「それで、子どもはいつ作るんだ?」
「もう、お父さん!」
真っ赤になったカトリナが、ブルストの肩をポカポカ叩く。
音は可愛いが、なかなかいい打撃が入っているぞ。
「いて! いてててて!! 分かった、分かったからやめろカトリナ! 痛い痛い!」
オーガのポカポカは強いようだな。
昨夜はお楽しみだった後の、今は昼。
やっと起き出してきたカトリナが、慌てて昼飯を準備したところだ。
ブルストとクロロックは、丁字路村で仕入れてきた醸造の方法について論議を戦わせていた。
そこに、蒸した芋と昨日の残りのシチューが出てきたので、飯を食いながら昨夜の話になったわけである。
「しかしショート……お前、チャンスを見逃さないでモノにしやがったなあ……。もっとおっとりしてるもんだと思ってたが」
「まあ、俺も勇者だからな。魔王軍との戦いでは、躊躇してたら犠牲者が増えるばかりだった。即断即決即実行。これが俺のモットーだ。行けそうな時に全力で行く」
カトリナが、俺が勇者であると知っていたのだから、もうこの秘密は解禁してしまっていいだろう。
当然、父親であるブルストも知っているはず……。
おい。
なんで目を見開いて口をポカーンと開けて、信じられないようなものを見る目を俺に向けているのだ。
「えっ、おま、え? ショート、お前、勇者……?」
「ブルストは知らなかったのかよ!?」
おっさんは天然だった……!!
これには、カトリナも笑い出す。
クロロックは無表情っぽいが、口をパカッと開けているのであれも笑っている。
しまったー!
正体をばらしてしまった!
いや、なんでブルストだけ知らないんだよ、とも思うが!
「それでカトリナ、いつ気付いたんだ?」
昨夜の続きの疑問を投げかける。
「それはね、多分、最初から」
「最初から!?」
「そう。私たち、魔王の手先だってフシナル公国でいじめられて、追い出されちゃったの。国を背にして逃げ出して……。でも、行き場所なんかないから、近くでキャンプして暮らしてたのね。そしたら国はどんどんおかしくなっていって……。国から出てくる兵士の人は、紫色の顔をしててモンスターになってた。私たち、慌ててキャンプを遠くで張るようにして、それでもじっと国を見てたの。その時、キャンプのところに勇者一行が来たの」
「あー、あれか」
俺は思い出す。
まあまあ前の話だ。少なくとも一年以上。
「勇者様の仲間の人たちは、私たちの避難誘導をしてくれて、勇者様が一人だけ国に飛び込んでいったの」
「やったやった。あ、じゃあもしかして、不死王との空中決戦を見られていた……?」
「見てた。勇者様の姿はそこで覚えてたもの。すごく厳しい顔をしてて、怖かった。仲間にも気を許してなかったみたいだった。でも、一人じゃ危ないから、私、危ないよって声を掛けたの」
「ああ、あの時、オーガの子どもが俺に声を掛けてくれたな。仲間も、俺が戦うのは当然みたいな扱いだったんで、まあまあやさぐれてた時だったので心が大変安らいだ……。あれっ!?」
俺は大変なことに気付いた。
「あの時の子どもがカトリナですか……」
「うん! 私だよ!」
「えっ、おいくつ……?」
ここでブルストが俺の背中をバンバン叩いた。
「がっはっは! 安心しろ! こいつ、この間ちゃんと成人したからよ! あの頃はちっこかったのに、あっという間に背が伸びてな! そうかあ、あの勇者様がショートかあ。今はこんなに気の抜けた顔してるのになあ」
「うむ。今は一人で全部やらなくていいからな」
俺の言葉に、カトリナがうんうん、と頷いた。
「優しい顔になってたから、最初は気づかなかったもん。だけど、使う魔法とか強さとか、やっぱり勇者様だった。なんでここにいるのかなーって思ったけど、一緒にいると楽しいし、私とお父さんのことを気にかけてくれるし……気がついたら、いつも目で追うようになってて」
「それで好きになったので一線を越えたわけですね」
クロクローと喉を鳴らしながらクロロックが言った。
カエル……!!
言葉を濁すということを知らんな……!
カトリナが角まで赤くなって黙ってしまった。
「ま、事情は知らんが、お前さんが俺たちと一緒に暮らすことを選んでくれたのは嬉しいぜ! なんか王女を袖にしてたしな! 確かにあの王女は怖えよなあ」
「ああ。すごく怖い。それに絶対、政治とか社交とかやらなくちゃいけなそうであまりにも大変過ぎる。なので俺はこっちで暮らすのが一番いいのだ。カトリナもいるので」
「もう、ショートったら!」
カトリナが照れに照れまくって、俺をポカポカ叩いてきた。
おっ、なかなかいいパンチだ!
レベルが高くて物理防御力が極めて堅固な俺にダメージを与えるほどではないがな……!
ひとしきりみんなで笑った後で、昼食を平らげた。
そして今後の話になる。
「どうしてもよ、頭数的に足りねえ。ショートがいりゃなんでもやってくれそうだが、俺らもちゃんと働いてこそ飯が美味いってもんだろ。開拓を手伝ってくれる家族とかを迎え入れないとな」
ブルストの発案に、皆頷いた。
畑は芋ばかりではなく、麦なども作っていきたい。
そのためには畑の面積を広げなければならないし、果樹園だって大きくしたい。
ブルストは酒を作るために醸造所を建設せねばだし、クロロックは醸造にかかりきりになると肥料に手出しできなくなる。
それにトリマルたち、ヒヨコ軍団も大きくなり、これから卵も生まれて数が増えることが予想される。
人の数が足りなかった。
つまり、勇者村は本格的に、村となるべく村人募集をかける必要がでてきたのである!
求む、新たなる住人!
「もう、お父さん!」
真っ赤になったカトリナが、ブルストの肩をポカポカ叩く。
音は可愛いが、なかなかいい打撃が入っているぞ。
「いて! いてててて!! 分かった、分かったからやめろカトリナ! 痛い痛い!」
オーガのポカポカは強いようだな。
昨夜はお楽しみだった後の、今は昼。
やっと起き出してきたカトリナが、慌てて昼飯を準備したところだ。
ブルストとクロロックは、丁字路村で仕入れてきた醸造の方法について論議を戦わせていた。
そこに、蒸した芋と昨日の残りのシチューが出てきたので、飯を食いながら昨夜の話になったわけである。
「しかしショート……お前、チャンスを見逃さないでモノにしやがったなあ……。もっとおっとりしてるもんだと思ってたが」
「まあ、俺も勇者だからな。魔王軍との戦いでは、躊躇してたら犠牲者が増えるばかりだった。即断即決即実行。これが俺のモットーだ。行けそうな時に全力で行く」
カトリナが、俺が勇者であると知っていたのだから、もうこの秘密は解禁してしまっていいだろう。
当然、父親であるブルストも知っているはず……。
おい。
なんで目を見開いて口をポカーンと開けて、信じられないようなものを見る目を俺に向けているのだ。
「えっ、おま、え? ショート、お前、勇者……?」
「ブルストは知らなかったのかよ!?」
おっさんは天然だった……!!
これには、カトリナも笑い出す。
クロロックは無表情っぽいが、口をパカッと開けているのであれも笑っている。
しまったー!
正体をばらしてしまった!
いや、なんでブルストだけ知らないんだよ、とも思うが!
「それでカトリナ、いつ気付いたんだ?」
昨夜の続きの疑問を投げかける。
「それはね、多分、最初から」
「最初から!?」
「そう。私たち、魔王の手先だってフシナル公国でいじめられて、追い出されちゃったの。国を背にして逃げ出して……。でも、行き場所なんかないから、近くでキャンプして暮らしてたのね。そしたら国はどんどんおかしくなっていって……。国から出てくる兵士の人は、紫色の顔をしててモンスターになってた。私たち、慌ててキャンプを遠くで張るようにして、それでもじっと国を見てたの。その時、キャンプのところに勇者一行が来たの」
「あー、あれか」
俺は思い出す。
まあまあ前の話だ。少なくとも一年以上。
「勇者様の仲間の人たちは、私たちの避難誘導をしてくれて、勇者様が一人だけ国に飛び込んでいったの」
「やったやった。あ、じゃあもしかして、不死王との空中決戦を見られていた……?」
「見てた。勇者様の姿はそこで覚えてたもの。すごく厳しい顔をしてて、怖かった。仲間にも気を許してなかったみたいだった。でも、一人じゃ危ないから、私、危ないよって声を掛けたの」
「ああ、あの時、オーガの子どもが俺に声を掛けてくれたな。仲間も、俺が戦うのは当然みたいな扱いだったんで、まあまあやさぐれてた時だったので心が大変安らいだ……。あれっ!?」
俺は大変なことに気付いた。
「あの時の子どもがカトリナですか……」
「うん! 私だよ!」
「えっ、おいくつ……?」
ここでブルストが俺の背中をバンバン叩いた。
「がっはっは! 安心しろ! こいつ、この間ちゃんと成人したからよ! あの頃はちっこかったのに、あっという間に背が伸びてな! そうかあ、あの勇者様がショートかあ。今はこんなに気の抜けた顔してるのになあ」
「うむ。今は一人で全部やらなくていいからな」
俺の言葉に、カトリナがうんうん、と頷いた。
「優しい顔になってたから、最初は気づかなかったもん。だけど、使う魔法とか強さとか、やっぱり勇者様だった。なんでここにいるのかなーって思ったけど、一緒にいると楽しいし、私とお父さんのことを気にかけてくれるし……気がついたら、いつも目で追うようになってて」
「それで好きになったので一線を越えたわけですね」
クロクローと喉を鳴らしながらクロロックが言った。
カエル……!!
言葉を濁すということを知らんな……!
カトリナが角まで赤くなって黙ってしまった。
「ま、事情は知らんが、お前さんが俺たちと一緒に暮らすことを選んでくれたのは嬉しいぜ! なんか王女を袖にしてたしな! 確かにあの王女は怖えよなあ」
「ああ。すごく怖い。それに絶対、政治とか社交とかやらなくちゃいけなそうであまりにも大変過ぎる。なので俺はこっちで暮らすのが一番いいのだ。カトリナもいるので」
「もう、ショートったら!」
カトリナが照れに照れまくって、俺をポカポカ叩いてきた。
おっ、なかなかいいパンチだ!
レベルが高くて物理防御力が極めて堅固な俺にダメージを与えるほどではないがな……!
ひとしきりみんなで笑った後で、昼食を平らげた。
そして今後の話になる。
「どうしてもよ、頭数的に足りねえ。ショートがいりゃなんでもやってくれそうだが、俺らもちゃんと働いてこそ飯が美味いってもんだろ。開拓を手伝ってくれる家族とかを迎え入れないとな」
ブルストの発案に、皆頷いた。
畑は芋ばかりではなく、麦なども作っていきたい。
そのためには畑の面積を広げなければならないし、果樹園だって大きくしたい。
ブルストは酒を作るために醸造所を建設せねばだし、クロロックは醸造にかかりきりになると肥料に手出しできなくなる。
それにトリマルたち、ヒヨコ軍団も大きくなり、これから卵も生まれて数が増えることが予想される。
人の数が足りなかった。
つまり、勇者村は本格的に、村となるべく村人募集をかける必要がでてきたのである!
求む、新たなる住人!