「ふうん、今日から侍祭と暮らすの。いきなり大丈夫?」
カトリナが蒸してくれた芋を、丸太に腰掛けてむしゃむしゃやっていたヒロイナ。
今後の予定を話したら、ちょっとだけ目を見開いた。
もしや、カトリナが侍祭候補の娘たちを教育する期間があるとでも思っていたのか。
いや、あるんだけどな。
「そうそう。ヒロイナ一人だとまともに生活できないだろ」
「うっ、そ、それは……。ショートの顔を見に行くのも兼ねて、そっちにお邪魔しようかなって」
「うちはうちで困るので……! ということで、しばらく昼間はカトリナが二人に色々教えるので、ヒロイナは彼女たちと生活するように。二人ともー」
リタとピアを呼ぶと、、二人はぺこりと頭を下げた。
「よろしくお願いします、司祭さま!」
「あのヒロイナ様のお世話ができるなんて夢みたい!」
「よっ、よろしくねえー」
ちょっと引きつった笑いを浮かべるヒロイナなのだった。
さて、その日は大工チームに俺も加わり、急ピッチで教会の居住スペースを作り上げていった。
何のことはない、生活用のログハウスが教会の横にくっついているだけなのだが、三人分の部屋となるとなかなか手間がかかる。
俺のコピー魔法バイニナル(俺命名)で増やしてもいいのだが、たまに魔力暴走して増え続けるから止めておいたほうが良かろう。
「よし、とりあえず二部屋できた! お嬢ちゃんたちは二人で一部屋使ってもらえばいいだろ。ヒロイナはこっちの部屋な」
完成した居住スペースの前で、ブルストは満足げだ。
設計図はブレインが作ったものがあるから、それを再現するだけ。
そして、俺を入れて大工が三人になり、作業速度も倍近くに上がったのだ。
布だけは山程あるので、これと枯れ草で布団を作っておく。
この辺りは南国なので、暖かさよりは通気性が大事だ。
その点、枯れ草のベッドはいいぞ。
たまにかき回して、虫が湧かないようにしないといけないが。
リタとピアが、きゃっきゃと笑いながらベッドの用意をしている。
これを見て、ヒロイナがため息をつき、笑った。
「仕方ないわねえ。あたしも腹を決めて、司祭としてちゃんと仕事をしますか。ショート、今度ミサをやるから、みんな集めて来なさいよ」
「へいへい」
ユイーツ神のミサ。
それは、宗教的な集まりというだけではない。
月の中で、十日ごとに開催され、その地域の住民が顔を合わせてお互いの話をし合ったり、地域の長が大切な話をしたりする……言わば地域の集会みたいな役割もあるのだ。
教会は地域住民の集まる場でもあるのだ。
信心の有無は関係ない。
十日間ごとに生活に区切りをつけて、また新たな十日間を皆と一緒に生きていく。
そういう確認をするための場だ。
これってなかなか重要。
この世界、ワールディアでは一人じゃ生きていけないからな。
特にヒロイナは三日でくたばる。自信を持って言えるね。
幾ら性格に難のある彼女でも、それでは寝覚めが悪い。
「リタ、ピア、ヒロイナのことを頼むぞ……。主に生活全般。その代わり、この司祭は神学とか学問系は結構詳しいからな。文字や絵だって教えてくれるぞ」
「はい、勇者様!」
「わかりました!」
少女コンビがいいお返事をする。
ヒロイナは二人の後ろで、腰に手を当てて、解せぬ……という表情だ。
「ねえショート、それ褒めてる? けなしてる? ま、どっちでもいいけど。ほらほらあんたたち。まずは教会の飾り付けをしてくわよ! がさつな男たちじゃ、ガワは作れても中身まではぜーったいに手が回らないんだから」
「はい、司祭様!」
「わかりました!」
うんうん、素直ないい子たちではないか。
孤児院出の子どもとしても、手に職がつくのはいいことなのだ。
教会もまだ仕事は少なかろうし、そのうち俺が畑仕事なども教えるとするか。
肥溜めをかき回させるのは……ヒロイナじゃないし勘弁してやろう。
今度、そういう畑作の雑用ができるようなのもスカウトしてきたいな。
ブレインは万能で何かと忙しいので、クロロックの補助に回れないことが多いのだ。
うちのカエルは文句も言わず、日々淡々と肥料を作ったり、畑の土を改良したりしているが……。
何も言わないから任せっぱなしにはしないのだ。
仕事なんてのは少しでも楽な方がいいからな!
教会の外に出ると、ちょうどクロロックが迎えに来たところだった。
「ショートさん、畑を休ませる期間が終わりましたので、新しく作物を植えます」
「おう、やろうやろう」
俺が威勢のいい返事をすると、カエル氏はコロコローと鳴いた。
満足してるっぽい。
「私とフックさんで、苗を用意していました」
「いつの間に……」
「ショートさんが忙しくあちこち飛び回っているので、その間に少しでも農作業を楽にしようと思いまして」
「なんと抜かりのない!」
やはりこのカエル、できる。
「しかもこれは……。荒れ地用の実りが少なめなものとは言え、なんと、待望の麦です」
「なん……だと……!?」
いつの間にか、クロロックは麦を手に入れていたらしい。
ついに念願であった麦の栽培が、勇者村で開始されるのだ。
麦があればいろいろなことができるようになるぞ!
パンを作ったり、パスタを作ったり、ラーメンを作ったり……。
ラーメン……。
ハッ、いかんいかん!!
パンだ。パンを作るんだろうショート!
この世界にはラーメンはない。
パスタっぽいものはあるが。
パンというのは手間暇がかかるので、この世界の住人にとってはなかなかのごちそうなのだ。
発酵させないナンみたいなタイプのパンなら、すぐ作れるかな?
何もかも、麦を育てて収穫してからだ。
「よし、やるか!」
「やりましょう」
「やろうぜ!」
フックも途中で加わってきて、三人で声を掛け合う。
そういう事になったのだった。
カトリナが蒸してくれた芋を、丸太に腰掛けてむしゃむしゃやっていたヒロイナ。
今後の予定を話したら、ちょっとだけ目を見開いた。
もしや、カトリナが侍祭候補の娘たちを教育する期間があるとでも思っていたのか。
いや、あるんだけどな。
「そうそう。ヒロイナ一人だとまともに生活できないだろ」
「うっ、そ、それは……。ショートの顔を見に行くのも兼ねて、そっちにお邪魔しようかなって」
「うちはうちで困るので……! ということで、しばらく昼間はカトリナが二人に色々教えるので、ヒロイナは彼女たちと生活するように。二人ともー」
リタとピアを呼ぶと、、二人はぺこりと頭を下げた。
「よろしくお願いします、司祭さま!」
「あのヒロイナ様のお世話ができるなんて夢みたい!」
「よっ、よろしくねえー」
ちょっと引きつった笑いを浮かべるヒロイナなのだった。
さて、その日は大工チームに俺も加わり、急ピッチで教会の居住スペースを作り上げていった。
何のことはない、生活用のログハウスが教会の横にくっついているだけなのだが、三人分の部屋となるとなかなか手間がかかる。
俺のコピー魔法バイニナル(俺命名)で増やしてもいいのだが、たまに魔力暴走して増え続けるから止めておいたほうが良かろう。
「よし、とりあえず二部屋できた! お嬢ちゃんたちは二人で一部屋使ってもらえばいいだろ。ヒロイナはこっちの部屋な」
完成した居住スペースの前で、ブルストは満足げだ。
設計図はブレインが作ったものがあるから、それを再現するだけ。
そして、俺を入れて大工が三人になり、作業速度も倍近くに上がったのだ。
布だけは山程あるので、これと枯れ草で布団を作っておく。
この辺りは南国なので、暖かさよりは通気性が大事だ。
その点、枯れ草のベッドはいいぞ。
たまにかき回して、虫が湧かないようにしないといけないが。
リタとピアが、きゃっきゃと笑いながらベッドの用意をしている。
これを見て、ヒロイナがため息をつき、笑った。
「仕方ないわねえ。あたしも腹を決めて、司祭としてちゃんと仕事をしますか。ショート、今度ミサをやるから、みんな集めて来なさいよ」
「へいへい」
ユイーツ神のミサ。
それは、宗教的な集まりというだけではない。
月の中で、十日ごとに開催され、その地域の住民が顔を合わせてお互いの話をし合ったり、地域の長が大切な話をしたりする……言わば地域の集会みたいな役割もあるのだ。
教会は地域住民の集まる場でもあるのだ。
信心の有無は関係ない。
十日間ごとに生活に区切りをつけて、また新たな十日間を皆と一緒に生きていく。
そういう確認をするための場だ。
これってなかなか重要。
この世界、ワールディアでは一人じゃ生きていけないからな。
特にヒロイナは三日でくたばる。自信を持って言えるね。
幾ら性格に難のある彼女でも、それでは寝覚めが悪い。
「リタ、ピア、ヒロイナのことを頼むぞ……。主に生活全般。その代わり、この司祭は神学とか学問系は結構詳しいからな。文字や絵だって教えてくれるぞ」
「はい、勇者様!」
「わかりました!」
少女コンビがいいお返事をする。
ヒロイナは二人の後ろで、腰に手を当てて、解せぬ……という表情だ。
「ねえショート、それ褒めてる? けなしてる? ま、どっちでもいいけど。ほらほらあんたたち。まずは教会の飾り付けをしてくわよ! がさつな男たちじゃ、ガワは作れても中身まではぜーったいに手が回らないんだから」
「はい、司祭様!」
「わかりました!」
うんうん、素直ないい子たちではないか。
孤児院出の子どもとしても、手に職がつくのはいいことなのだ。
教会もまだ仕事は少なかろうし、そのうち俺が畑仕事なども教えるとするか。
肥溜めをかき回させるのは……ヒロイナじゃないし勘弁してやろう。
今度、そういう畑作の雑用ができるようなのもスカウトしてきたいな。
ブレインは万能で何かと忙しいので、クロロックの補助に回れないことが多いのだ。
うちのカエルは文句も言わず、日々淡々と肥料を作ったり、畑の土を改良したりしているが……。
何も言わないから任せっぱなしにはしないのだ。
仕事なんてのは少しでも楽な方がいいからな!
教会の外に出ると、ちょうどクロロックが迎えに来たところだった。
「ショートさん、畑を休ませる期間が終わりましたので、新しく作物を植えます」
「おう、やろうやろう」
俺が威勢のいい返事をすると、カエル氏はコロコローと鳴いた。
満足してるっぽい。
「私とフックさんで、苗を用意していました」
「いつの間に……」
「ショートさんが忙しくあちこち飛び回っているので、その間に少しでも農作業を楽にしようと思いまして」
「なんと抜かりのない!」
やはりこのカエル、できる。
「しかもこれは……。荒れ地用の実りが少なめなものとは言え、なんと、待望の麦です」
「なん……だと……!?」
いつの間にか、クロロックは麦を手に入れていたらしい。
ついに念願であった麦の栽培が、勇者村で開始されるのだ。
麦があればいろいろなことができるようになるぞ!
パンを作ったり、パスタを作ったり、ラーメンを作ったり……。
ラーメン……。
ハッ、いかんいかん!!
パンだ。パンを作るんだろうショート!
この世界にはラーメンはない。
パスタっぽいものはあるが。
パンというのは手間暇がかかるので、この世界の住人にとってはなかなかのごちそうなのだ。
発酵させないナンみたいなタイプのパンなら、すぐ作れるかな?
何もかも、麦を育てて収穫してからだ。
「よし、やるか!」
「やりましょう」
「やろうぜ!」
フックも途中で加わってきて、三人で声を掛け合う。
そういう事になったのだった。