「ホロホロー」
トリマルが勇者村を歩き回っている。
こうして毎日、村をパトロールするのがあいつの日課なのだ。
奥さんたちは卵を温めるで忙しいしな。
その間に、トリマルがついでに餌を集める。
首にヒモが掛かっており、この先には車輪がついたカゴがついていた。
「ホロホロ!」
トリマルが地面から顔を出した虫を加え、ゼロ距離ホロロッ砲で倒した。
そしてカゴに放り込む。
ほう、ああやって餌を集めてるのか……。
カゴ、誰が作ったんだ。
「あれはブレインさんが作っていましたよ」
仕事が一段落したらしいクロロック。
かなりの量の肥料が仕上がったらしく、このまま数日寝かせるのだそうだ。
ヒロイナが「くさいくさい」とシクシク泣きながら風呂に入っていたな。
彼女も大変いい仕事をしたらしい。
やるではないか。
うちの村は、やれる仕事はやれる人がやる、というものなので、女子でも肥溜めをかき回す仕事をせねばならん。
さて、畑もおおよそ落ち着いてきた。
「これから畑は一休みです。肥料と雑草取りを中心としていけばいいでしょう。およそ二日ほど休めます」
「たった二日!!」
俺は戦慄した。
しかも雑草取りと肥料の調整などはやるんだろ?
大変だなあ……。
だが、せっかく暇ができたのだ。
トリマルを追いかけてみるとしよう。
「ホロホロ?」
「おう。今日はお前についていこうと思ってな」
「ホロホロー」
ついて来な、と一声鳴いたトリマル。
俺を誘ってトコトコ歩いていく。
そしていきなり茂みに飛び込んでいくトリマルだ。
「ハードな道のりだな!」
俺も後についていくと、そこには大きな岩があるではないか。
「ホロロー!」
岩に向かって突撃するトリマル。
そして、蹴りを一閃。
岩をひっくり返した。
「どうしてホロロッ砲を使わなかったんだ?」
「ホロホロ」
「ほう、もしやあれか。岩の下にいる虫を取るだけが目的で、環境を荒らしたくなかったとか?」
「ホロー」
「なかなかの気遣いだなあ……!」
俺は感心した。
この間まで卵だったと思ったが、いつの間にこんなに大きくなったのか。
虫を必要なだけ取り、カゴに乗せる。
そして俺がそっと岩を元の位置に戻した。
「ホロ!」
「うむ」
目と目で通じ合う俺とトリマル。
生きの良い虫を届けるべく、ともに真っ先に鳥舎に向かった。
「ホロホロホロー!」
トリマルのお嫁さんたちが喜んでいる……あーっ!!
た、卵が増えているーっ!!
こりゃあ、ホロロッホー鳥はものすごいペースで増えるぞ……!!
「ホロホロホロ」
卵を幾つかこちらに転がしてくるトリマル。
「これは……。まさか、俺たちに食べろと言うのか?」
「ホロ!」
栄養状態と健康状態の良すぎるトリマルのお嫁さんたちは、ガンガン卵を産んでしまうようだ。
数が増えすぎてはよろしくないということで、卵を食べて数の調整……。
ふむふむ……!
この辺り、なかなか冷徹な思考だなトリマル……!
卵を届けに行くと、カトリナが跳び上がって喜んだ。
「卵だー!! 卵はね、お腹の赤ちゃんにもいいんだよ。あ、もちろん私じゃなくて、ミーのお腹の赤ちゃんね? 残念でしたー」
「残念……!!」
ということで、今夜のご飯は卵である。
「ホロー」
「何、このままでは終わらないと?」
「ホロホロ」
走り出すトリマル。
次なる目的地は、五割ほど完成した教会である。
「トリマル、毎日村の隅々まで見回っていたのか」
「ホロホロ」
俺たちがやって来たのを見て、屋根の上にいたブレインが手を振った。
「やあ、ショートにトリマルくん。居住空間の方はまだですが、教会としての機能は十二分に果たすはずです」
「おっ、それはいいなあ」
ブレインがハシゴで降りながら説明してくる。
「このままだと問題があるんですよ。教会は一人の力で運営はできません。つまり、小間使いを担当する人が必要なんですよ。ご覧の通り、村の中では一番大きい施設ですからね」
「小間使い? 侍祭が必要ってことか」
「はい。通常は教会が孤児院のような役割も果たしていますから、身寄りのない子どもを連れてきて、彼らを侍祭としながら、次の世代の司祭として育てていくものですが」
「あー、なるほど。戦災孤児とかは結構いそうだ。その気がある子を探しとかないとな。でも、そいつの世話をヒロイナが見られると思うか?」
「無理でしょうね。なので、何名かの女の子を連れてきて、カトリナさんに教えを受けながらヒロイナの手伝いをするという形がいいのではないですか」
「やはり女子か」
「男子だとヒロイナの魔の手が伸びるでしょう」
「確かに!!」
そんな会話をしていたら、ブルストが顔を出した。
「おう、ショートか! ちょっと教会の中覗いていけ!」
ということで、教会の中をトリマルと一緒に練り歩いた。
大したもんだ。
たった二人で、短期間でここまで仕上げるとは……!
「ホロホロ!」
「なに、次は畑の周りを歩くのか」
「ホロー」
トテトテ走るトリマル。
ともに走っていくと、トリマルは畑の中まで入っていき、綿花や作物をつんつん突いている。
よく見たら、作物についた害虫を食べているのだ。
「トリマル、お前だったのか、害虫を食べてくれていたのは!」
「ホロロー」
合鴨農法ならぬ、ホロロッホー鳥農法である。
近いうち、ヒヨコたちが孵ってくると、トリマル一家が害虫を食べて回ってくれるかもしれないな。
仲間は増え、夢は広がる。
次は……ヒロイナの補佐をする、侍祭候補を探すのか。
トリマルが勇者村を歩き回っている。
こうして毎日、村をパトロールするのがあいつの日課なのだ。
奥さんたちは卵を温めるで忙しいしな。
その間に、トリマルがついでに餌を集める。
首にヒモが掛かっており、この先には車輪がついたカゴがついていた。
「ホロホロ!」
トリマルが地面から顔を出した虫を加え、ゼロ距離ホロロッ砲で倒した。
そしてカゴに放り込む。
ほう、ああやって餌を集めてるのか……。
カゴ、誰が作ったんだ。
「あれはブレインさんが作っていましたよ」
仕事が一段落したらしいクロロック。
かなりの量の肥料が仕上がったらしく、このまま数日寝かせるのだそうだ。
ヒロイナが「くさいくさい」とシクシク泣きながら風呂に入っていたな。
彼女も大変いい仕事をしたらしい。
やるではないか。
うちの村は、やれる仕事はやれる人がやる、というものなので、女子でも肥溜めをかき回す仕事をせねばならん。
さて、畑もおおよそ落ち着いてきた。
「これから畑は一休みです。肥料と雑草取りを中心としていけばいいでしょう。およそ二日ほど休めます」
「たった二日!!」
俺は戦慄した。
しかも雑草取りと肥料の調整などはやるんだろ?
大変だなあ……。
だが、せっかく暇ができたのだ。
トリマルを追いかけてみるとしよう。
「ホロホロ?」
「おう。今日はお前についていこうと思ってな」
「ホロホロー」
ついて来な、と一声鳴いたトリマル。
俺を誘ってトコトコ歩いていく。
そしていきなり茂みに飛び込んでいくトリマルだ。
「ハードな道のりだな!」
俺も後についていくと、そこには大きな岩があるではないか。
「ホロロー!」
岩に向かって突撃するトリマル。
そして、蹴りを一閃。
岩をひっくり返した。
「どうしてホロロッ砲を使わなかったんだ?」
「ホロホロ」
「ほう、もしやあれか。岩の下にいる虫を取るだけが目的で、環境を荒らしたくなかったとか?」
「ホロー」
「なかなかの気遣いだなあ……!」
俺は感心した。
この間まで卵だったと思ったが、いつの間にこんなに大きくなったのか。
虫を必要なだけ取り、カゴに乗せる。
そして俺がそっと岩を元の位置に戻した。
「ホロ!」
「うむ」
目と目で通じ合う俺とトリマル。
生きの良い虫を届けるべく、ともに真っ先に鳥舎に向かった。
「ホロホロホロー!」
トリマルのお嫁さんたちが喜んでいる……あーっ!!
た、卵が増えているーっ!!
こりゃあ、ホロロッホー鳥はものすごいペースで増えるぞ……!!
「ホロホロホロ」
卵を幾つかこちらに転がしてくるトリマル。
「これは……。まさか、俺たちに食べろと言うのか?」
「ホロ!」
栄養状態と健康状態の良すぎるトリマルのお嫁さんたちは、ガンガン卵を産んでしまうようだ。
数が増えすぎてはよろしくないということで、卵を食べて数の調整……。
ふむふむ……!
この辺り、なかなか冷徹な思考だなトリマル……!
卵を届けに行くと、カトリナが跳び上がって喜んだ。
「卵だー!! 卵はね、お腹の赤ちゃんにもいいんだよ。あ、もちろん私じゃなくて、ミーのお腹の赤ちゃんね? 残念でしたー」
「残念……!!」
ということで、今夜のご飯は卵である。
「ホロー」
「何、このままでは終わらないと?」
「ホロホロ」
走り出すトリマル。
次なる目的地は、五割ほど完成した教会である。
「トリマル、毎日村の隅々まで見回っていたのか」
「ホロホロ」
俺たちがやって来たのを見て、屋根の上にいたブレインが手を振った。
「やあ、ショートにトリマルくん。居住空間の方はまだですが、教会としての機能は十二分に果たすはずです」
「おっ、それはいいなあ」
ブレインがハシゴで降りながら説明してくる。
「このままだと問題があるんですよ。教会は一人の力で運営はできません。つまり、小間使いを担当する人が必要なんですよ。ご覧の通り、村の中では一番大きい施設ですからね」
「小間使い? 侍祭が必要ってことか」
「はい。通常は教会が孤児院のような役割も果たしていますから、身寄りのない子どもを連れてきて、彼らを侍祭としながら、次の世代の司祭として育てていくものですが」
「あー、なるほど。戦災孤児とかは結構いそうだ。その気がある子を探しとかないとな。でも、そいつの世話をヒロイナが見られると思うか?」
「無理でしょうね。なので、何名かの女の子を連れてきて、カトリナさんに教えを受けながらヒロイナの手伝いをするという形がいいのではないですか」
「やはり女子か」
「男子だとヒロイナの魔の手が伸びるでしょう」
「確かに!!」
そんな会話をしていたら、ブルストが顔を出した。
「おう、ショートか! ちょっと教会の中覗いていけ!」
ということで、教会の中をトリマルと一緒に練り歩いた。
大したもんだ。
たった二人で、短期間でここまで仕上げるとは……!
「ホロホロ!」
「なに、次は畑の周りを歩くのか」
「ホロー」
トテトテ走るトリマル。
ともに走っていくと、トリマルは畑の中まで入っていき、綿花や作物をつんつん突いている。
よく見たら、作物についた害虫を食べているのだ。
「トリマル、お前だったのか、害虫を食べてくれていたのは!」
「ホロロー」
合鴨農法ならぬ、ホロロッホー鳥農法である。
近いうち、ヒヨコたちが孵ってくると、トリマル一家が害虫を食べて回ってくれるかもしれないな。
仲間は増え、夢は広がる。
次は……ヒロイナの補佐をする、侍祭候補を探すのか。