『なんで死のうとしてるの?』
「……そ、そんなの関係ないじゃないですか。」
『そりゃそうか。』
なんなんだこの人。
こんな夜にどうしてここにいるんだろう。
「……もしかして貴方も死にたいんですか?」
『そうだったりもする。』
やっぱりか。
『ねぇ、月が綺麗だね。』
何を…言っているんだ…?
『ねぇってば、今日は月が綺麗なのになんで死んじゃうの?あっ、綺麗だから死ぬの?』
「…死ぬのに月も何も関係無いですよ。」
『そうかな?だって自分が最後の最後に見るものなんだよ?大袈裟に言っちゃえば最後の記憶。』
「たしかに……。」
なら僕が最後に見たのは月ではなく
貴方になってしまいます。
『なんで死にたいの?』
「えっ…。なんでそんなこと聞くんですか?」
『理由が気になったの。』
「そんなの……貴方だってわかるんじゃないですか?貴方だって死にたいんだから…。」
『私ね、死ねないの。』
何を言ってるんだ。
この世にいる限り
"死"は必ず訪れるのに。
"生"があるなら"死"も必ずある。
これは切っても切り離せない。
「……あのどういうことですか?」
『その前にフェンスから降りたら?足、痛いでしょ?』
「えっ、あ、はい。」
月明かりを反射した貴方の髪や瞳が
とても綺麗で不思議と吸い込まれるようだった。
『さっ、ここに座って?』