更衣室で別れて先に教室へ入ると、着替えを終えた佳純が、「頭が痛くなっちゃったの?」と遠慮がちに聞いた。

「うん。実は私、かなり重い頭痛もちで。またこれからも迷惑かけるかもしれないけど……」

 さらりと自分の持病を話せたことに、夕莉は内心驚いていた。佳純と出会ってまだ間もないのに、ここまで告白できるのは、彼女がお人好しを絵に描いたような見た目をしているからか。それとも「デイケア組」という安全な檻に囲まれた中で、ある種の心地よさを抱き始めたからか。どちらにせよ、すっきりしたことは確かだった。

「そっか。それは大変だね」

 佳純の言い方は丁寧で、気遣いが感じられた。彼女はどんな事情でこの学級にいるのだろうと問いかけたくなったが、向こうから言いだしてこない限りは、詮索しないほうが優しさだと思い、やめた。

 夕莉は佳純と他愛のない話をしながら、次の授業の教科書を準備した。翠も制服に着替えて戻ってきて、そばにいた男子たちと楽しそうにしゃべり始めた。
 お互い友人ができたことで、余裕が生まれた。今日の帰りはそれぞれ別かな、と考えた。

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