「主食が芋ということは……」
「おう、掘りに行かなきゃな。めちゃくちゃ食うやつが増えたからな」
「ハハハ、カトリナの料理が美味いのだ」
「ええー。ふ、蒸しただけだよー」
もじもじするカトリナが大変かわいい。
「まだ口説くなよ」
ブルストに肘で小突かれた。
結構なパワーだが、俺のほうがレベルが高いので揺るがないのだ。
ちなみにいつなら結婚を申し込んでいいので……?
「おっ。朝の水汲みでも思ったけどよ。ショート、お前、すげえ馬力だよな」
「レベル……いや鍛えてるからな」
「いいぞいいぞ。その調子で、お前が凄いやつだってところを見せてくれりゃ、カトリナだって惚れるかも知れねえぞ」
「ちょっと、お父さん!!」
カトリナが、ブルストをポカポカ叩く。
あ、いや、ボスボス音がしてるな。
「痛え! いてて!」
「もー! お父さん、私はそんなんじゃないからね!」
この打撃音、さすがはオーガだな。
オーガの女性は人間の女性よりもちょっと大柄な程度だが、体組織が根本から違うのでとんでもない馬力があるのだ。
オーガの男ともなると、でかい牡牛と互角くらいのパワーがあると言うな。
優れた身体能力があるから、二人きりでもこんな辺境で暮らしていけてるんだろう。
「さて、芋掘り芋掘り」
基本的に詮索はしない主義だ。
俺自身、詮索されたら困る立場だからな。
国を捨てた救世の勇者だぞ? しかも王女との政略結婚を放り出している。
なるべく目立たないように、目立たないように暮らさねばな……!
王女の夫なんぞになったら、毎日公務で大変そうじゃないか。
人前で喋らされそうだし、社交パーティとかやるんだろ?
誰がそんなめんどくさいことやるか!
というか、なんかトラッピア王女怖いんだよね。
あれ、愛情とかなしで俺を道具と思ってるでしょ。
魔王をタイマンで倒した勇者を道具として使えると思ってる辺りがダメダメな香りがする。
俺はあえて魔法を使わず、芋掘りに取り掛かった。
「どれどれ? 地面は硬いが……まあ、卵の殻を割らない程度の優しさで掘ればいけるだろう」
そーっと地面をなぞる。
すると、みるみる土が抉れていった。
むき出しになる芋。
「ショート! お芋は生で食べちゃだめだよ。毒があるからね。しっかり蒸さないと、毒が消えないの」
「おう! というか、世の中は毒があるものばかりだなあ。やはり、スローライフするための技術と知識を身に付けなければ俺は生きてはいけなかっただろう……!! カトリナとブルストには感謝しか無い」
「そ、そんな大したことないよー」
カトリナが掘り出した芋を抱きしめてもじもじしている。
可愛い。
それから、その芋大きいな!
ブルストとカトリナはスコップを使って芋を掘り返している。
どうやら、森にはかなりの量が自生しているようだ。
「しかし、たくさん取ったら無くなったりしないのか?」
「場所を移して収穫する。取り尽くさねえで、ちょっと残しておくんだよ」
芋の小山を作ったブルストが説明してくれる。
ここの芋は、ちょっとの残しておけば一ヶ月くらいで増えるらしい。
だが、自然の物を採集するのはちょっと安定度がな。
「なあ、芋を持ち帰って栽培とかしないのか?」
「栽培? ああ、それもいいな。だが、この辺りには猪が多くてな。芋を掘り返して食っちまうんだ。何度かやろうとしたが、みんな猪にやられちまった。芋畑を作っても、二十四時間見張っているわけにはいかねえしなあ」
「なるほど、そこで捕まえた猪がシチューの具だったわけだ」
「そういうわけだな」
「安定して肉もあるといいよな」
「なんだお前、猪まで飼うつもりか。手が足りねえぞ!」
「でも、ショートは色々考えるんだねえ。凄いと思うよ?」
そうかな?
だが、俺はふんわりと、ぼやーっとしたイメージでそういうことを言っているだけなのだ。
というか、オーガ親子が採集生活をしてるのが意外だな。
「スローライフと言うと畑作をするものだと思っていたんだが」
「畑かあ」
「うーん」
ブルストが後頭部を掻いて、カトリナは苦笑いした。
「ダメなのか」
「ダメというかなあ」
「あのね、ショート。オーガってもともと、狩りとか、あとは略奪とかで生きてた種族だからね」
「ああ、もともと畑作向きじゃないのか」
「そういうこと。そうも言ってられないんだけどねえ……」
「なるほど。では、畑担当は俺ということだな」
「畑作るの!?」
カトリナが目を丸くした。
「無論。食料供給を安定させねばならないからな。猪に掘られない芋畑を作ってみせよう。俺には夢ができたんだ」
「夢?」
「パンを食う」
「パン? パンって、あのパン?」
「そのパンだ。なんか、ムギで作るんだろ? 作り方は知らんけど」
「知らないんだ」
「知らねえのかよ」
オーガ親子が笑う。
「おれたちも知らねえがな」
「私も」
「ってことは、俺たちはパンの作り方を知らない三人か……!」
これは、パンの完成まで大変だぞ。
だが、千里の道もまず一歩からと言う。
パンを作るために、俺はまずこの掘り出した芋を使って芋畑を作らねばならぬ。
「よし、俺は勇者改め、芋畑職人ショートだ!」
「おう、掘りに行かなきゃな。めちゃくちゃ食うやつが増えたからな」
「ハハハ、カトリナの料理が美味いのだ」
「ええー。ふ、蒸しただけだよー」
もじもじするカトリナが大変かわいい。
「まだ口説くなよ」
ブルストに肘で小突かれた。
結構なパワーだが、俺のほうがレベルが高いので揺るがないのだ。
ちなみにいつなら結婚を申し込んでいいので……?
「おっ。朝の水汲みでも思ったけどよ。ショート、お前、すげえ馬力だよな」
「レベル……いや鍛えてるからな」
「いいぞいいぞ。その調子で、お前が凄いやつだってところを見せてくれりゃ、カトリナだって惚れるかも知れねえぞ」
「ちょっと、お父さん!!」
カトリナが、ブルストをポカポカ叩く。
あ、いや、ボスボス音がしてるな。
「痛え! いてて!」
「もー! お父さん、私はそんなんじゃないからね!」
この打撃音、さすがはオーガだな。
オーガの女性は人間の女性よりもちょっと大柄な程度だが、体組織が根本から違うのでとんでもない馬力があるのだ。
オーガの男ともなると、でかい牡牛と互角くらいのパワーがあると言うな。
優れた身体能力があるから、二人きりでもこんな辺境で暮らしていけてるんだろう。
「さて、芋掘り芋掘り」
基本的に詮索はしない主義だ。
俺自身、詮索されたら困る立場だからな。
国を捨てた救世の勇者だぞ? しかも王女との政略結婚を放り出している。
なるべく目立たないように、目立たないように暮らさねばな……!
王女の夫なんぞになったら、毎日公務で大変そうじゃないか。
人前で喋らされそうだし、社交パーティとかやるんだろ?
誰がそんなめんどくさいことやるか!
というか、なんかトラッピア王女怖いんだよね。
あれ、愛情とかなしで俺を道具と思ってるでしょ。
魔王をタイマンで倒した勇者を道具として使えると思ってる辺りがダメダメな香りがする。
俺はあえて魔法を使わず、芋掘りに取り掛かった。
「どれどれ? 地面は硬いが……まあ、卵の殻を割らない程度の優しさで掘ればいけるだろう」
そーっと地面をなぞる。
すると、みるみる土が抉れていった。
むき出しになる芋。
「ショート! お芋は生で食べちゃだめだよ。毒があるからね。しっかり蒸さないと、毒が消えないの」
「おう! というか、世の中は毒があるものばかりだなあ。やはり、スローライフするための技術と知識を身に付けなければ俺は生きてはいけなかっただろう……!! カトリナとブルストには感謝しか無い」
「そ、そんな大したことないよー」
カトリナが掘り出した芋を抱きしめてもじもじしている。
可愛い。
それから、その芋大きいな!
ブルストとカトリナはスコップを使って芋を掘り返している。
どうやら、森にはかなりの量が自生しているようだ。
「しかし、たくさん取ったら無くなったりしないのか?」
「場所を移して収穫する。取り尽くさねえで、ちょっと残しておくんだよ」
芋の小山を作ったブルストが説明してくれる。
ここの芋は、ちょっとの残しておけば一ヶ月くらいで増えるらしい。
だが、自然の物を採集するのはちょっと安定度がな。
「なあ、芋を持ち帰って栽培とかしないのか?」
「栽培? ああ、それもいいな。だが、この辺りには猪が多くてな。芋を掘り返して食っちまうんだ。何度かやろうとしたが、みんな猪にやられちまった。芋畑を作っても、二十四時間見張っているわけにはいかねえしなあ」
「なるほど、そこで捕まえた猪がシチューの具だったわけだ」
「そういうわけだな」
「安定して肉もあるといいよな」
「なんだお前、猪まで飼うつもりか。手が足りねえぞ!」
「でも、ショートは色々考えるんだねえ。凄いと思うよ?」
そうかな?
だが、俺はふんわりと、ぼやーっとしたイメージでそういうことを言っているだけなのだ。
というか、オーガ親子が採集生活をしてるのが意外だな。
「スローライフと言うと畑作をするものだと思っていたんだが」
「畑かあ」
「うーん」
ブルストが後頭部を掻いて、カトリナは苦笑いした。
「ダメなのか」
「ダメというかなあ」
「あのね、ショート。オーガってもともと、狩りとか、あとは略奪とかで生きてた種族だからね」
「ああ、もともと畑作向きじゃないのか」
「そういうこと。そうも言ってられないんだけどねえ……」
「なるほど。では、畑担当は俺ということだな」
「畑作るの!?」
カトリナが目を丸くした。
「無論。食料供給を安定させねばならないからな。猪に掘られない芋畑を作ってみせよう。俺には夢ができたんだ」
「夢?」
「パンを食う」
「パン? パンって、あのパン?」
「そのパンだ。なんか、ムギで作るんだろ? 作り方は知らんけど」
「知らないんだ」
「知らねえのかよ」
オーガ親子が笑う。
「おれたちも知らねえがな」
「私も」
「ってことは、俺たちはパンの作り方を知らない三人か……!」
これは、パンの完成まで大変だぞ。
だが、千里の道もまず一歩からと言う。
パンを作るために、俺はまずこの掘り出した芋を使って芋畑を作らねばならぬ。
「よし、俺は勇者改め、芋畑職人ショートだ!」