日が傾いてきた辺りで釣りは終わりだ。
俺はどうにか、手のひらに収まる程度の魚を二匹釣った。
微妙な釣果過ぎてネタにもならないぞ……!
カトリナはあの後、彼女のふとももくらいあるようなでかくて太い魚を釣った。
じっと魚と彼女の太ももを見比べてたら、ぺちぺち叩かれた。
お気づきになりましたか……。
「よし、焼いて食うぞー!」
ブルストの宣言に、俺たちは快哉をあげた。
「ところでブルスト、カトリナ。火を起こすのを魔法でやるのは無粋か?」
「いや、面倒がなくていいだろ」
「うん、今度はお願いね、ショート」
「よし来た。念動魔法サイキックボール(俺命名)!」
これは俺の名付けた魔法の中でかなりカッコいいネーミングのやつだ。
まともそうなのは、大体日本で見たマンガとかアニメからパクっている。
俺が手のひらを向けた先で、岩と岩が浮かび上がり、念動力で作られた球体の中でぶつかりあい、こすりあい、高速回転を始めた。
摩擦と回転で、岩が熱されて赤熱していく。
そう、これは岩とかを超高速、超高圧で溶かして火を作る魔法なのだ。
薪がいらないので経済的だぞ。
実際の使用用途はこれで城壁を城塞都市ごと粉砕することね。
ブルストとカトリナがポカーンとしてこれを見ている。
エンサーツが何故か爆笑していた。
「魚を焼く火を起こすだけで、何やってんだショート! 相変わらず大雑把だなあ」
「なに、大は小を兼ねる……」
やがて、圧縮された赤熱岩が開放された。
これで当分の間熱を発し続けるぞ。
「も、もう使っていい? ほえー、焚き火じゃなくて真っ赤に燃える石だあ」
カトリナが恐る恐る近づいていく。
だが、オーガ親子は適応力が高い。
すぐに慣れて、ちゃっちゃと魚を焼く準備を始めた。
串で魚をぶすっと刺して、岩……いや、もうサイズ的には石だ……の周りに並べていく。
「このでかいのはどうする? 串に刺す?」
「これは切り身だな」
俺とエンサーツも加わって、和気あいあいと魚をバラすのだ。
「こう……釣りをして、釣った魚を食うぞって作業してるとなあ。取引所のことなんか何もかも忘れて、リラックスできるんだ。いやあ、今回は本当に査察に来てよかった」
「村にとっては災難だったがな」
「お前が俺を呼んだんだろうがショート。つうか、ドルモットをお前が倒さなかったら、今頃俺は一介の文官でいられたんだぞ」
「そんな筋肉の文官がいるか」
そして俺とエンサーツでげらげら笑った。
エンサーツはドルモットの部下だった男で、強い意志で魔王の誘惑を跳ね除けた唯一の人物だったのだ。
ということで、魔族化したドルモット一味をジェノサイドした後、残ってるまともな奴は彼だけだった。
「日々大変そうだなあ」
「大変だぞ。どこかの勇者が逃げたせいでもっと大変になった」
「どこの勇者だろうなあ」
魚を並べていく。
この赤熱石、遠赤外線とかきっと発してるから、中身までふっくらと焼き上げてくれるぞ。
楽しみ楽しみ。
「ショート、エンサーツさんと仲良しなんだね」
おおよその用意を終えたカトリナが微笑む。
「そうだな。割と王都を股にかけた大捕物で、苦楽をともにした仲ではある」
「お前、何気に波乱万丈だな」
感心するブルスト。
波乱万丈なんて次元ではない。
この世界の時間でおよそ三年を掛け、レベル上げを連続しながらひたすら世界中に散りばめられたイベントをこなしていったのだ。
リアルタイムアタックのようであった。
それを考えると、今のゆったりとした日々は夢のようだ。
エンサーツには悪いが、俺はここでスローに暮らさせてもらうぞ……!!
ちなみに俺とエンサーツの冒険を細かく語ると、明らかに俺が勇者であるとバレてしまうのでここはぼかしておく。
「俺とエンサーツで、ドルモットが魔族である尻尾を掴んでな。なんだかんだあって、倒したんだ」
「へえ、大したもんだな! というか、あのドルモットが魔族だったなんてなあ……。まるで勇者様みたいじゃねえか」
「!? ブルスト、俺の話のどこかに勇者を想像させる要素が……?」
「想像も何も、あの偉人の正体を暴いて倒して、王都の取引所を改革したんだろ? 勇者様みてえにすげえことやってるじゃねえか」
「あれってそんなにスケールのでかいことだったのか……!! あの頃、ああいうクラスのイベントばっかり起きてたから気づかなかった……!」
不覚!
「ショート、お前、かなり世間一般と感覚がずれてるからな? この田舎暮らしで落ち着くといいな」
エンサーツ、優しい。
さながら俺は、戦場から帰ってきた兵士のようなものだ。
ついつい魚に逃げられただけで、世界の半分を凍りつかせる極低温魔法を使おうとしてしまう。
そう、世界は平和になったのだ……。
「ショート、お魚焼けたよ。はい、ショートが釣ったぶん」
「うおお、俺が初めて釣った魚ぁ!」
カトリナに手渡してもらい、俺はジーンと感動しながらこれにかぶりついた。
美味い!
小骨が多いが、魔石だって噛み砕く俺の歯なら問題ない。
これもレベルが限界突破したおかげだな。
「ところでショート。俺はお前と接触したって話は誰にもしてないんだがな」
「ふぉう」
はふはふと魚を食べながら、エンサーツの話を聞く。
「何故か姫様が勘付いたみたいなんだ」
「ふぉ!?」
「トラッピア王女殿下が、まさかここまでは来ないと思うが……」
や、やめてくれ縁起でもない……!
俺はどうにか、手のひらに収まる程度の魚を二匹釣った。
微妙な釣果過ぎてネタにもならないぞ……!
カトリナはあの後、彼女のふとももくらいあるようなでかくて太い魚を釣った。
じっと魚と彼女の太ももを見比べてたら、ぺちぺち叩かれた。
お気づきになりましたか……。
「よし、焼いて食うぞー!」
ブルストの宣言に、俺たちは快哉をあげた。
「ところでブルスト、カトリナ。火を起こすのを魔法でやるのは無粋か?」
「いや、面倒がなくていいだろ」
「うん、今度はお願いね、ショート」
「よし来た。念動魔法サイキックボール(俺命名)!」
これは俺の名付けた魔法の中でかなりカッコいいネーミングのやつだ。
まともそうなのは、大体日本で見たマンガとかアニメからパクっている。
俺が手のひらを向けた先で、岩と岩が浮かび上がり、念動力で作られた球体の中でぶつかりあい、こすりあい、高速回転を始めた。
摩擦と回転で、岩が熱されて赤熱していく。
そう、これは岩とかを超高速、超高圧で溶かして火を作る魔法なのだ。
薪がいらないので経済的だぞ。
実際の使用用途はこれで城壁を城塞都市ごと粉砕することね。
ブルストとカトリナがポカーンとしてこれを見ている。
エンサーツが何故か爆笑していた。
「魚を焼く火を起こすだけで、何やってんだショート! 相変わらず大雑把だなあ」
「なに、大は小を兼ねる……」
やがて、圧縮された赤熱岩が開放された。
これで当分の間熱を発し続けるぞ。
「も、もう使っていい? ほえー、焚き火じゃなくて真っ赤に燃える石だあ」
カトリナが恐る恐る近づいていく。
だが、オーガ親子は適応力が高い。
すぐに慣れて、ちゃっちゃと魚を焼く準備を始めた。
串で魚をぶすっと刺して、岩……いや、もうサイズ的には石だ……の周りに並べていく。
「このでかいのはどうする? 串に刺す?」
「これは切り身だな」
俺とエンサーツも加わって、和気あいあいと魚をバラすのだ。
「こう……釣りをして、釣った魚を食うぞって作業してるとなあ。取引所のことなんか何もかも忘れて、リラックスできるんだ。いやあ、今回は本当に査察に来てよかった」
「村にとっては災難だったがな」
「お前が俺を呼んだんだろうがショート。つうか、ドルモットをお前が倒さなかったら、今頃俺は一介の文官でいられたんだぞ」
「そんな筋肉の文官がいるか」
そして俺とエンサーツでげらげら笑った。
エンサーツはドルモットの部下だった男で、強い意志で魔王の誘惑を跳ね除けた唯一の人物だったのだ。
ということで、魔族化したドルモット一味をジェノサイドした後、残ってるまともな奴は彼だけだった。
「日々大変そうだなあ」
「大変だぞ。どこかの勇者が逃げたせいでもっと大変になった」
「どこの勇者だろうなあ」
魚を並べていく。
この赤熱石、遠赤外線とかきっと発してるから、中身までふっくらと焼き上げてくれるぞ。
楽しみ楽しみ。
「ショート、エンサーツさんと仲良しなんだね」
おおよその用意を終えたカトリナが微笑む。
「そうだな。割と王都を股にかけた大捕物で、苦楽をともにした仲ではある」
「お前、何気に波乱万丈だな」
感心するブルスト。
波乱万丈なんて次元ではない。
この世界の時間でおよそ三年を掛け、レベル上げを連続しながらひたすら世界中に散りばめられたイベントをこなしていったのだ。
リアルタイムアタックのようであった。
それを考えると、今のゆったりとした日々は夢のようだ。
エンサーツには悪いが、俺はここでスローに暮らさせてもらうぞ……!!
ちなみに俺とエンサーツの冒険を細かく語ると、明らかに俺が勇者であるとバレてしまうのでここはぼかしておく。
「俺とエンサーツで、ドルモットが魔族である尻尾を掴んでな。なんだかんだあって、倒したんだ」
「へえ、大したもんだな! というか、あのドルモットが魔族だったなんてなあ……。まるで勇者様みたいじゃねえか」
「!? ブルスト、俺の話のどこかに勇者を想像させる要素が……?」
「想像も何も、あの偉人の正体を暴いて倒して、王都の取引所を改革したんだろ? 勇者様みてえにすげえことやってるじゃねえか」
「あれってそんなにスケールのでかいことだったのか……!! あの頃、ああいうクラスのイベントばっかり起きてたから気づかなかった……!」
不覚!
「ショート、お前、かなり世間一般と感覚がずれてるからな? この田舎暮らしで落ち着くといいな」
エンサーツ、優しい。
さながら俺は、戦場から帰ってきた兵士のようなものだ。
ついつい魚に逃げられただけで、世界の半分を凍りつかせる極低温魔法を使おうとしてしまう。
そう、世界は平和になったのだ……。
「ショート、お魚焼けたよ。はい、ショートが釣ったぶん」
「うおお、俺が初めて釣った魚ぁ!」
カトリナに手渡してもらい、俺はジーンと感動しながらこれにかぶりついた。
美味い!
小骨が多いが、魔石だって噛み砕く俺の歯なら問題ない。
これもレベルが限界突破したおかげだな。
「ところでショート。俺はお前と接触したって話は誰にもしてないんだがな」
「ふぉう」
はふはふと魚を食べながら、エンサーツの話を聞く。
「何故か姫様が勘付いたみたいなんだ」
「ふぉ!?」
「トラッピア王女殿下が、まさかここまでは来ないと思うが……」
や、やめてくれ縁起でもない……!