俺の目の前で、二人の娘が争っている……。
一方は目下、俺が一番結婚したい女性ナンバーワン、気立てがよくて家庭的なオーガの少女カトリナ。
一方は目下、俺が一番会いたくない女ナンバーワン、謀略と策略で各国から畏れられる王女トラッピア。
「くそー、パワーでは勝てないわ!! せいっ」
「うっ」
トラッピアがカトリナの胸元に鋭い逆水平チョップをして、彼女をひるませた。
その隙に間合いを取る。
さすが王女、体術も学んでいるんだな。
どうみてもプロレスのムーブだったが。
そして、王宮で会った時よりも彼女の喋りがフランクになっている。
あれがもともとのトラッピアの口調なんだろう。
「人間の女がどれだけ小細工を弄しても、私には通用しないんだからね!」
「おっ、カトリナが凄くオーガっぽい言い回しをした!」
俺は感心した。
いつもほんわかしてて優しい娘なので、オーガというかおっかさんみたいだなあと思っていたのだが、やはりオーガであったか。
「わたしは自らが前線で戦うわけではないの! ええい、こんな強敵がショートの近くにいるなんて聞いていないわ。特戦隊!」
「は、はい!」
特戦隊のでかいやつが標的になった。
「あの女のことが報告になかったけど!」
「あの女じゃないよ! 私はカトリナ!」
「お前の名前なんか聞いてないわよ!!」
「性格悪ーい!」
「なあんですって!」
「なによー!」
「「むきーっ!!」」
大変だ!!
「こりゃあ血の雨が降るぞ」
俺が戦慄していたら、ブルストがスススっと女子二名の間に入っていった。
「まあまあ待て待て。カトリナも、お姫様もあれだろ。ショートのことが好きなんだな」
「はっ」
「はっ」
この一言で、我に返るカトリナとトラッピア。
二人とも、サッと距離を取った。
おお、一瞬で二人の熱を冷ました。
やるな、ブルスト。
これには特戦隊の面々も感心している。
「やるなあ」
「なかなかの策士だ」
「まあ、年の功だからな」
褒められて嬉しそうなブルスト。
なんか、うちの男どもと特戦隊はすっかり仲良くなりそうな空気だ。
だが、状況は全然解決してないけどな。
「いい? ショートはこの国にとって大事なの。だから、わたしが王都へ連れ帰って婿にするのよ!!」
「なんでショートじゃないといけないの! 貴族とかたくさんいるでしょ。それでいいじゃない!」
「だめよ!! ショートは特別なのよ! そりゃ、召喚したばかりの時は頼りなさそうだったし、50Gと布の服と木の棒だけ渡して外に出すお父様の仕打ちに、さすがの私も目を疑ったけど」
「ひどい! 王様ひどい!!」
「そう。うちのお父様後先考えないで目先の利益だけでそういうことするから!! だから国がガタガタで今にも各国から攻められそうなのよ! この状況をどうにかするにはショートが必要なの!」
「だったらお婿さんにする必要ないでしょ? っていうか、ショートはそんなに強いの? え? 召喚……? ショートが?」
「いかん!!」
俺は動き出した。
一瞬でトラッピアのところに現れて、人差し指で彼女の唇を塞ぐ。
「そのことは内密に……な」
「もごもごもご」
彼女は唇をむずむずさせながら、ちょっと頬を赤くしている。
「カトリナ、つまり、俺は魔法をかなり使える人ショートなので強いのだ」
「うん。こっちの人たちをあっという間にやっつけたもんね。ショートがすごく強いのは分かるよ。でも、ならお婿さんじゃなくていいんじゃないかなーって」
「もごもご……ぷはあ! ショート! 指先でわたしの口を閉じさせるのやめなさい! するなら唇で……じゃない、いい、オーガの娘カトリナ! 彼は婿でないと絶対に意味がないのよ! それは! それは! それは……」
おっと、その先の言葉が出てこないぞ。
なんとなく先を察しているのか、ブルストと特戦隊の面々がニヤニヤしながら見守っている。
お前らなあー。
「わ、わ、わたしのモチベーションが違うのよ!!」
「そんなのあなたの勝手じゃない! 私だってショートがいないと楽しくない!! だからショートはあげません!」
「な、なんですってー!」
「なによー!!」
いかん、話が元のところに戻った。
うーむ。
俺が唸っていると、クロロックが肩を叩いてきた。
「優れたオスであるならば二人に卵を産ませればいいのでは?」
「凄く人間っぽいと思ってたらやっぱりあんた思考がカエルだな!?」
「やっぱりも何も、ワタクシはカエルですが」
けろけろーと喉を鳴らすクロロック。
だが、クロロックの提案は二人の娘に気づきを与えたらしい。
「いいわ。ならばショートに見極めてもらうわ! わたしとこの女のどちらが妻に相応しいか!」
「そうだね! ……えっ、妻!? それってお嫁さん……あーん」
カトリナがもじもじした。
可愛い。
そしてそれを見て、トラッピアも赤くなる。
「あなたね!! そうやって恥ずかしがっているとこちらまでシラフに戻って恥ずかしくなるでしょう!!」
どうやら二人が俺を取り合って戦うようだ……。
一体どういうことだってばよ?
よく事情は分からんが、大体状況は把握した。
「よし、ではトラッピアはしばらくこっちで暮らしてみて、辺境生活というものを体験していくのでいいか?」
「なんでそういう方向になるの!? ああ、でも、わたしとこの女の格の違いを見せつけてやるためにはそれがいいかも知れないわね……!! ふふふふふ!!」
なんて自信だ!
俺は特戦隊のギロスに聞いてみる。
「もしや王女はスローライフ経験が?」
「あるわけないではないですか」
「だよねー」
「大体なんでも自信たっぷりにやってみるお方なのです。自己肯定感がとても強い」
「分かる」
ということで……。
騒がしいのがスローライフに加わってくるのだ……!
一方は目下、俺が一番結婚したい女性ナンバーワン、気立てがよくて家庭的なオーガの少女カトリナ。
一方は目下、俺が一番会いたくない女ナンバーワン、謀略と策略で各国から畏れられる王女トラッピア。
「くそー、パワーでは勝てないわ!! せいっ」
「うっ」
トラッピアがカトリナの胸元に鋭い逆水平チョップをして、彼女をひるませた。
その隙に間合いを取る。
さすが王女、体術も学んでいるんだな。
どうみてもプロレスのムーブだったが。
そして、王宮で会った時よりも彼女の喋りがフランクになっている。
あれがもともとのトラッピアの口調なんだろう。
「人間の女がどれだけ小細工を弄しても、私には通用しないんだからね!」
「おっ、カトリナが凄くオーガっぽい言い回しをした!」
俺は感心した。
いつもほんわかしてて優しい娘なので、オーガというかおっかさんみたいだなあと思っていたのだが、やはりオーガであったか。
「わたしは自らが前線で戦うわけではないの! ええい、こんな強敵がショートの近くにいるなんて聞いていないわ。特戦隊!」
「は、はい!」
特戦隊のでかいやつが標的になった。
「あの女のことが報告になかったけど!」
「あの女じゃないよ! 私はカトリナ!」
「お前の名前なんか聞いてないわよ!!」
「性格悪ーい!」
「なあんですって!」
「なによー!」
「「むきーっ!!」」
大変だ!!
「こりゃあ血の雨が降るぞ」
俺が戦慄していたら、ブルストがスススっと女子二名の間に入っていった。
「まあまあ待て待て。カトリナも、お姫様もあれだろ。ショートのことが好きなんだな」
「はっ」
「はっ」
この一言で、我に返るカトリナとトラッピア。
二人とも、サッと距離を取った。
おお、一瞬で二人の熱を冷ました。
やるな、ブルスト。
これには特戦隊の面々も感心している。
「やるなあ」
「なかなかの策士だ」
「まあ、年の功だからな」
褒められて嬉しそうなブルスト。
なんか、うちの男どもと特戦隊はすっかり仲良くなりそうな空気だ。
だが、状況は全然解決してないけどな。
「いい? ショートはこの国にとって大事なの。だから、わたしが王都へ連れ帰って婿にするのよ!!」
「なんでショートじゃないといけないの! 貴族とかたくさんいるでしょ。それでいいじゃない!」
「だめよ!! ショートは特別なのよ! そりゃ、召喚したばかりの時は頼りなさそうだったし、50Gと布の服と木の棒だけ渡して外に出すお父様の仕打ちに、さすがの私も目を疑ったけど」
「ひどい! 王様ひどい!!」
「そう。うちのお父様後先考えないで目先の利益だけでそういうことするから!! だから国がガタガタで今にも各国から攻められそうなのよ! この状況をどうにかするにはショートが必要なの!」
「だったらお婿さんにする必要ないでしょ? っていうか、ショートはそんなに強いの? え? 召喚……? ショートが?」
「いかん!!」
俺は動き出した。
一瞬でトラッピアのところに現れて、人差し指で彼女の唇を塞ぐ。
「そのことは内密に……な」
「もごもごもご」
彼女は唇をむずむずさせながら、ちょっと頬を赤くしている。
「カトリナ、つまり、俺は魔法をかなり使える人ショートなので強いのだ」
「うん。こっちの人たちをあっという間にやっつけたもんね。ショートがすごく強いのは分かるよ。でも、ならお婿さんじゃなくていいんじゃないかなーって」
「もごもご……ぷはあ! ショート! 指先でわたしの口を閉じさせるのやめなさい! するなら唇で……じゃない、いい、オーガの娘カトリナ! 彼は婿でないと絶対に意味がないのよ! それは! それは! それは……」
おっと、その先の言葉が出てこないぞ。
なんとなく先を察しているのか、ブルストと特戦隊の面々がニヤニヤしながら見守っている。
お前らなあー。
「わ、わ、わたしのモチベーションが違うのよ!!」
「そんなのあなたの勝手じゃない! 私だってショートがいないと楽しくない!! だからショートはあげません!」
「な、なんですってー!」
「なによー!!」
いかん、話が元のところに戻った。
うーむ。
俺が唸っていると、クロロックが肩を叩いてきた。
「優れたオスであるならば二人に卵を産ませればいいのでは?」
「凄く人間っぽいと思ってたらやっぱりあんた思考がカエルだな!?」
「やっぱりも何も、ワタクシはカエルですが」
けろけろーと喉を鳴らすクロロック。
だが、クロロックの提案は二人の娘に気づきを与えたらしい。
「いいわ。ならばショートに見極めてもらうわ! わたしとこの女のどちらが妻に相応しいか!」
「そうだね! ……えっ、妻!? それってお嫁さん……あーん」
カトリナがもじもじした。
可愛い。
そしてそれを見て、トラッピアも赤くなる。
「あなたね!! そうやって恥ずかしがっているとこちらまでシラフに戻って恥ずかしくなるでしょう!!」
どうやら二人が俺を取り合って戦うようだ……。
一体どういうことだってばよ?
よく事情は分からんが、大体状況は把握した。
「よし、ではトラッピアはしばらくこっちで暮らしてみて、辺境生活というものを体験していくのでいいか?」
「なんでそういう方向になるの!? ああ、でも、わたしとこの女の格の違いを見せつけてやるためにはそれがいいかも知れないわね……!! ふふふふふ!!」
なんて自信だ!
俺は特戦隊のギロスに聞いてみる。
「もしや王女はスローライフ経験が?」
「あるわけないではないですか」
「だよねー」
「大体なんでも自信たっぷりにやってみるお方なのです。自己肯定感がとても強い」
「分かる」
ということで……。
騒がしいのがスローライフに加わってくるのだ……!