「彼は最初、私たちのことをうっとうしがっていた。あまり口もききたがらなかったし。てっきり嫌われているんだと思っていた。どうにも放っておけなくて、しょっちゅう絡んでいたから」
冬華が昔を懐かしむように目を伏せた。
「最高学年になった時だった。彼が東京から地方の実家へ帰る時が来たの。もっと空気が綺麗なところで過ごさせたいという両親の考えで。別れの日、彼が私たちにだけ手紙をくれたの。教室で簡単な挨拶を済ませた後の、帰り道だった」
冬華の顔がぽっと上気していた。彼女は、その男の子のことが好きだったのだと、佳純たちは気がついた。
「彼が泣きながら手紙を渡したの。そして、今までありがとう、という言葉だけを告げて、帰っちゃった。
私たちは二人そろってその場で手紙を開けた。
便箋にびっしりとお礼と感謝の言葉が書かれていた。
胸が熱くなった。
その時思ったの。もっともっとたくさんの人たちの力になりたいって。困っている人を助けたいって。
同情じゃなくて、偽善じゃなくて、力になりたかったの」
冬華が話し終えると、夏央が「あいつ、今どうしているかな」と懐かしそうに言った。
冬華が昔を懐かしむように目を伏せた。
「最高学年になった時だった。彼が東京から地方の実家へ帰る時が来たの。もっと空気が綺麗なところで過ごさせたいという両親の考えで。別れの日、彼が私たちにだけ手紙をくれたの。教室で簡単な挨拶を済ませた後の、帰り道だった」
冬華の顔がぽっと上気していた。彼女は、その男の子のことが好きだったのだと、佳純たちは気がついた。
「彼が泣きながら手紙を渡したの。そして、今までありがとう、という言葉だけを告げて、帰っちゃった。
私たちは二人そろってその場で手紙を開けた。
便箋にびっしりとお礼と感謝の言葉が書かれていた。
胸が熱くなった。
その時思ったの。もっともっとたくさんの人たちの力になりたいって。困っている人を助けたいって。
同情じゃなくて、偽善じゃなくて、力になりたかったの」
冬華が話し終えると、夏央が「あいつ、今どうしているかな」と懐かしそうに言った。