バスで数時間揺られ、目的地にたどり着くと見慣れた鶴の彫刻が出迎える。
2階の展望台を上がった先は、マナヅル、ナベヅル、クロヅルなどが群れをなして辺り一面に散らばる鶴景色(つるげしき)だった。

「…いやー、こーして改めて見ると、鶴ってわちゃわちゃし過ぎてあんま良いもんじゃないよね」

「感想ひどすぎ。雰囲気作り大事だよ。やり直し」

「えーと、、なんて素晴らしい景色なんだー。こんなに鶴がいたら恩返され過ぎて困っちゃうなー」
棒読みになった感想文は、自己評価できるなら8点くらいだろうか。勿論(もちろん)500点満点で。

案の定、彼女はとても(あき)れた顔をしていて、(まゆ)をハの字に下げてため息を吐いた。

「この人、本当しょうがないなー。人間関係とか、これから先の将来がほんと心配だよ」
冷たくて細い手のひらが、僕の髪に近づき、離れた。

「あんまり、無茶振り振るからだ!人間、得手不得手というものがあってだな…」
至って平然を装いながら、いつも通りのつまらない言い訳じみた自己弁論をした。

いつものため息がない。

不思議に思った僕は、彼女の方を振り向く。

遠くを見つめながら何かを考えてるようだった。
視線に気が付いたのか、僕に振り返り優しく微笑む彼女は、なんだか魅力的にも(はかな)くみえた。