以前から話をしていた、肥料強化計画。
俺はクロロックとトリマルを引き連れ、勇者村の奥にある森へとやって来ていた……!
『あばばばば! あばばばばばばばば!!』
「あ、何か出てきましたね。この森、ジャバウォックがでるんですね。これはワタクシ死にますね」
「おいおい! 素手技・勇者会心撃!」
真横から突っ走ってきた、サンショウウオとハシリトカゲとコウモリを足して割らない感じの巨大なモンスター。
……を、俺は飛び上がって気合を入れ、ぶん殴った。
『ウグワーッ!!』
粉々になって飛び散るジャバウォック。
一撃レベルなら、せいぜい50レベルモンスターだろう。
野生のモンスターとしては最上級の一種だが、そんなのがチョロチョロしているのかこの森。
「あっ、ショートさん。その破片、肥料としても価値がありますので回収をお願いします」
「このモンスター討伐まで予定のうちだったのかよ」
「はい。討伐が極めて難しいんですが、それができれば素晴らしい肥料が作れます。どうです、生臭いでしょう」
「くさいくさい」
俺は悲しい顔をしながら、ジャバウォックの欠片を収納魔法アイテムボクースに収める。
その横で、二匹目のジャバウォックとトリマルが激闘を繰り広げている。
「ホロホローッ!」
飛び上がりながら、ジャバウォックの突進と鉤爪を前足一本でいなすトリマル。
空中で一回転しながら、ジャバウォックの顎を蹴り飛ばし、正面を向くと同時にホロロッ砲をぶっ放した。
『ウグワーッ!!』
「あーっ、もうトリマルが一匹片付けてる!!」
「トリマルさん、恐ろしく強いですよね」
「あいつももうレベル限界突破してるからなあ。なんか俺とリンクしたみたい」
「よく分かりませんが肥料がたくさん作れるのは素晴らしいことです」
「動じないなカエルの人」
淡々とするクロロックとともに、二匹目もアイテムボクースに詰め込む。
その後、森の奥にいた食人植物とか、その辺り一帯全てを占める吸血森なんかを次々なぎ倒し、クロロックの指示に従ってアイテムボクースに詰めた。
「素晴らしいです。ワタクシの力ではここまでの収集はできませんでした。このデータを作った方も、当時世界最強だった魔法使いと一緒に世界中を行脚して素材を集めたそうです。ショートさんとなら、ワタクシは肥料の世界のトップを取れそうな気がします」
「肥料の世界ってこんな危険なことしないとトップになれないの……!? 奥深いなあ」
「より良き肥料を得るため、森や山に分け入り、帰ってこなかった者たちも多くおります」
「海は?」
「海は塩辛いので、むしろ畑作の敵なのですよ」
「なるほどお」
一つ賢くなってしまった。
そうこうしていると、トリマルがホロホロ言いながらジャバウォックの欠片をつついている。
「こらトリマル、お腹壊すぞ」
「ホロロー」
大丈夫だよーとでも言いたげなトリマル。
お母さんである俺の注意を無視して、ジャバウォックを食べてしまった。
あー。
「後でお腹痛くなったら言うんだぞ」
「ホロホロ」
「ショートさんも過保護ですねえ」
「まあ、俺の第一子だからな。育て方の加減も分からんし、過保護なくらいでちょうどいいだろう……多分」
「ここで得た経験を、カトリナさんとの子どもに活かすわけですね」
「そう、それ! まあ、人間とオーガだからさ。混血だと、子どもが生まれづらいらしいんだよな。気長に毎晩頑張るよ」
「卵にかければいいわけではないのですから、実に胎生動物は大変ですね」
「えっ、なに!? クロロックたちの繁殖方法ってまんまカエルと一緒なの!?」
なんて知的人種がいるもんだ。
「流石に数は少ないですがね。一度に一つか二つしか卵は生まれません」
「両棲人の生態も面白そうだなあ」
だべりながら、森を三日三晩行脚した。
そして、勇者村への帰還。
俺たちが歩いた道は、獣道というか勇者道となって確かに刻まれた。
今後はこのルートを辿ることで、容易に肥料集めができることだろう。
腕に覚えがある仲間が同行していれば、だが。
「ホロホロー!」
「ホロロー」
「ホロロッホー」
戻ってきたトリマルを、トリマルの奥さんたちが出迎える。
我が子ながら、モテモテだなトリマル!
まあ、並のモンスターであれば文字通り一蹴する実力を持ったホロロッホー鳥である。
雄としては最強なのでモテるだろう。
「ホロロ」
「うむ、先に帰ってていいぞトリマル」
「ホロー!」
トリマルは俺に向けて羽をぶんぶん振ると、奥さんたちを引き連れて鳥舎に戻っていった。
「あいつもあっという間に大人になってしまった。子どもの成長は速いなあ」
「ホロロッホー鳥は孵化した後、150日……五ヶ月で成鳥になりますからね」
「あいつを孵してからもう五ヶ月も経ったのかあ……。あっという間だな。勇者村は南国だから、一年の経過がさっぱり分からん。それだけ経てば、俺もカトリナとただならぬ関係になってしまうのも頷けよう」
ちなみに、一般的なホロロッホー鳥の寿命は鳥舎飼いで卵を産ませることをメインとすると五年。
大切にしてゆったり生かしてやれば十五年ほどだ。
しかし、スーパーホロロッホー鳥となったトリマルが何年生きるかは見当もつかない。
長く生きろよ、トリマル……!
「ショートさん、では早速肥料を作っていきましょう。ブレインさんにも声を掛けねばなりません」
「三人がかりだな……!! スローライフはまったく、休む暇もないぜ……!!」
かくして、新たなる肥料づくりを始める俺たちなのだった。
俺はクロロックとトリマルを引き連れ、勇者村の奥にある森へとやって来ていた……!
『あばばばば! あばばばばばばばば!!』
「あ、何か出てきましたね。この森、ジャバウォックがでるんですね。これはワタクシ死にますね」
「おいおい! 素手技・勇者会心撃!」
真横から突っ走ってきた、サンショウウオとハシリトカゲとコウモリを足して割らない感じの巨大なモンスター。
……を、俺は飛び上がって気合を入れ、ぶん殴った。
『ウグワーッ!!』
粉々になって飛び散るジャバウォック。
一撃レベルなら、せいぜい50レベルモンスターだろう。
野生のモンスターとしては最上級の一種だが、そんなのがチョロチョロしているのかこの森。
「あっ、ショートさん。その破片、肥料としても価値がありますので回収をお願いします」
「このモンスター討伐まで予定のうちだったのかよ」
「はい。討伐が極めて難しいんですが、それができれば素晴らしい肥料が作れます。どうです、生臭いでしょう」
「くさいくさい」
俺は悲しい顔をしながら、ジャバウォックの欠片を収納魔法アイテムボクースに収める。
その横で、二匹目のジャバウォックとトリマルが激闘を繰り広げている。
「ホロホローッ!」
飛び上がりながら、ジャバウォックの突進と鉤爪を前足一本でいなすトリマル。
空中で一回転しながら、ジャバウォックの顎を蹴り飛ばし、正面を向くと同時にホロロッ砲をぶっ放した。
『ウグワーッ!!』
「あーっ、もうトリマルが一匹片付けてる!!」
「トリマルさん、恐ろしく強いですよね」
「あいつももうレベル限界突破してるからなあ。なんか俺とリンクしたみたい」
「よく分かりませんが肥料がたくさん作れるのは素晴らしいことです」
「動じないなカエルの人」
淡々とするクロロックとともに、二匹目もアイテムボクースに詰め込む。
その後、森の奥にいた食人植物とか、その辺り一帯全てを占める吸血森なんかを次々なぎ倒し、クロロックの指示に従ってアイテムボクースに詰めた。
「素晴らしいです。ワタクシの力ではここまでの収集はできませんでした。このデータを作った方も、当時世界最強だった魔法使いと一緒に世界中を行脚して素材を集めたそうです。ショートさんとなら、ワタクシは肥料の世界のトップを取れそうな気がします」
「肥料の世界ってこんな危険なことしないとトップになれないの……!? 奥深いなあ」
「より良き肥料を得るため、森や山に分け入り、帰ってこなかった者たちも多くおります」
「海は?」
「海は塩辛いので、むしろ畑作の敵なのですよ」
「なるほどお」
一つ賢くなってしまった。
そうこうしていると、トリマルがホロホロ言いながらジャバウォックの欠片をつついている。
「こらトリマル、お腹壊すぞ」
「ホロロー」
大丈夫だよーとでも言いたげなトリマル。
お母さんである俺の注意を無視して、ジャバウォックを食べてしまった。
あー。
「後でお腹痛くなったら言うんだぞ」
「ホロホロ」
「ショートさんも過保護ですねえ」
「まあ、俺の第一子だからな。育て方の加減も分からんし、過保護なくらいでちょうどいいだろう……多分」
「ここで得た経験を、カトリナさんとの子どもに活かすわけですね」
「そう、それ! まあ、人間とオーガだからさ。混血だと、子どもが生まれづらいらしいんだよな。気長に毎晩頑張るよ」
「卵にかければいいわけではないのですから、実に胎生動物は大変ですね」
「えっ、なに!? クロロックたちの繁殖方法ってまんまカエルと一緒なの!?」
なんて知的人種がいるもんだ。
「流石に数は少ないですがね。一度に一つか二つしか卵は生まれません」
「両棲人の生態も面白そうだなあ」
だべりながら、森を三日三晩行脚した。
そして、勇者村への帰還。
俺たちが歩いた道は、獣道というか勇者道となって確かに刻まれた。
今後はこのルートを辿ることで、容易に肥料集めができることだろう。
腕に覚えがある仲間が同行していれば、だが。
「ホロホロー!」
「ホロロー」
「ホロロッホー」
戻ってきたトリマルを、トリマルの奥さんたちが出迎える。
我が子ながら、モテモテだなトリマル!
まあ、並のモンスターであれば文字通り一蹴する実力を持ったホロロッホー鳥である。
雄としては最強なのでモテるだろう。
「ホロロ」
「うむ、先に帰ってていいぞトリマル」
「ホロー!」
トリマルは俺に向けて羽をぶんぶん振ると、奥さんたちを引き連れて鳥舎に戻っていった。
「あいつもあっという間に大人になってしまった。子どもの成長は速いなあ」
「ホロロッホー鳥は孵化した後、150日……五ヶ月で成鳥になりますからね」
「あいつを孵してからもう五ヶ月も経ったのかあ……。あっという間だな。勇者村は南国だから、一年の経過がさっぱり分からん。それだけ経てば、俺もカトリナとただならぬ関係になってしまうのも頷けよう」
ちなみに、一般的なホロロッホー鳥の寿命は鳥舎飼いで卵を産ませることをメインとすると五年。
大切にしてゆったり生かしてやれば十五年ほどだ。
しかし、スーパーホロロッホー鳥となったトリマルが何年生きるかは見当もつかない。
長く生きろよ、トリマル……!
「ショートさん、では早速肥料を作っていきましょう。ブレインさんにも声を掛けねばなりません」
「三人がかりだな……!! スローライフはまったく、休む暇もないぜ……!!」
かくして、新たなる肥料づくりを始める俺たちなのだった。