『ウグワーッ!! おのれ、おのれ勇者めえーっ! まさかこのわしを倒すとはーっ!』
「ああ、長い戦いだったぜ! さよならだ、魔王マドレノース!!」
『こ、これで終わらんぞ勇者! わしが死んでも、まだ星辰の彼方より魔王種が何度でも飛来する……! 戦いは永遠に……!』
「ツアーッ!」
『ウグワーッ!!』
それが魔王の最期だった。
俺の聖剣エクスラグナロクカリバー(俺命名)が炸裂し、魔王マドレノースは光の中に消えた。
「やったぞ!」
「やったわ!」
「勇者の勝利だ!」
仲間たちが快哉をあげる。
戦士パワース、僧侶ヒロイナ、賢者ブレインの三人だ。
こうしてマドレノースを倒し、世界を闇の脅威から救った俺たちを、ハジメーノ王国は大歓迎した。
「よくぞやってくれた、勇者よ!!」
国王、ザマァサレ一世が告げる。
「そして勇者の仲間たちよ。お前たちのお陰で、世界は救われた! 勇者ショートよ! お前には真の勇者としての名誉と、そして私の娘、トラッピア王女との結婚を許そう」
ザマァサレ一世の横で、ちょっと気が強そうな王女が微笑む。
「勇者ショート。わたくしとあなたが結婚したら、ハジメーノ王国はきっと発展しますわ! そして女王としてわたくしが立ち、世界を統べますの……!」
集まった家臣たちが、うわーっと盛り上がる。
「ばんざい! ハジメーノ王国ばんざい!」
「ハジメーノ王国に栄光を! 勇者ショートに栄光を!」
城の外では、民衆も盛り上がっている。
まさに、古き良きRPGならばクライマックスシーン。
ここでエンディングが流れるところだ。
だがちょっと待って欲しい。
「国王、俺は元の世界に帰りたいのだが?」
俺が告げると、国王と王女の笑顔がピシリと凍りついた。
「俺は魔王を倒す約束で召喚され、スキルを得てレベルを上げて、仲間を増やして伝説の武器を手に入れて、魔王を倒した。約束は果たしたはずだ」
「うむ」
「俺を元の世界に返して欲しい」
俺の言葉に、謁見の間がシーンとなった。
「ごほん、ごほん」
王が咳払いする。
「お主には伝えていなかったな。召喚魔法は片道なのだ」
「はい?」
「お主を元の世界に戻す魔法はない」
「はい!?」
「だから諦めて、トラッピアと一緒になれ。そしてハジメーノ王国をもり立ててやってくれ!」
「はいぃぃぃぃ!?」
俺はようやく理解した。
は……はめられた!!
こいつら、俺を元の世界に戻す気なんか無かったのだ。
「俺は! 地球に戻りたいんだよ! スマホと! ソシャゲと! コンビニ飯とコンビニスイーツがある世界に戻りたいんだ! ダラダラ寝転がって自堕落にソシャゲをしてガチャを回しながらスイーツを食って、気付いたら寝落ちして朝を迎え、やべえ学校遅刻するとか思ったけど、よく考えたら卒業してたし就職もしてないから、問題ないやって朝を迎えたいんだ!」
そこまで一息に告げてから、俺は肩で息をする。
あれ?
よく考えたら地球は地球で、俺は詰んでない?
ああ、でもまあ、こっちには娯楽がないしなあ。
あっちでアニメとかマンガを楽しみたい……。
しかし、悲しそうに王は首を横に振った。
「ならん。勇者よ。これまで召喚されてきた者達も、皆この世界に骨を埋めたのだ。お前もそうするのだ」
「どうして俺を召喚できる魔法があるのに、送還はできないんだ!」
「色々余裕がないし、この世界に勇者を送還するメリットが無いから全く研究されておらんのだ!!」
「な、なるほどぉ」
俺は納得してしまった。
「よし、者共! 宴の用意だ! そしてその宴でなし崩し的に世界に向けて、勇者ショートとトラッピアの婚約を発表するぞ!」
「うおおお! 既成事実を作って俺を逃さないつもりだな!! やらせはせん、やらせはせんぞ国王!!」
俺は吠えた。
「浮遊魔法、フワリ(俺命名)!!」
俺が呪文を唱える。
「いかん! 勇者が逃げようとしておる! 捕まえろ皆のもの!!」
「マジックウェブ!」
「マジックストリング!」
「勇者よ待てーっ!!」
あちこちから妨害の魔法や、兵士が飛びかかってきたりする。
ええい、しゃらくせえ。
魔王や魔将どもの攻撃に比べれば、そよ風にも劣るぜ!
「高速移動魔法、バビュン(俺命名)!!」
俺は叫んだ。
その瞬間、俺の体が加速する。
王の頭上の壁面に突っ込み、レベルに任せた防御力で石の壁を粉々に砕く。
「ウグワーッ!?」
俺の飛ぶ勢いで、みんなふっとばされて悲鳴を上げた。
念のため、誰も犠牲にならないように広域回復魔法を掛けておく。
「広域回復魔法、グントナオール(俺命名)!!」
いちいち俺命名とついているのは、この魔法はすべて俺のオリジナルだからだ。
そう、俺にネーミングセンスは無い。
こうして俺は、ハジメーノ王国を飛び出すことになった。
魔王を倒した勇者が!
王国を逃げ出して!
まさかの放浪スタート!
仲間たちは国から金をたっぷりもらって、一生遊んで暮らせる身分になっている。
ヒロイナなんかパーティの紅一点だし俺とちょっと仲良かったし、これは俺にとってのヒロインじゃないのかなーって思ってたけど、なんかそんな事はなかったし!
てか、いつの間にパワースとくっついてんだよ!
さらば昔のパーティ。
お前らとも会うことはあるまい……。
案外、昔のRPGのエンディングもその後はこんなんだったのかも知れないな。
さあ、どこに行こうか……。
─────────
壮大なる冒険が終わり、なんか終わった……何もかも……となった勇者が、最強無敵の力だけを持て余しつつスローライフに挑戦する物語がスタート!
ヒロインとヒロイン(おっさん)のダブルヒロイン体制です。
「ああ、長い戦いだったぜ! さよならだ、魔王マドレノース!!」
『こ、これで終わらんぞ勇者! わしが死んでも、まだ星辰の彼方より魔王種が何度でも飛来する……! 戦いは永遠に……!』
「ツアーッ!」
『ウグワーッ!!』
それが魔王の最期だった。
俺の聖剣エクスラグナロクカリバー(俺命名)が炸裂し、魔王マドレノースは光の中に消えた。
「やったぞ!」
「やったわ!」
「勇者の勝利だ!」
仲間たちが快哉をあげる。
戦士パワース、僧侶ヒロイナ、賢者ブレインの三人だ。
こうしてマドレノースを倒し、世界を闇の脅威から救った俺たちを、ハジメーノ王国は大歓迎した。
「よくぞやってくれた、勇者よ!!」
国王、ザマァサレ一世が告げる。
「そして勇者の仲間たちよ。お前たちのお陰で、世界は救われた! 勇者ショートよ! お前には真の勇者としての名誉と、そして私の娘、トラッピア王女との結婚を許そう」
ザマァサレ一世の横で、ちょっと気が強そうな王女が微笑む。
「勇者ショート。わたくしとあなたが結婚したら、ハジメーノ王国はきっと発展しますわ! そして女王としてわたくしが立ち、世界を統べますの……!」
集まった家臣たちが、うわーっと盛り上がる。
「ばんざい! ハジメーノ王国ばんざい!」
「ハジメーノ王国に栄光を! 勇者ショートに栄光を!」
城の外では、民衆も盛り上がっている。
まさに、古き良きRPGならばクライマックスシーン。
ここでエンディングが流れるところだ。
だがちょっと待って欲しい。
「国王、俺は元の世界に帰りたいのだが?」
俺が告げると、国王と王女の笑顔がピシリと凍りついた。
「俺は魔王を倒す約束で召喚され、スキルを得てレベルを上げて、仲間を増やして伝説の武器を手に入れて、魔王を倒した。約束は果たしたはずだ」
「うむ」
「俺を元の世界に返して欲しい」
俺の言葉に、謁見の間がシーンとなった。
「ごほん、ごほん」
王が咳払いする。
「お主には伝えていなかったな。召喚魔法は片道なのだ」
「はい?」
「お主を元の世界に戻す魔法はない」
「はい!?」
「だから諦めて、トラッピアと一緒になれ。そしてハジメーノ王国をもり立ててやってくれ!」
「はいぃぃぃぃ!?」
俺はようやく理解した。
は……はめられた!!
こいつら、俺を元の世界に戻す気なんか無かったのだ。
「俺は! 地球に戻りたいんだよ! スマホと! ソシャゲと! コンビニ飯とコンビニスイーツがある世界に戻りたいんだ! ダラダラ寝転がって自堕落にソシャゲをしてガチャを回しながらスイーツを食って、気付いたら寝落ちして朝を迎え、やべえ学校遅刻するとか思ったけど、よく考えたら卒業してたし就職もしてないから、問題ないやって朝を迎えたいんだ!」
そこまで一息に告げてから、俺は肩で息をする。
あれ?
よく考えたら地球は地球で、俺は詰んでない?
ああ、でもまあ、こっちには娯楽がないしなあ。
あっちでアニメとかマンガを楽しみたい……。
しかし、悲しそうに王は首を横に振った。
「ならん。勇者よ。これまで召喚されてきた者達も、皆この世界に骨を埋めたのだ。お前もそうするのだ」
「どうして俺を召喚できる魔法があるのに、送還はできないんだ!」
「色々余裕がないし、この世界に勇者を送還するメリットが無いから全く研究されておらんのだ!!」
「な、なるほどぉ」
俺は納得してしまった。
「よし、者共! 宴の用意だ! そしてその宴でなし崩し的に世界に向けて、勇者ショートとトラッピアの婚約を発表するぞ!」
「うおおお! 既成事実を作って俺を逃さないつもりだな!! やらせはせん、やらせはせんぞ国王!!」
俺は吠えた。
「浮遊魔法、フワリ(俺命名)!!」
俺が呪文を唱える。
「いかん! 勇者が逃げようとしておる! 捕まえろ皆のもの!!」
「マジックウェブ!」
「マジックストリング!」
「勇者よ待てーっ!!」
あちこちから妨害の魔法や、兵士が飛びかかってきたりする。
ええい、しゃらくせえ。
魔王や魔将どもの攻撃に比べれば、そよ風にも劣るぜ!
「高速移動魔法、バビュン(俺命名)!!」
俺は叫んだ。
その瞬間、俺の体が加速する。
王の頭上の壁面に突っ込み、レベルに任せた防御力で石の壁を粉々に砕く。
「ウグワーッ!?」
俺の飛ぶ勢いで、みんなふっとばされて悲鳴を上げた。
念のため、誰も犠牲にならないように広域回復魔法を掛けておく。
「広域回復魔法、グントナオール(俺命名)!!」
いちいち俺命名とついているのは、この魔法はすべて俺のオリジナルだからだ。
そう、俺にネーミングセンスは無い。
こうして俺は、ハジメーノ王国を飛び出すことになった。
魔王を倒した勇者が!
王国を逃げ出して!
まさかの放浪スタート!
仲間たちは国から金をたっぷりもらって、一生遊んで暮らせる身分になっている。
ヒロイナなんかパーティの紅一点だし俺とちょっと仲良かったし、これは俺にとってのヒロインじゃないのかなーって思ってたけど、なんかそんな事はなかったし!
てか、いつの間にパワースとくっついてんだよ!
さらば昔のパーティ。
お前らとも会うことはあるまい……。
案外、昔のRPGのエンディングもその後はこんなんだったのかも知れないな。
さあ、どこに行こうか……。
─────────
壮大なる冒険が終わり、なんか終わった……何もかも……となった勇者が、最強無敵の力だけを持て余しつつスローライフに挑戦する物語がスタート!
ヒロインとヒロイン(おっさん)のダブルヒロイン体制です。