「あなたが犯人です。逮捕します」
 ある殺人事件の現場。
 刑事は若い男を指差し、手錠をかける。
「しょ、証拠は? 私がやったという証拠はあるのか?」
「そんなものは必要ありません」
 抗おうとする男に、刑事は宣告する。
「AIがあなたを犯人と結論づけています。それだけで十分です」
 科学技術が発達したこの時代。
 もはや何をするにしても人工知能が関わってくるといっても過言ではない。警察の捜査も例外ではなかった。
「ま、待て。私にはアリバイあるぞ!」
「関係ありません。AIの出した結論ですから」
「さ、殺人を犯す動機だってないんだ!」
「関係ありません。AIの出した結論ですから」
「こ、こんなの無茶苦茶だ!」
「関係ありません。AIの出した結論ですから」
 膨大なデータから人工知能は犯人を的確に割り出す。
 だが、答えを出すその過程や理由は誰にも分からない。どんなトリックを使われたか。凶器は何なのか。なぜ殺したのか……諸々のミステリー要素は全て無視される。
 警察はただただ、犯人とされた人物を逮捕すれば良いだけだった。
「まるでAIの言いなりじゃないか。あんたは刑事として、それで良いのか!」
 容疑者。
 いや、犯人の男が叫ぶ。刑事は憮然とした顔でそれを無視した。