『ドン、、ドン、、』

「ヤマモリ!ドア、音するわ!」

「ミズキ、退いておけ!
鍵こわすぞ。おい!タムラさん
ドアから 離れろ!ノブを蹴る」

漆黒の執事姿でヤマモリが 、
革靴の踵をドアノブに勢いよく
落とす。

「課長さん?!あんたが、どうし
て?タムラさんは?おい!
あんたが、タムラさん連れてっ
たんじゃねぇのか!何があ、」

拘束されて、ガムテープを口に
貼られる男を、ヤマモリが
せめると、

「ねぇ、課長、ここにあった
クリアボートは?あんなに
あった透明ボート全部どうし
たんですか?タムラさん、
ここに
いたんですよね?課長!!」

ミズキが
周りを確認して、声を震わせた。

地下、EARTH POOLの
手前にはボートの収納している、
倉庫。奥には水量管理室。

倉庫はもぬけの空で、
水量管理室の机には、食べた後の
食器が乗ったままに、男が1人
閉じ込められていた。だけ。


キュイ---ィィィィ… キュイィィィィィィ … キュイ…

タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~、、、

波だよ。
波に揺られてるよ。

何だっけ、絵にあったよ。
ボート、違う、そのまま水に花に
囲まれて浮かぶ
女の人の絵よ。

食事食べて、考えてたらさ、
入ってきた人に今度は毛布に
くるまれて、その後に入れられたのが棺だと思ってたよ。

棺ごと縛られてるってさ。

まさか、あのクリアボートなんて
思ってないから、
ああ、棺ごと埋められるのを、
配信でもして、パパを引き摺り
出そうってしてるんだってさ。
なんとか毛布を解いて、
顔を出したら、
ボートは、、海!!。

だって、あれ工場夜景の
クルージングで有名なとこだよ。


タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~、、、

「ハジメオーナー。
先ほどケイトウから地下には、
課長さんが拘束されており、
一足違いで
アサミさんは 別の人間に
ボート20艇と共に拐われた
様だと連絡ございました。」

瀬戸内から走らせた
メガヨットが
湾内に入った事を
ギャラリースタッフのヨミが
甲板のハジメに伝える。

「シオンくん~、ネットにさぁ
ボート 関係、近隣でぇ、
何か呟いてる人はいない~?
海かぁ、川、道路でぇ~」

トレードマークの、白スーツ姿。
ギャラリー武々1Bのオーナー
ハジメは垂れた目を、
同じくスタッフのシオンに
投げ掛ける。

「あっ!光るボートの行列がっ
クルージング観客からアップ
されてますっー。ハロウィン
イベントみたいな感じで 写真!
でもっ、場所が いろいろあって」

検索をかけた、シオンの答えに

「やっぱりぃ、人の呟きが~
1番さぁ 早いね、
どこかな~?全部言ってぇ。」

ハジメの垂れた目が細くなる。

「えーっ。海浜離宮、レインボー
橋、日の出橋、 隅田テラス、
両国水上乗り場、メッセンジャー
像、 みつまたわかれ、キリン
クレーン埠頭ですっ、てー
なんだかバラバラ過ぎですね。」

その答えに、満足そうにハジメ
が頷いた。

「いやぁ?そんな事ないよん。
2つのクルージングルートだね。
雷門方面とぉ、空港方面だ~。
さて、本丸は空港方面だけど、
ヨミくん行けるかなぁ~?」

ハジメの問いにヨミが、
手のファイルを 閉じて、
勢いよく

「無茶言わないで下さい。
今の湾内から川は、海の渋滞
時間 です。一方通行!我々は
湾内を 内陸に進む一択です!」

食いついた。

「じゃあ~、可能性を潰すって
ことでぇ、雷門へ乗り込もう!」

「 本気ですか?!よりにもよって
隅田川は銀座一丁目みたいな
ものですよ!川に無許可で
メガヨットが入れるかどうか」

「ならシオンくん~、
パーティードレス積んでる
よねぇ、仮装しよっ~!
船上パーティーしてたら~
迷い混んだってことで。アザミ
ちゃんの為だよん。さあ~、
ハロウィンメイクだよん。」

ハジメは楽しそうだが、

「ハジメオーナー!!」

ヨミの額には青筋が立つ。

「ヨミくんヤマモリ執事に連絡。
空港方面のライトボート列をぉ
追跡って。ボクらは~、
『風雷神門』側のライトボート
列を目指すよん。いいかい?」

それでも、ハジメの言葉に
メガヨットは 速度をあげる。

ググーーバシャッザーアーー

タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~、、、


凄いね。考えたね。
逃げようない
真っ黒い海に、頼りないボート。
先頭にモーターがあるんだよね、
プレジャーボートってさ、
リモート?いっか。

ライトに照らして、
バックルの電話を見たけど、
充電は切れている。

心細いはずなのに、
そうじゃないのは、きっとこの
LEDライトのお蔭よ。

前と後ろに ライトが輝く
光の舟。上からLED点滅ライトも
かけられて。

今、わたしさ
光の舟の列に乗せられて、海を
進んでいる。

空には栗満月。
波に揺られて、ハロウィンだよ。


タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~

『えっえっ!!マジッすか?!
無理に決まってるっすよ!
水上ボートなんてチャーター
するしかないっす。無理っす』

電話の向こうで戦く男の声。

「カスガとか言ったか?使えない
Assocだな。うちのオーナーは
もう片方のボートを追跡中だ。
ヤマモリ執事は、ケイと連絡で
手段を考察すると見るが、
急を要する。最善を願い出る」

それをダレンは容赦なく
食い下がる。

『もう!!暴君王子にかかわると
録なことないっすよ!あ先輩?!
そうなんすよ、ギャラリー武々1B
のダレンとかいう人が、船出せって無茶苦茶いうんすよ。えー?!
そりゃ、空港海域っすから、
重工から、飛べるなら、でも、』

どうやら、電話の向こうで風向き
変わったか?

「カスガ氏!何か出せるのか?」

ダレンの問いに、

『いや、うちの先輩が 海浜の重工
に、国内製防災ヘリを開発した
ヤツが、テストで出せるって
言うんすけど、飛ばしても、、』

Assoc!歯切れが悪い!!


タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~


空港近いとさ
飛行機の裏側が間近に見えて
凄かったよ。
夜の海に未知との遭遇。
UFOが降りてくるみたいでさ。

空港の桟橋に行くって
思ってたのにまだ沖に進むよ?
沖に大きい船影が見える。
あれに、拿捕されたら?

寒さでさ、毛布にくるまって
仰向けになって
空を仰ぎ見る。悟りだよ。


キュイ---ィィィィ… キュイィィィィィィ … キュイ…

小鳥は夜に海を渡るって聞いた
かも?て、思ってた、けど、
あれは ティカ?

白い鳥達が光ってる。
と、
パタタッ。
胸の上に 一匹が降りてくる。
傾げた頭の後ろに、ハート柄。
足に小さなライトを着けてた。
だから、あんなに
白く光って見えるんだよ。

ティカ達は
上がったり、下がったりして

栗満月の海に、光る点が
流れ星になって動く。

右から現れ、左に向かい現れて、
光る編隊飛行は、
音もなく、月光を反射して。
見てると、
涙がツーと流れた。
だってさ、ほら、音がする。

『タクタクタクタクタクタク』

独特の旋回リズム、下降の音。

『シュゥーーザ、カチャカチャ』

ゴーゴーと低音の風に
煽られ波うち始めた海面から、
わたしは、飛び起きて

何で。と呟く。

離れてスーッと海面に
落とされた
ワイヤーの先で、ヘリに
ボート寄せを指示しているのは
信じられない人間なんだよ。

「ケーーイーー!!」

ボートのヘリに手を掛けて
海面から、自分のベルトに
引っ掻けた救助ベルトを

膝立ちする
股下に手早くかけるのは、
褐色の王子なんだよ!!

「なんでさ、貴方が来るのよ!」

「黙ってろ。舌をbiteする。」

ベルトを回して、
股下からのベルトと繋ぐと、
引き上げの合図。

凄い衝撃と共に
アザミとケイの体は、海飛沫を
撒きながら、1つになって
夜空に舞い上がった。

浮遊感に悶えて
アザミが瞼を閉じると、
目元にヒヤリと感触がする。

ケイがアザミの涙跡を吸って

「 Use magic、他に誰がいる? 」

ヘルメットから妖艶に笑った。

「王子なのに?」

きっと、前髪ボサボサだね。

「Military trainingだろ。いつもの
事だ。なんだアザミ元気だな」

ん?と思った瞬間、ケイの片手がしっかり、
アザミの胸を下から掴んだ。

「信じられないよ!ケイさ、
本当、エロ王子だよね!」

弄ぐる相手の手を叩くアザミに

「10年前から nice bodyな君
が悪いな。Sorry、アザミ 」

飄々と更にバックバグする王子は
さあ、機内に着くぞと、
上を仰ぐ。
ヘリの足が見えて、

「やあ、タムラさん。ご無事で
何より。大分、心配したよ。」

場違いな執事服が見えた。

「ヤマモリさん、救助アシストも
出来るって、どんなP.Bですか?」

呆れてその顔を見上げるアザミに

「お褒め頂き。SS級なのでね。」

執事は、手を出して
2人の体を機体に引き上げた。