エンサーツを背負って、空を飛ぶ。
こいつは鍛えてるから、時速百キロ程度ならピンピンしているのだ。
「お前におぶられて飛ぶのも久々だなあ」
「俺はあんまりおっさんを背負いたくはないけどな」
「はっはっは、そう言うな。もう何回も運んでもらった仲じゃねえか」
「不本意ながらな! なんかこう、俺はおっさんにモテるんだ……!」
あっという間に、ログハウスに到着だ。
野良仕事の続きをやっていたブルストが、すぐ俺に気付いた。
「おーいショートー! なんだ、誰か連れて来たのか」
「おいショート。オーガの男がいるな。誰だあれは」
地上に降り立つ俺。
右手にオーガのおっさんブルスト。
左手にスキンヘッドのおっさんエンサーツ。
くそう、おっさんに挟まれても何も嬉しくないぞ。
だが悲しいかな、俺は女子に挟まれたことはない。
「一度でいいから女子に挟まれてみたいものだ」
俺がぼそりと呟いたら、何やら脳内を、ビビビッと電撃のようなものが駆け抜けた気がした。
この呟きが現実になる予感だ。
だがフシギと、あまり心躍らない現実としてそれがやってくるような気もしたのだった。
「ほう、あんたがショートを助けてくれたのか! そいつは世話になったな!」
「へえ、王国取引所の所長? そんな偉い奴がショートの友達とはなあ」
「俺もショートには世話になったからな。あいつの活躍がなければ、俺は死んでいただろう」
「そいつは大恩人だな! 俺もショートには色々助けてもらってよ。娘がいるんだが、あいつがよく笑うようになったんだ」
「ほう! ショートが女を? わはは! ついにあいつにも春が来たか!」
「それがよ、両方とも奥手でなあ」
「おお、長引きそうだな」
おっさんどもが二人でキャッキャウフフと会話してやがる。
こいつら、ともにでかくて筋肉ムキムキなので、二人並ぶと視界の大半が埋め尽くされる。
俺をダシに盛り上がるのはいかがなものか。
「ショート、戻ったの? お昼ごはん……きゃっ、この間ショートがお話してた人……!?」
俺たちを呼びに来たカトリナが、エンサーツを見てびっくりした。
そりゃあ、いきなりスキンヘッドの強面マッチョが増えてたら驚くよな。
素手で下位魔族を制圧できるほどの肉体を持つこの男が、ハジメーノ王国でも名うての凄腕文官だというのだから世の中は分からない。
かくして、エンサーツも昼食をとることになった。
今日の昼飯は、戻した干し肉のスープだ。
味付けはシチューとほぼ一緒だな。
「うまいな」
「だろう。カトリナの飯はうまいんだ」
「わっはっは、娘の飯は王都の飯屋にも負けてないぞ!」
男三人で、昼食をガツガツ食べる。
うまいうまいと言われて、カトリナは嬉しそうだ。
「ずっとお父さんしか食べる人がいなかったけど、最近はショートもいるし、新しい人もくるし、作りがいがあるなあ」
ちなみにこっちの世界の住人は、平気で毎日同じものを食う。
なので、同じ材料でちょこちょこ料理の仕方を変えるカトリナは、かなり凝り性な方だ。
食材が増えると、もっと食べ物の種類にも幅が出るかもな。
「ショートが辺境に潜んでるって聞いて驚いたもんだがな。思ったよりもいい暮らしをしてて安心したぜ。なんなら羨ましいくらいだ。俺は毎日仕事ばかりでなあ。まあ、魔王が倒されたから、平和な時こそ俺は忙しくなるんだが」
「王都から来た人が魔王が倒されたって言うなら、本当に倒されたんだなあ……」
しみじみとブルストが呟く。
ここ最近、急速に魔物たちの動きが穏やかになってきているのだ。
もう、普通の動物と変わらない。
魔王が倒されたらしいという話は世界中に広がりつつあり、長い間この世界、ワールディアを包み込んでいた絶望的な空気は消え去りつつあった。
多分、ハジメーノ王国で言うとこの辺境が一番端っこだと思うけれど、ここまで魔王倒される、という噂が広まるのに大体一ヶ月かかったな。
つまり、俺が魔王を倒してから一月経つわけだ。
「今日は無理やり休暇ってことにした。っていうか、ショートが俺を呼んでくれて、お陰で王都を離れられたんだ。ちょっとゆっくりさせてくれ」
「エンサーツ、俺をダシにしたな?」
「わはは! いいじゃねえか。またこの借りは返すからよ」
このやり取りを聞いて、ブルストがなにか考えたようだ。
「なら、釣りにでも行くか」
「おお、釣りか!」
目を輝かせるエンサーツ。
「あ、私も行きたい!」
元気に挙手するカトリナ。
「ほう、釣りか」
腕組みしながら偉そうに言ってはみたが、俺は釣り未経験だぞ。
この世界に来て、魔王軍に勝つ以外のことはほとんどやってなかったからな!
「ショートはきっと、釣り得意だよね」
「ふふふ」
いや、未経験なのだカトリナ……!
俺は釣りの能力ではこの中でも最弱……!
「あ、こいつ、釣りはしたことなかったぞ」
「こらエンサーツ! ……いや、助かった。危うく強がって大恥をかくところだったぜ」
「そうなんだ。じゃあ、私が教えてあげるね?」
カトリナが、俺に……!?
これは大変なことになって来ましたぞ。
新たな経験と、カトリナと堂々とイチャイチャできそうな予感に心ときめく俺なのだった。
こいつは鍛えてるから、時速百キロ程度ならピンピンしているのだ。
「お前におぶられて飛ぶのも久々だなあ」
「俺はあんまりおっさんを背負いたくはないけどな」
「はっはっは、そう言うな。もう何回も運んでもらった仲じゃねえか」
「不本意ながらな! なんかこう、俺はおっさんにモテるんだ……!」
あっという間に、ログハウスに到着だ。
野良仕事の続きをやっていたブルストが、すぐ俺に気付いた。
「おーいショートー! なんだ、誰か連れて来たのか」
「おいショート。オーガの男がいるな。誰だあれは」
地上に降り立つ俺。
右手にオーガのおっさんブルスト。
左手にスキンヘッドのおっさんエンサーツ。
くそう、おっさんに挟まれても何も嬉しくないぞ。
だが悲しいかな、俺は女子に挟まれたことはない。
「一度でいいから女子に挟まれてみたいものだ」
俺がぼそりと呟いたら、何やら脳内を、ビビビッと電撃のようなものが駆け抜けた気がした。
この呟きが現実になる予感だ。
だがフシギと、あまり心躍らない現実としてそれがやってくるような気もしたのだった。
「ほう、あんたがショートを助けてくれたのか! そいつは世話になったな!」
「へえ、王国取引所の所長? そんな偉い奴がショートの友達とはなあ」
「俺もショートには世話になったからな。あいつの活躍がなければ、俺は死んでいただろう」
「そいつは大恩人だな! 俺もショートには色々助けてもらってよ。娘がいるんだが、あいつがよく笑うようになったんだ」
「ほう! ショートが女を? わはは! ついにあいつにも春が来たか!」
「それがよ、両方とも奥手でなあ」
「おお、長引きそうだな」
おっさんどもが二人でキャッキャウフフと会話してやがる。
こいつら、ともにでかくて筋肉ムキムキなので、二人並ぶと視界の大半が埋め尽くされる。
俺をダシに盛り上がるのはいかがなものか。
「ショート、戻ったの? お昼ごはん……きゃっ、この間ショートがお話してた人……!?」
俺たちを呼びに来たカトリナが、エンサーツを見てびっくりした。
そりゃあ、いきなりスキンヘッドの強面マッチョが増えてたら驚くよな。
素手で下位魔族を制圧できるほどの肉体を持つこの男が、ハジメーノ王国でも名うての凄腕文官だというのだから世の中は分からない。
かくして、エンサーツも昼食をとることになった。
今日の昼飯は、戻した干し肉のスープだ。
味付けはシチューとほぼ一緒だな。
「うまいな」
「だろう。カトリナの飯はうまいんだ」
「わっはっは、娘の飯は王都の飯屋にも負けてないぞ!」
男三人で、昼食をガツガツ食べる。
うまいうまいと言われて、カトリナは嬉しそうだ。
「ずっとお父さんしか食べる人がいなかったけど、最近はショートもいるし、新しい人もくるし、作りがいがあるなあ」
ちなみにこっちの世界の住人は、平気で毎日同じものを食う。
なので、同じ材料でちょこちょこ料理の仕方を変えるカトリナは、かなり凝り性な方だ。
食材が増えると、もっと食べ物の種類にも幅が出るかもな。
「ショートが辺境に潜んでるって聞いて驚いたもんだがな。思ったよりもいい暮らしをしてて安心したぜ。なんなら羨ましいくらいだ。俺は毎日仕事ばかりでなあ。まあ、魔王が倒されたから、平和な時こそ俺は忙しくなるんだが」
「王都から来た人が魔王が倒されたって言うなら、本当に倒されたんだなあ……」
しみじみとブルストが呟く。
ここ最近、急速に魔物たちの動きが穏やかになってきているのだ。
もう、普通の動物と変わらない。
魔王が倒されたらしいという話は世界中に広がりつつあり、長い間この世界、ワールディアを包み込んでいた絶望的な空気は消え去りつつあった。
多分、ハジメーノ王国で言うとこの辺境が一番端っこだと思うけれど、ここまで魔王倒される、という噂が広まるのに大体一ヶ月かかったな。
つまり、俺が魔王を倒してから一月経つわけだ。
「今日は無理やり休暇ってことにした。っていうか、ショートが俺を呼んでくれて、お陰で王都を離れられたんだ。ちょっとゆっくりさせてくれ」
「エンサーツ、俺をダシにしたな?」
「わはは! いいじゃねえか。またこの借りは返すからよ」
このやり取りを聞いて、ブルストがなにか考えたようだ。
「なら、釣りにでも行くか」
「おお、釣りか!」
目を輝かせるエンサーツ。
「あ、私も行きたい!」
元気に挙手するカトリナ。
「ほう、釣りか」
腕組みしながら偉そうに言ってはみたが、俺は釣り未経験だぞ。
この世界に来て、魔王軍に勝つ以外のことはほとんどやってなかったからな!
「ショートはきっと、釣り得意だよね」
「ふふふ」
いや、未経験なのだカトリナ……!
俺は釣りの能力ではこの中でも最弱……!
「あ、こいつ、釣りはしたことなかったぞ」
「こらエンサーツ! ……いや、助かった。危うく強がって大恥をかくところだったぜ」
「そうなんだ。じゃあ、私が教えてあげるね?」
カトリナが、俺に……!?
これは大変なことになって来ましたぞ。
新たな経験と、カトリナと堂々とイチャイチャできそうな予感に心ときめく俺なのだった。