「へえ、この器はブルストの手製だったのか」
「何もかもそうだよ。今着てる服は私が縫ったものだし、この辺りを切り開いたのはお父さんだし……。全部自分たちで用意しなくちゃいけなかったからね」
「そうか、大変だったな。だが、これからは一人増えたから、スローライフするパワーは十倍だぞ」
「あはは、十倍! そう言われるとなんか元気になってきちゃう」
カトリナが可愛くガッツポーズした。
そんなカトリナが用意してくれた弁当がまずいはずがない。
「うめえうめえ」
と食べきって、心身ともにエネルギー充填だ。
何ていうかここは、俺一人で頑張らなくていいのが新鮮だな!
お言葉に甘えて、器は地面に叩きつける。
土で出来てるから、こうして放っておくと土に還るんだそうだ。
ってことで、芋を植えていく。
土を、範囲限定の地震魔法ユラユラ(俺命名)で揺さぶって柔らかくほぐし、そこに間隔をもって芋を植えていく。
小学校の頃にじゃがいも栽培で身につけた俺のスキルは錆びついちゃいなかったようだ。
さながら俺は、じゃがいも栽培人ショートだな。
フフフ。
家の裏側は木々が切り倒されていて、地面があちこち掘り返されていた。
どうやらここで、ブルストは芋畑を作ろうとしたのだな。
だが、オーガとは生来生産するということに向かない種族らしい。
適当にやっていたら、近くに埋めすぎた芋同士が栄養を取り合って痩せたものしか取れなかったし、痩せた芋すら猪がみんな食ってしまった。
怒ったブルストが猪を殴り殺し、シチューになって俺の腹に収まったというわけだ。
「生命は繋がっているな。こうして俺の空腹を満たしたと思うと、ブルストの失敗も無駄ではない。いや失敗しないに越したことはないんだけどさ」
俺は芋を前にして、考えた。
さて。
小学校の頃、じゃがいもを植えて観察したな。
まあ、芋なんてのはあんなノリでいいだろう。
だが、あの時、小学生だった俺は貴重な気付きを得たはずだ。
それは、じゃがいもの芽が全部の穴から出るようにしてると、しっちゃかめっちゃかになって大変だということだ。
きっとブルストの芋畑で起きたことも同様だろう。
幸い、この芋はさつまいもタイプではない。
じゃがいもタイプだ。
俺の知見が生きる。
これが、現代知識チートってやつだな……!
この世界の農夫も同じ知識を持ってるような気がするが!
「まずはお見せしよう。これこそ、俺が魔王城の結界を切り裂くために編み出した切断魔法! ジゲンキール(俺命名)!」
俺の突き出した手の先で、虹色に輝くひし形のフィールドが何枚も生まれる。
それは猛烈な勢いで回転をしており、これそのものが世界を切り裂くほどの強度を持つ刃となっているのだ。
そしてこれをそ~っとしゃがみ込んで、芋に当てる……。
スパッと大きなサイコロ状になった。
よしよし、意図したとおり、芽が出てくる穴はサイコロごとにあるな。
気を抜くとこの辺りの世界のテクスチャーを切り裂き引き剥がしてしまうからな。
だが、大は小を兼ねると言うし、強大な魔法はうまく使えばスローライフの助けになる。
俺は魔法を引っ込めた。
「なにそれ?」
「うおわーっ!!」
いきなり声を掛けられてびっくりした。
カトリナである。
殺気がない相手が後ろから近づいてくることなんて滅多にないから、察知できなかった……!
俺は無意識のうちに、敵対する可能性のある相手を識別、判別する自動防壁魔法エーテフィールド(俺命名)を張り巡らせているのだが、これをするりとくぐり抜けてきたのはカトリナが初めてだ。
あ、いや、ブルストも普通に抜けてくるな。なんだあのおっさん。
「どうしたんだカトリナ。もうちょっと先から声を掛けてもらえると安心だ」
「あ、そうか。お芋を切ってるもんね」
「そういうことだよ」
お芋を切ってる魔法を使う時、手が滑ったら世界が滅びかねないからね。
何せ、本来ならば魔王が張った結界を破るために、神々が作り上げた世界を割る槍が必要だったのだ。
しかし魔王マドレノースは狡猾。
槍を作ろうとした鍛冶神をなんやかんやあって、人間の娘に化けて籠絡し、油断したところを殺してしまった。
鍛冶神は最後の力で穂先を作ったが、それは魔王に奪われてしまった。
ということで、力技で結界を突破する羽目になったのだった。
大変だった……。
だがなんとかなった。
ちなみにその穂先こそが、俺の腰に佩いた聖剣、エクスラグナロクカリバーなのだ。
レベル限界突破してない奴が振ろうとすると食われるからね。
触っちゃだめだよ。
「それで、どうしたんだいカトリナ」
思い出から現実に戻ってきた俺が尋ねると、オーガの娘はにっこり微笑んだ。
「お弁当持ってきたの。お仕事頑張ってるでしょ」
「えっ!! こいつはありがたいなあ!」
俺はジーンと来た。
なんて親切な娘なんだろう。
結婚したい。
陶器の器にシチューが入っていて、ざく切りになった蒸した芋が載っている。
「古い器だから、食べ終わったら割ってその辺にまいておいてね。新しいのはお父さんが作ってると思うから」
「へえ、この器はブルストの手製だったのか」
「何もかもそうだよ。今着てる服は私が縫ったものだし、この辺りを切り開いたのはお父さんだし……。全部自分たちで用意しなくちゃいけなかったからね」
「そうか、大変だったな。だが、これからは一人増えたから、スローライフするパワーは十倍だぞ」
「あはは、十倍! そう言われるとなんか元気になってきちゃう」
カトリナが可愛くガッツポーズした。
そんなカトリナが用意してくれた弁当がまずいはずがない。
「うめえうめえ」
と食べきって、心身ともにエネルギー充填だ。
何ていうかここは、俺一人で頑張らなくていいのが新鮮だな!
お言葉に甘えて、器は地面に叩きつける。
土で出来てるから、こうして放っておくと土に還るんだそうだ。
ってことで、芋を植えていく。
土を、範囲限定の地震魔法ユラユラ(俺命名)で揺さぶって柔らかくほぐし、そこに間隔をもって芋を植えていく。
小学校の頃にじゃがいも栽培で身につけた俺のスキルは錆びついちゃいなかったようだ。
さながら俺は、じゃがいも栽培人ショートだな。
フフフ。