秋は黄昏マジックアワー。褐色の王子と恋愛混合二重奏

今日が、
ケイをツアコンするのはさ、
最後になる。

あと、急だけど、
ヒルズビレッジから わたしもさ
消える日になる、つもり。

「凄いな。bicycleボートになる
のか。知らなかった。」

アサミは、ケイの目の前で、
さっき乗ってきた
レンタルサイクルに
バナナボートみたいな浮きを
2本膨らませて、
互いに装着する。
簡易着脱ボートの自転車仕様。

自転車のペダルを動力にした
ボートになるのだ。

「これさ凄いでしょ?
ボートより動かすのも
スマートなのよ。じゃ行くよ。」

鉄道で1本、1時間も乗れば、
山や、渓谷が広がり、その景色を
彩るのは 鮮やかな 紅葉。

川面まで紅葉が生い茂るような
非日常な風景を、
自分たちが漕ぐペースで、
愛でていく。

「美しいな。ああ、この国も 神に
愛された国だな。この風景 は
祖国にはないモノで、美しい。」

そうなんだよ、ケイの国には
ない紅葉の景色。
今日は朝からだからさ、
いろんな風景を
ケイには見せてあげたい。

「朝に行った、農耕地域とはさ
また違う景色だよね。」

渓谷にくるまで走らせた
サイクリングは、秋の田畑が
牧歌的だった。

「ドローンを あんな風にtake in
しているのは 驚いた。」

紅葉の間を水の路に乗って、
下流にゆっくり向かう。

「この辺りはさ、ドローンを農業に使ってたんだね。海の赤潮対策とかに使うのはさ、わたしも
テレビで見たことあるけど。」

午前中は有機農場の体験を
ケイにしてもらって、
室内で魚介養殖をしている施設も
見学した。

最後にさ、体験ツアー出来て
良かったよ。これで契約的に
『JAPAN good point旅』は満了。

「アサミは 今日はよく話すな。」

ケイが サイクリングバックから
水筒を出す。
今日の朝に アサミが用意した
味噌汁入りの水筒だ。
あの、ペットボトルシップで
会った朝と同じ。

「今だけよ。」

紅葉を目の前に、自転車ボートに
またがったまま、ケイは ついでと
マヨおにぎりも出してきた。

「もしかしてさ、水の上でランチ
するつもり?落ちるよ。」

「せっかくのhand made だろ?」

可憐な モミジを前に食べたいと、
ケイが言うからさ、
わたしも 水筒から温かいお味噌汁
を口にするよ。

風に揺れて紅葉が水に落ちる。
課長のデスクに 辞表を
出した事を 思い出す。

髪が短くなった自分を見た時には
決めていたよ。
だから、昨日のうちに 部屋も
解約したし。

もともと、荷物なんて無いからさ

「ヒルズビレッジみたいな
urbanな場所から遠くないのに、
自然が多い。surprising だな。」

ケイがアサミの様子を伺うように
見る。

「ヒルズビレッジはさ別格だよ。
とくに洗練されてるアーバンな
場所 だもん。よけいだよ。」

本当にさ、夢のみたいな場所で、
働いてたのが嘘みたいよ。

「ねぇ、ケイはさ、ボトルシップ
を芸術祭に 持ってくるだけが、
来日の理由じゃないでしょ?
いいの?ここに来てても?」

「そうだな。To meet the bride、
花嫁候補に会いにきた。
それが1番の理由だ。
他もあるがNo problem だろ?」

やっぱりさ、そうなんだよ。

「じゃあさ、今日はちゃんと
お昼食べてから、この先である、
ローズフェスティバルに
川を下って行こうと 思ってる。」

これも 最初ヤマモリさんからさ、
聞いていたんだよね。

そうして、予定する茶屋に
踵を返して漕ぎ出すアサミを
ケイが並走して 間を詰めてきた。

「背中に モミジがあるぞ。」

並ぶ、自転車越しに
手を廻されると 抱きしめられる
みたいにして、取られた背中の
紅葉を見せられる。

「あのさ、そーゆーの!やめてよ
だいたいさ、普通ダンスの時に
人の体!触らないでしょ!
本当、後に先にもケイぐらいよ」

「10年前には、足を骨折したな。
昨日は、Play revenge!満足だ」

サイテーだよ!!信じられない!
全然かわってない、
かつての交流相手に
アサミは 非難する視線を投げる。
それを
受けながらケイも 方向転換して、
水車が目印の茶屋で
お昼を満喫した。



「へぇ、Rose flowerは この季節も
咲くのか。アサミ、あれは、、
ビンディー じゃないか。?」

宮廷庭園風に植栽された
ローズガーデンには 沢山のテント

薔薇にちなんだ グルメやスイーツ
雑貨も軒を連ねている間を、

「そうだよ最近はさ、フェス
ファッションに、ビンディー
シールでお洒落したりもするよ。
セレブとかの、見たことない?」

やたらビンディーをつけた女子が
楽しんでいる。

まあ、それだけじゃないんだよ。
自前のショールとかを
それっぽく巻いてる 女子も多い
のはさ。

「ほらさ、ローズウォーターの
テイスティングもしてるよ。」

アルコールを禁じる国は、
ローズウォーターソーダを
シャンパンにしたり、
白コーヒーとして飲んだりする
らしい。

世界トップクラスの薔薇の生産国
インドと薔薇の説明をカンバンで
読みながら、薔薇製品や、
薔薇を売るテントを
いくつも 軒先をまわる。

「なんだか、men's は居にくい」

散々薔薇のアイテムを試した
くせにさ、ローズアイスを手に、
眉を潜める?

「魔術師ケイならさ、必須アイ
テムなんじゃない。ローズは!」

ケイに、アサミは笑いながら
今度は ローズキャンディを
自分の口に放り込んだ。

「なら アサミ、手書きビンディー
をしている。body make するぞ」

ケイが 半ば強引に アサミを
本格ビンディを額に書くテントへ
引っ張っていって、
中の女性から ビンディー粉や
筆を借りてくる。

「え?!やってもらうんじゃ
ないの?自分で、ってケイが?」

芝生に座ったケイの膝を枕に
アサミは そのまま寝かされた。

「知らないのか?ビンディは
Husbandが書くものだろ。」

真っ赤な褐色の粉を溶いた筆先が
アサミの額に 落とされて
へんに、くすぐったい。

あー、確かにこれはさ、 旦那が
書くよ。感触も 構図も
どうしようもないよ。

「それってさ、マリッジビンディ
だよね。ケイが書かなくても」

慣れた手つきで、筆を滑らす
ケイが

「クマリ。ローカルクマリという
マスターがいる。国王でさえ膝ま
付く、国の運命を予言する者だ。
出会えれば、こうしてビンディ を
つけてもらえる。そのmiracleな
ビンディを『ティカ』と呼ぶ。」

目を閉じていた、アサミは
瞳を開く。

「もしかしてさ、『ティカ』っ
て、そこから名前をつけてる?」

その辺りから、ローズガーデンに
流れるBGMが変わるのが
アサミには、解った。

「それは、どうかな?」

ケイが 徐に膝に乗せた アサミに
褐色の整った顔を 被せて、

アサミの口に入っていた
ローズキャンディを 舌で絡め
とり、そのまま アサミの
耳朶も噛んだ。

「薔薇の taste だな。」

上から覗き込む口を 微笑ませて

「アサミ、出来たぞ。似合うな」

膝から、アサミの上半身を
起こした。

その間、なぜがアサミは
恥ずかしさとか、嫌らしさとか
胸の高鳴りとかが霧散して

ケイの瞳を見つめていた。

なんだろう。この感覚は。

時間が永遠に思えたそんな
錯覚がした時、
合図の音が流れてきた。
夢の終わりだ。

「そんなに大事な『ティカ』を
貰うなんてさ、出来ないよ。」

立ち上がって、アサミは
カバンから、ショールを取り出し
体に巻く。

ケイは、訳がわからない顔で、
まだ芝生に座っていた。

次の瞬間、周りのテントで
売り子をしていたスタッフや、
ショールを巻いた客が、

踊り出す!!

「フラッシュモブか?!」

ケイがアサミの頷く顔を見た。

アサミも、そのまま 踊りに
加わって、大勢の団体の一部に
紛れ込むのを、
ケイが

「おい!ここに置いていくのか!
最後までエスコートしろ!
コンダクターだろ?!アザミ!」

叫ぶのをアサミは そのまま

「ケイはさ、魔術師だしさ、
小人も、着物の令嬢もいるから
大丈夫だよ。だから行くね。
ああ、
明日頑張ってよ。『カイザー』」

笑顔を見せながら、
ショールを 頭まで スッポリ被せ
インド映画さながらの、
ボリウッド音楽に合わせて
シンクロダンスをする
フラッシュモブへと
消えていく。

『カイザー』と呼ばれて、ケイは
固まったまま、動かない。
モブダンスに、薔薇の花弁が
舞と、もう見えない姿。

今日さ、ここで参加型のさ
フラッシュモブイベントがある
のを、教えてもらった時は
まさかね、来るとは
思ってなかったんだよ。

おかげで、
イリュージョニスト・ケイが
出現した時みたいさ、

わたしも 華やかに
消えれるね。


3つめ?いや、4つめか?の
I'm sorry だとしたら、
間違いなく、EARTH POOLでの
danceと、、その後だな。

These 2 days。
オレがどんなにregretしたか。
わからない。

ー心想事成ー

乞い焦がれ 会えただけが
叶った悦びに 打たれて
いたから
無知ゆえに気付かず 危険を
引寄せた 愚かなオレに。

ー淡化我的罪过ー

EARTH POOLパーティー翌日。
ケイをアサミが
ツアーコンダクターするのが、
最後になる日。

ヒルズヴィレッジでの
EARTH POOLパーティーの
次の日、午前。

ケイはアザミに連れられて
首都郊外に来ていた。

「凄いな。bicycleボートになる
のか。知らなかった。」

ケイの目の前でアサミは、
さっきまで乗ってきた
レンタルサイクルに
バナナボートみたいな浮きを
2本膨らませて、
互いの自転車に装着する。

簡易着脱ボートの自転車仕様。
その手際は、魔法のようで
すぐに
自転車のペダルを動力にした
ボートになった。

「これさ凄いでしょ?
ボートより動かすのも
スマートなのよ。じゃ行くよ。」

そう快活な
アザミを先頭に、
川面まで紅葉が生い茂るような
非日常な風景を、
自分達のペースで愛でていく。

川面に2艇の影が揺れる。

本当は
昨日のEARTH POOLで、
ケイはアザミを連れ出す
気持ち『 半分』
躊躇いが残る
『半分』の気持ち だった。

I remembered herself。
But、Only I think、、

ただ、思い出しただけのアザミ。
なら、
Alone なオレに その権利は
まだ、ないのだ。


「ウツクシイ。ああ、この国も
神に 愛された国だな。
この風景 は 祖国にはない
モノで、ウツクシイ。」

紅葉の景色を堪能しながら、
今も ケイは隣のアザミに
感じている。

自分の半身だと
肌で解ると 離れられる
わけがなかったが、
こうして
アサミと、前以て約束を
交わしているから
昨日はアザミから
一旦引くことが 出来た自分。

「朝に行った、農耕地域とはさ
また違う景色だよね。」

無言で
紅葉を眺めるケイに
アザミは この景色と
渓谷にくるまでに見た
牧歌的な田畑を比べて
感想を口にしている。

オレが 考えている black face
なんて、気がつきもしないで。

アザミに隠れて、
ケイは溜息をつく。

10年拗れているRotten loveを
Too muchなオレだ。

「ドローンを あんな風にtake in
しているのは 驚いた。」

ケイはしっかり訓練された
2面顔の表で、言葉を本音と
別に繋いでいく。

どちらにしても、
明日はこの国の式典で、
ケイは来賓参加を
国王と
しなければならない。

その際に、ケイは
父親でもある国王に
『運命の花嫁』を
話すと決めている。

あと、Side princessー側妃は
娶らないとも。

身を任せると
紅葉の間を水の路に乗って、
自転車ボートは
下流にゆっくり向かう。

「この辺りはさ、ドローンを農業に使ってたんだね。海の赤潮対策とかに使うのはさ、わたしも
テレビで見たことあるけど。」

紅葉のトンネルを進む
アザミを見る
ケイは
眩しそうに見ている様で
その瞳には焔を灯す。

So
フラレても構わない

proposeする。

そして、Do not let goだな。
かなり勝手だ。

「アサミは 今日はよく話すな。」

ケイがアサミに、言いながら
サイクリングバックの
水筒を 徐に出した。

「今だけよ。」

その水筒の中身はあの朝と
同じ 『みそ汁スープ』だと
アザミは微笑んだ。


ー『俺に毎朝、みそ汁をつくって
くれないか?っすかね?って、
月がキレイですねとか、まわり
くどい感じっすよねー。ハハ』ー

Assoc カスガに
この国ならではのproposeを
hearingしたanswerだが、、

紅葉の下、自転車にまたがった
ままの川面で
ケイは ついでと、例の
マヨおにぎりも出したら、


「もしかしてさ、水の上でランチ
するつもり?落ちるよ。」

子供みたいだと、笑われた。

この国のpropose、オレに難解。

「せっかくのhand made だろ?」

自棄気味に 水筒の中身を ケイが
飲みきると、
風に揺れて紅葉が水に落ちた。

「ヒルズビレッジみたいな
urbanな場所から遠くないのに、
自然が多い。surprising だな。」

ケイがアサミの様子を伺うように
見る。

「ヒルズビレッジはさ別格だよ。
とくに洗練されてるアーバンな
場所 だもん。よけいだよ。」

それでもこの国は
どこを見ても
文化的で 精神性が高いと
ケイは思っている。

自国は豊かだ。
But 、心の wealthに成り得てなく
Disparityも 民にはある、、

「ねぇ、ケイはさ、ボトルシップ
を芸術祭に 持ってくるだけが、
来日の理由じゃないでしょ?
いいの?ここに来てても?」

アザミの言葉に ふと
『運命の』というのは
What kind of bride princessか?
またオレは、考える。

「そうだな。To meet the bride、
花嫁候補に会いにきた。
それが1番の理由だ。
他もあるがNo problem だろ?」

アザミを探しながら、
オレは Ask yourself してきた。
そして形にまだ ならないんだ。

「じゃ、じゃあさ、
今日は 紅葉狩りの後はちゃんと
お昼食べてから、この先である、
ローズフェスティバルに
川を下って行こうと 思ってる。」

「、、モミジガリ?」

そうして、予定する茶屋に
踵を返して漕ぎ出すアサミを
ケイは並走して
距離を詰める。

今、なのか?×2?


「背中に モミジがある、ぞ。」

並ぶ、自転車越しに
手を廻して 抱きしめようと

するケイの前髪に
遮るように
降ってきた葉と、

「あのさ、そーゆーの!やめてよ
だいたいさ、普通ダンスの時に
人の体!触らないでしょ!
本当、後に先にもケイぐらいよ」

アザミの言葉に

掛けようとするケイの台詞が
詰まって
初めて会った時のアザミの
拒絶も 思わず重ねて口に
していた。

「10年前には、足を骨折したな。
昨日は、Play revenge!満足だ」

たまに疼く足と、

ケイに、アザミが
投げてきた非難の視線に迷う。

Don't be scared オレ!!
狩り、 huntingは
手にする事だろ?!だろ?

なぜか痛む胸元。

前髪から外した紅葉を
手に、ケイも

方向転換して、
水車が目印の茶屋へ向かう
アザミの後を
追い漕ぐ。

ー我还没说我喜欢ー
しまった、、
I haven't said I love you yet?!
まだ、
オレは好きだとも言ってないぞ


「へぇ、Rose flowerは この季節も
咲くのか。アサミ、あれは、、
ビンディー じゃないか。?」

宮廷庭園風に植栽された
ローズガーデンには
沢山のテントと、
薔薇にちなんだ グルメやスイーツ
雑貨も軒を連ねている。

「そうだよ最近はさ、フェス
ファッションに、ビンディー
シールでお洒落したりもするよ。
セレブとかの、見たことない?」

ケイの目には
割りと自国で馴染みのある
『ビンディー』をつけた女子が
楽しんで映っていた。

サイクルボートで移動した
お茶屋で昼食を済ませて
アザミはそこから
ケイを 植物園で開催されている
ローズフェスティバルに
案内している。

「ほらさ、ローズウォーターの
テイスティングもしてるよ。」

珍しそうに
張られたテントをみるケイに、
アザミが声をかけたから、

「アサミのぶん、Tasting tea、
取ってくるか ?」

ケイがアザミに、
彼女が指し示したテントへと
試飲をもらいに 離れた。

スタッフに声を
かけようとして、
後ろから来る気配を
ケイは慣れた面持ちで
待つと

「My road。いつまで、このまま
いるのでしょうか?
今日、お相手に 話されるの
ですよね?イライラしますが。」

そう、揶揄してくるのは
影にいるはずの護衛で、
彼は 願掛け指輪の島も、
10年前の学生交流も、
ケイの学友として
警護してきたのだ。

「My road。先ほどの川で 思いを
伝えて、お話されるはずでは?」

今更、怖じ気付きましたかと
護衛であり、
自国で待つ側近と同じく、
幼馴染でもある
隣の男はケイに容赦がない。

試飲スタッフが
ケイと護衛にローズウォーターの
入る容器をトレーから
渡す。

ケイは、追加でもうひとつ
ローズウォーターを
スタッフに所望して、

「解らなくなった。何と言えば」

護衛を見ずに 重い口を開いた。
ケイは俯いている。

それを、珍しいモノを見たと
顔をして護衛は

「王子としてですか?それとも、
運命の花嫁を連れて帰る伴走者
としてですか?My road?」

やはりケイを見ずに
真っ直ぐ前を見ながら 諭す。

並ぶ2人の前に、追加の試飲が
置かれて、護衛はそれを
ケイに渡す。

「プロポーズは契約です。自分を
提示して、ゴールは相手の承諾を
勝ち取る事。My roadの双肩には
あらゆる重責がございます。」

ふと、
ケイは 護衛がアザミの方を
見るのを 捉える。
アザミは薔薇製品や、薔薇を売る
テントで買い物を
している。

「 私は、富める自国において、
普通の男性の方が 王族よりも
よほど自由に生きていると
思ってしまう程に、My roadは
結果を出す事を求められる。」

ケイは、幼馴染としての
眼差しを向けられていると、
感じて、俯いていた顔を
護衛に 正だす。

「だからせめて、この国でなら
カイザーのままで、
彼女にそのまま伝えたらいい。

『好き』だ
という気持ちには、
勝ち負けはない。そこには
カイザーの
『 自由』だけが、ある。」

そう言うと、ケイの胸に
グッと親指を立てた拳を
トンと当てて、
9年前のミニブーケも
ローズだったろと笑うと

礼のポーズを取って
気配を消すと
再び影になった。

「 I'm here 、、」

アイツ、本当にsame year か?

呆然するケイは
少し目頭を拭って

両手にローズウォーターを手に
アザミが買い物をする
テントに戻った。
途中、遅れた理由を
ローズアイスで誤魔かせるよう
隣でそれも買ってから。



「なんだか、men's は居にくい」

散々薔薇のアイテムを試して、
尚且つローズアイスを手に、
眉を潜めるケイを

「魔術師ケイならさ、必須アイ
テムなんじゃない。ローズは!」

アザミは笑いながら、さっき
見つけて買った
ローズキャンディを
自分の口に放り込んだ。

「なら アサミ、手書きビンディー
をしている。body make するぞ」

さっきのローズウォーターテント
からすぐのテントに、
見つけたケイが 、

半ば強引に アサミを
本格ビンディを額に書くブースへ
引っ張って、
中の女性から ビンディー粉や
筆を借りてくる。

「え?!やってもらうんじゃ
ないの?自分で、ってケイが?」

あっという間に
芝生に座ったケイの膝を枕に
アサミをそのまま寝かせて

「知らないのか?ビンディは
Husbandが書くものだろ。」

短くなった髪を開いて
アザミの 白い額を露にした。

真っ赤な褐色の粉を溶いた筆先を
額に 落とすと
アザミがくすぐっそうにして
ケイは口の片端を上げてしまう。

Heee、確かにこれは、 husbandが
書くモノだな。
For the first time 気がついた。
これは

口が緩むとケイは考えながらも、

「それってさ、マリッジビンディ
だよね。ケイが書かなくても」

アザミが言う事を
受け流して
慣れた手つきか、上機嫌で
筆を滑らす。

性感帯は背骨を柱に
人体の中心にportがある。
その感覚が集まるのは
勿論、脳だ。
集められた感覚を、脳が
快楽へと受け止めるなら、

脳に直接触れるportは
男女問わずに、額だ。

「クマリ。ローカルクマリという
マスターがいる。国王でさえ膝ま
付く、国の運命を予言する者だ。
出会えれば、こうしてビンディ を
つけてもらえる。そのmiracleな
ビンディを『ティカ』と呼ぶ。」

目を閉じていた、アザミが
ケイの膝の中で 瞳を開く。
彼女の中でも 何かが
解ったような光が
そこにある。

「もしかしてさ、『ティカ』っ
て、そこから名前をつけてる?」

噎せる薫りのローズガーデン。

流れるBGMが変わるのが
ケイにも、解って

「それは、どうかな?」

ケイが 徐に膝に乗せた アサミに
褐色の整った顔を 被せる。
音にならない

好きだ を、唇の触りに乗せて

アザミの口に入っている
ローズキャンディを
舌で絡めとり、
そのまま アザミの耳朶にも
音にならない
I loveを噛んだ。

「薔薇の taste だな。」

上から覗き込む口をケイは
微笑ませて

「アサミ、出来たぞ。似合うな」

その額に
自ら描いた印を

サヤ スカ アワッ となぞってから

アザミを膝から、起こした。

それまでの考えていた事が
ケイには霧散して、

Blessingー祝福を与えるとは、、
見返りとかではないんだな。

確かに freedom だ。

アザミの瞳を見つめていた。

What。この sense は。

時間が永遠に思えたそんな
錯覚がした時、
曲調が変わりボルティックな
音楽が何故か流れてくる。

「そんなに大事な『ティカ』を
貰うなんてさ、出来ないよ。」

ケイの前から立ち上がって、
アザミはカバンから、
ショールを取り出し
その体に巻く。

ケイは、訳がわからない顔で、
まだ情けなく芝生に座したまま。

次の瞬間、周りのテントで
売り子をしていたスタッフや、
ショールを巻いた客が、

踊り出す!!のを見ると

「フラッシュモブか?!」

ケイがアサミの頷く顔に
予感した。

アザミは、そのまま 踊りに
加わって、大勢の団体の一部に
紛れ込む。
そこから 一気に踊る!団体は
うねりを造る。

濁流のような 狂喜踊る人ごみに
押し流されて、ケイは、

「おい!ここに置いていくのか!
最後までエスコートしろ!
コンダクターだろ?!アサミ!」

アザミに向かって叫ぶ。

「ケイはさ、魔術師だしさ、
小人も、着物の令嬢もいるから
大丈夫だよ。だから行くね。
ああ、
明日頑張ってよ。『カイザー』」

どこかケイには、無情に感じた
そんなアザミ笑顔に
強張って 動けない 。

目の前で マジックのように
ショールを
頭まで スッポリ被せ

インド映画さながらの、
ボリウッド音楽に合わせて
シンクロダンスをする
フラッシュモブへと

アザミは
消えていく。

『カイザー』と呼ばれた。

その単語の含みを
感じると、ケイは
固まってしまった。

モブダンスに、薔薇の花弁が
舞と、もう見えない 探してた姿。

この event をオレから
逃げるのにUseしたのか?
Rose gardenを選んで?

「追え!!「My road!!」

ケイが叫び切る前に
影から2人の男が 飛び出て

「出来るわけないでしょう!!
この人数の人手です!我々が
離れるわけには!拒否します!」

ケイの前後に立つ。

「My road。アサミ様は 『契約』
を躊躇われただけです。
後の者を呼んでます。住んでる
場所もわかります。明日に支障が
出る命令は、我々は聞けません」

護衛の言葉を、自分を
取り戻したケイは 一言だけ
呟やく。

「口を、読んだのか。」

目の前の幼馴染は、
すいませんとだけ、頭を下げた。


その日
朝からメディアは
これから執り行われる
国家式典の中継をスタンバイし、
多くの人々は
その様子を 固唾を飲んで
見守っていた。

近づく開始時間にむけ、
厳かな空気が 映し出される中。

祝い 列席するため来日していた、
世界各国の王族や首脳などが
続々と
古風で奥ゆかしい宮殿に
到着する。

その度に、
テレビのコメンテーターが
称賛の解説をし、
国民はその優美な様子を
喜々と眺め。

男性は
燕尾服やモーニングコート、
紋付羽織袴。
女性はロングドレスに、
デイドレス 、白襟紋付。
それに輝く勲章が胸元に見える。

世界各国から集まった来賓は
伝統着や歴史ある衣装になどにも
彩られていた。

そんな中、現れた 王子の姿に
一同メディアは騒然となる。
褐色の肌に麗しく整えられた
黒髪は、好感がもてて、
純白軍服。
そのイケメンぶりに
惚れ惚れとした空気が色めく。

各国の王子達も見目麗しの中
特に話題になったその人物は
オセアニア地域の国、第6王子

『カイザー王子』

と、報道された。

褐色の王子の登場で、
来賓の入場は完了し、
晴れた空に、虹が掛かるという
神秘が起きて、式典は
開始された。


「ダーレーンー!!あれ!ケイ
イリュージョニスト・ケイ
ですわ」

中継を見ていたケイトウが、
オフィスで大声を上げて
ダレンを呼ぶ。

「成る程な。偽り者同士か。」

顎に片手をやって呟くダレンを
何かワメいて、ケイトウは

「Oh!アサミ見てないかも!
すぐにコールすべきだわ!↑
NO!!出ないガッデム!」

いいですわ!下のオフィスに
直接行ってやりますわ、と
ケイトウは非常階段を
バタバタと降りて行った。

「やれやれだな。」

ダレンは、オフィスの
大画面モニターに映る、王子を
見つめながら、腕を組んで
いたが、すぐにオフィス電話が
コールされ、表示に訝かしむ。

『ダーレン!!スキャンダル!』

さっき降りたばかりの
ケイトの大音量が 受話器から
ガナル。

『アサミいない!課長いない!
ミズキパニック!ヘルプ!!』

ケイトウの声に眉を寄せた
ダレンが、その内容を理解すると、即座にケイトウに指示をした

「ケイトウ!シオン姫に知らせ
ろ。ハジメオーナーもヨミ女史も
今なら一緒に同伴して船で向か
ってるはずだ。まず知らせろ」

警察に連絡する案件か?
判断が難しい。そもそも、
あの課長も?一体何が起きてる?

ダレンは、黙って目まぐるしく、
頭を回転させた。

大画面には 大写しされる、
『カイザー王子』の凛々しい
横顔が、国王の隣に 佇んでいる。

朝からケイは
白色の騎士軍服を
身に纏い、
来日した国王と、第4、5王子と
共に式典への参加準備を
していた。

メディアは
これから執り行われる
国家式典の中継をスタンバイし、
多くの人々は
その様子を 固唾を飲んで
見守っている。

本来なら
王位継承権第1の王太子
からはじめ、第2、3の王子が
来日となるのだろうが、

上位王子は、不在となる国王
代理として第1王子が。
その補佐として第2王子、

そして現在
軍府長官の第3王子が
国王留守の自国で采配を
振るう事となった。

近づく開始時間にむけ、
厳かな空気が 映し出される。

何より、
日本人である
第3側妃の同腹子の第5、
そして
第6王子のケイは、
友好王使としての意味合いも
あり、特にメディアが
その姿を
今か今かと待っている。

祝い 列席するため来日していた、
世界各国の王族や首脳などが
続々と
古風で奥ゆかしい宮殿に
到着する。

ケイ達は
メディアの勢いに
反して列席は最後。
それは、
招待された王族の中で、
1番王の在位年数が長い事を
意味する。

テレビのコメンテーターが
称賛の解説をし、
国民はその優美な様子を
喜々と眺めていた。

父親である
国王も、
兄弟である上の王子2人も、
ケイが
この式典に参加するのみが
来日の理由では
ない事を
知っている。

招待された 男性賓客は
燕尾服やモーニングコート、
紋付羽織袴。
女性賓客はロングドレスに、
デイドレス 、白襟紋付。
それに輝く勲章が胸元に見える。

世界各国から集まった来賓は
伝統着や歴史ある衣装になどにも
彩られていた。

その中にあって、
横並びに揃う
純白の
騎士軍服のケイ達は
とても目立つ。
それ以上に
現れた 王子達の姿に
一同メディアは騒然となった。

褐色の肌。
麗しく整えられた黒髪。
それは好感がもてる
純白軍服。
3人の王子は
年や、雰囲気は違えど、
そのイケメンぶりは
遠くからのカメラからも
確認出来る程で、
惚れ惚れとした空気に
辺りが色めく。

もちろん、
各国の王子達も見目麗しい。
それでも
特に話題になった
その人物は
オセアニア地域の国3人の王子。
一際目立つ 第6王子。

その名は
『カイザー王子』

と、報道される。


メディアに映される、
『カイザー王子』の凛々しい
横顔が、国王の隣に 佇んでいるが、
そのほんの数時間前に
国王王子が
親子のやり取りを
した事は
さすがに、解りようもない。

ただ、1つ言える事は

本来なら式典が終わり
1人の女性を連れてくる事で
契約満了となると
伝えられた執事から

護衛へと
渡された伝言紙に

一瞥を向けた 王子が
作り笑いの奥で
動揺を隠しているのを

メディアを通して

幾人かの視聴者が
見守っていた。



【『ケイトウ?どうしたのっ?え
アサミちゃんが辞表を出してっ?
連絡つながらないって?まって
っ!ちょっと落ち着いて』】


ローズガーデンの駅からは、
空港バスが出ているからさ、
ダンスする来場者の大波を
掻い潜る。


【『あ、初めてましてっ。
アサミちゃんの友達シオンと
いいますー。この間
ミズキさんの話は、電話で聞
いててっ、え、は?あー。
アサミちゃんが隠している
事情、そんな事がー。それで、
もとのアサミちゃんが表に
出たって事ですかっ?!』】


フラッシュモブの人波から
ケイはこない、これないよ。

1人で動く事なんて
考えれば出来ない。
ケイ=カイザー王子には
G.Bが付いてるはずだからさ。
それに
追いかてくる理由なんて、
あの王子にはないって事
気が付いたよ。

気が付いても、
すぐに、トイレでショールを腰に
結んで、帽子と付け毛に、
サングラスをする。
急ぐ理由なんてないのにさ。

昨日は、メディアが入ってた
わけじゃないから、変装も用心。
どうかなる事も ないけどね。

【『あれっ?ダレン?え?課長?
アサミの上司も仕事にこない?
わ、ミズキさん?えっとー、
アサミの置かれた辞表を見て、
課長さんが、アサミの住んでる
所行ったきり?ですかっ?』】

駐車場に抜けて、駅へ。
賑やかにダンスする女子達。

10年前。
学園の交流学生で友好
ダンスデモンストレーション。

交流の相手は
海外の御曹司とか王族でさ、
カッコいい海外男子に
お嬢様学園は、騒然だったな。

空港バスは夕暮れの高速を走る。

「まさか、さ、没落してから
カイザーに 再会するなんてよ。
神様は何考えるんだかさ。」

夜のグラデーションに染まる車内
ようやく、目的地に着く。

アサミはカバンのパスポートを
確認して帽子と付け毛を取った。
気が抜けたのか 喉が乾く感じ。


【『オーナーっ!なんだかっ!
とっかえひっかえ、電話に
皆んな出てきてー大変な事に、
え?!誰?!貴女、どちら様
住之江 繭さん?ごめんなさいっ
全然わかんない。あ、ごめん、
もう1度誰に何を言ったって』】


「今ならホノルルは、暖かいね」

ハロウィン仮装をした
スタッフが、アロハシャツ着て、
期間限定ジュースを
販売してるから
試し飲みさせてくれたのを買う。

【『ワアーっ!!オーナー!!
どうしようっ!この子!、
パーティー終わりにっ、課長って
上司に、「先ほどのダンサー、
華姉さまは、どちらにいますか」
って、聞いたって言ってるん
ですよっ!不味いですって!』】

アザミは呑気に袋を鞄に入れ
ながら、手続きに
カウンターへ向かう。

【『聞く人が聞いたらっ!バレ
ちゃいますって!アサミちゃん
の事!それを聞いた誰かが、』】

と、
アザミの両肩に 手が回された。


『西山 莇美さんですね。ちょっと
よろしいですか。警察とかは
御勘弁して、御同行を。』

全く聞き覚えのない声と、
プロの掌の感触を
肩に アザミは、抵抗を諦めた。
にわかに、目眩が
始まって足の力が抜けていく。

用心してたけど。
さっきのジュースよ。
抱えるように連れらて駐車場。
鈍くなる感覚の向こうで、
一瞬 何故か さ、

課長を見た気がするよ。

段々体が 鈍くなる。
究極に眠気が 襲ってくると、
ワゴン車のドアが
引き開けられる気配がして、

アザミの意識は
そのままブラックアウトした。


【『アザミちゃんのパパのせい
だと思うけどっ、アザミちゃんも
わからないんです。とにかく、
アザミちゃんを使ってっ、パパを
見付けるんだと、オーナー?』】


キューーーイキュィーーーーー

なぜだろう。
鳥、
鳥の声がするよ。空気が冷い。


少しずつ意識が覚めるけど、
すぐにはさ 動けない。
頭も痛い。気分もさ、悪いよ。
アザミは額に片手を当てて
ため息をつく。

「とうとうさ、つかまったよ。」

知らない天井に、蛍光灯が見えていて、背中の感じで、長椅子に
寝かされているとわかる。

耳を澄ます。無音。

目だけを動かすとさ、室内で
警備室?機械室?ボイラー?
って感じよ。
壁に無機質な時計。えっと、、、

体に力が入らないけど
目だけで確認したらさ、
辺り前だけど、
カバンとか電話は 失くなってる

でも、拘束はされてない。

四畳ぐらいの部屋。
アナログな壁時計は、1時過ぎを
指してるけどさ、
何時間たっての1時過ぎよ?

目の前に 事務机と椅子。
そこになんだか いろんなボタン。
配電盤かな?


【『もしも~しぃ。今はさぁ、
そっち電話口にはぁ、誰がいる?
シオンくん伝えで聞いた話を
さぁ、考えるとねん。
アザミくんはぁ、誰かに拉致され
た恐れがあるけどぉ、逃げただけ
かもしれない。
けどぉ、それならぁ、
課長さんがぁ、昨日に
アザミくんのぉ辞表を確認しに
アザミくんとこに~行ってからぁ
連絡がないのは~おかしい。』】


窓はなし。ドアが2つ。
壁も天井も床も
コンクリートで遮断性高そう。

換気口があるから窒息はしないね。ん、体を起こせそう。

アザミは事務長椅子から
ゆっくり上体を起して、
自分の体を確かめる。

乱暴された形跡はなし。
腕のラバーバンドは そのまま。
靴も、洋服もそのまま。

うん。よし、上々。
足や手に力も入る。立って、

1つのドアノブを回すけど、
鍵が掛かっている。
じゃあ、もう1つのドアを、
開けると、手洗い付きの

トイレだった。


【『ダーレン!アザミちゃんの
部屋を確認してぇ、
ケイトゥは課長さん がぁ
個人で鍵出入りできる場所を
ミズキ 女史に聞いてぇ。
あ~警察も連絡ねん。
うん、
今ってさあ、式典あるからぁ、
目立って移動とかはぁ、
引っ掛かるからぁ、今日は~
目の届く所に置いとくよねん』】


とりあえず用を足すフリで、
トイレに入って、
スカートのベルトに手をかける。

腕のラバーバンドは腕時計の
バンド。もう少し言えば、
携帯電話時計のラバーバンド。

着脱できる本体を、アザミは
ベルトのバックルに替えていた。

モールの入り口にある
あの書店セレクトショップで、
買ったんだよ。
ランニングのメディカルデータが
管理できるからと思ってさ。
GPS万歩計付属が役立ったよ。

電話帳登録が、出来ないけどね。

デジタル時計は、13:42

さて、どこに電話しよう。
警察?いや ここの場所が
説明できない。なら、

アザミは、シューズの中敷きに
入れていた 名刺を取り出す。

ランニングシューズには、
100円と1万円を
中敷きの下に入れてるのだよ。
諸君!!

“ 何かあれば、ここに
魔術師ケイとコンタクト
したいと言えばいい。”

ってケイに最初 出された、
大手企業名とカスガと印字
された名刺。

時間的にケイは式典に出てる、
のは承知の上。
それに、もう契約もしてない
王子さまと 一般人。

だからさ、この名刺先から、
援助を 請うしかないよ。
どっかの直通電話みたいだけど。
2度コールする。
良かった電波、届くみたいよ。
出て!お願い!


『はい!海外研究室準備部
カスガっす!いつも
ありがとうございますっ!』

???

『もしもーし!海外研部署、
カスガっす!お電話
ありがとうございますっ!』

「あの、、イリュージョニスト
・ケイに何かあれば電話する
よう言われて名刺をもらった
んですけど。すいませんが、」

『えー!またあの暴君王子っす
か?!参ったなあ。先輩!
なんか暴君にクレームっすよ。
また、スモークで迷惑とかっ
すか?どーもすいません。
本当に申し訳ございません!
え?違うんすか?誰っすか?』

ああ、もうハラハラする。
誰かくる前によ、

「あの、ケイの執事ヤマモリさん
に、すぐ連絡して下さい。
田村アサミを探してくれ、
田村の上司がいる場所にいる
から、内緒で契約したいと。」

『え?タムラアサミをさがす?
迷子ですか?先輩迷子捜索で
したっす。あ、いってらっしゃ
い。え?あ、迷子は警察にって、
そうっすね。警察に言った
方がいいっすよ。お客さま、』

こいつさ。通じんヤツだよ。

「だから、執事のヤマモリに、
タムラアサミを探して助けて
すぐって言ってよ。課長にラチ
られてる可能性大だからって、」

『ガチャン!!』

あ、きた『ザバー!!』トイレを
流して、すぐ電話を切ったら
急いで、電話をベルトにして

「は、はい!」

飛びだすと、事務机の上に
食事が載せられていた。
相手は、ご丁寧にサングラス、、

「ありがとうございます。」

一応 食事のお礼を言う。
でもさ、無言で出ていかれたよ。
鍵が掛かる音。


【『うん~ん、?ヨミくん 電話?
こっちも忙しいカスガ?
Assocくんかぁ。やあ
え、ちょっと待ってねん。
シオンくん!
Assocくんとこに
何故かアザミくんがSOSしてきた
って~!ヤマモリってぇ誰ぇ。
あ?今度はぁ、こっちの電話か
え~、
ヤマモリって知ってるって
ちょっと~待ってねん。
Assocくん~、
タムラアサミを
ケイのヤマモリ執事に探せ
って電話があったのん?ふん。
課長にラチられたとか言ってた!
え、
ミズキ女史?何?~もう』】


もう1度さ、電話。もっと他!
でも、番号わかんないよ!!
便利は不便だ!!

携帯電話時計、充電食うのにさ!
警察に電話する?

でもさ、ここ
どこだよ?何か手がかりわ?
水、水の音がするよ。それと

ティカ?

【『ヨミくん~。ボク両手に電話
でぇ、なんだかさぁ。
な、なに~シオンくん!は?
地下?私道の地下道?そんなの
あるのん?どこぉ。そんなに!
ミズキ女史さぁ、
もしかして~
課長さん地下の鍵あるぅ?
何ぃ、ボク?私わねぇ、
タケヒサ ハジメ。ギャラリー
探偵とか言われるけどぉ、
只の ギャラリストだよん~』】


それは、
とても突然な偶然だったのだと
今考えれば解る。

地下のEARTH POOLの水量管理室
どこからか、
水音がするのは、
EARTH POOLの水源が、湧水
だからだろう。

その手前にある 倉庫室は、
さっきまで EARTH POOLの
使用備品である
クリアボート20艇が積まれていた
のだが、今は
もぬけの殻となっている。

ふと、
私は 拘束される
手を動かして、なんとかこの
戒めを解けないかと思慮するが
そう簡単には
叶わないものだと、諦める。

そのうち義理弟家が、
約束の時間に
この場所へやってくるだろう。
その時に、
私は 罵られながら
救出されるのだ。

まさか こんな姿になるとは
思ってもいない日。

ビューティーパレスは、
ヒルズヴィレッジにある
オフィスタワーでも比較的オープンな美容関係がテナントで
入る階だ。

普段からもエステや
サロンはホテルユーズの
ゲスト、オフィスゲストで
なくても会員になれる。

その日は、
国内式典で、海外からの要人が
集まる週で、
その要人達と国内企業の交流と
なるイベントを
オフィスタワーで開催しなければ
ならなくなった日だった。

只でさえ、
タワーで使えるホールは
満室状態なのに、
どうやって大規模交流の会場を
捻出すればいいのかと、
私が悩んでいた所、
地下に非公開となる
EARTH POOLを部下から
示唆され、事なきを得る。

私の役割は
ヒルズヴィレッジ関係者、
所謂 ヒルズヴィレッジ所有の
関係者だけが使用可能な
エレベーターの稼働と、
そちらのVIPを対応する事に
尽きるわけだ。

如何せん、かくいう私自身も
ヒルズヴィレッジ所有財閥の
末族に縁あるのが
言っても
本当に薄い縁なのだ。

その縁あって、ヒルズヴィレッジのサロンホールを司る役職に
ついて、所有者ならではの
利便性に便乗出来ており、
所有者ならではの
サロンホール以下階の
設備采配を
振るう事は出来る。

そして、それは
とても突然な偶然だったのだ。

ビューティーパレスフロアに
配置したVIP控室は数ヶ所
用意している。

本来なら財閥一族が
趣向を凝らしたサロンホールに
VIP控室を作るところ、
やはりサロンホールは、
海外官僚補佐官同士の
個別ミーティングで満室。

そこから直接地下の交流
パーティーに顔出しする国も
あって、補佐官の控室扱いに
サロンホールフロアも
使用となる中、

必然的に 内装が
モード系ラグジュアリーな
ビューティーパレスフロアを
代室に設える事にした。

そこに、
大口協賛企業が 新作美容品を
テスティングを持ち込んだ為
パレスフロアの VIP空間と
テスティングブースの
住み分けが 困難になり
かなり雑多な手筈が多発したが、

EARTH POOLでのパーティーも
無事に終宴となり、
再び控室に戻るVIPの対応を
指示していた。

その中に 幾つか 下のガセボで
踊っていたスタッフの
問い合わせを受ける。

「?」部下のミズキ君の管轄で、
私にはどのような宴だったかは
把握しかねる。

無線シーバーで、
スタッフのやり取りはしており、
私のイヤホンにも
各部所の共有事項は入る。

先ほどから問い合わせが
多い案件だろうが、
VIPの中でも
西の筆頭財閥令嬢から、
その件を聞かれた時は 無下には
出来ず、形だけでも
無線で階下のミズキ君に
状況を訊ねる事にした。

よりにもよって
西は、妹が早くに嫁いだ家が
あり、この令嬢の心証を
悪くするのは 良くないのだ。

例えその家が 好ましくない
状況にあるなら、尚更。


【『ごめんね、ミズキ君、パレス
フロアの控室なんだけど、こちら
のVIP様が、さっきから問い合わ
せされてるスタッフにだと思うん
だけど、あ!少々お待ちを、今
確認をしてまして、ごめん、一旦
切りま、、ハナネエサマ?、、ザッザッ
ーミズキさん、ムラタさんて
ヘルプ部署どこだったかな?』】

この無線を、
傍受している無線マニアから、
ネットデータに載るとは
考えもしない。

そもそも『ムラタ』など、
ホテル本部で聞いた名前でも
ないなら、
階下のデスパッチセンターからの
派遣スタッフでもあり得る。

どちらにしても、
西の令嬢には 問い合わせの人物は
すでに業務終了している旨だけ
伝えて、個人の派遣情報は
把握していないと伝えた。

この日は、そのまま
撤収業務の指示と、引き続き
VIP送り出し対応で終わったの
だが。

次の早朝に、
義理弟家から 連絡が入る。

10年前に消えた『西山王の娘』が
昨日問い合わせがあった
人物であり、禍根の対象者。

すぐに 保護と言う名の
内々捕縛をするべしという
妹を使った脅しだった。

妹がすこし残念な恋愛で、
嫁いだ先は、西で元貴族家に
名を連ねていた旧家。

貴族は江戸時代から朝廷筋や、
貢献した一族、
明治政府立ち上げの報奨として、
それまでの家督や 役職によって
貴族になった一族がいる。

東の貴族なら
そこから貴族院に入閣し、
明治政界に躍進したのだが、
西の貴族は 政府が 首都で
あった為、立地から参会経費が
多額になり、
多くは貴族名を返却する家も
続出した。
その中でも 生き残る家もあったが
戦後の財閥や貴族解体にあい、
資産を没収されると 没落
していくのが末となった。
寺社貴族は その類からは
外れたが、義理弟家は そこから
一般の企業家に転身している。

貴族というのは、
江戸時代に置ける 藩主色が
思考に濃い所があり、
藩国の国主として、藩民からの
税で財を為す。
藩地への執着が大きかったのか
義理弟家は不動産を元手に
事業を拡大したが、
後の不動産ショックで落ち目に
なった。

そのような話は多々ある話。
問題は、同じ業界において
成り上がった『西山王』が
不動産ショックの憂き目に
会うことなく事業拡大をし、

その代理人が、落ち目になった
義理弟家の稼業を支援すると
詐欺を持ち掛けたのが
運の尽きだ。

そんな話に乗るのが悪い。

本来なら 自分達が 配当された
元貴族達の解体資産だとか、
元藩地の立木の権利だとか
耳障りの良い詐欺話。

なけなしの資金が騙し取られ、
被害にあった義理弟家は、
かつての旧家のみる影もない。

本当に『西山王』の代理人からの
支援金話かさえ 疑わしい。

にも関わらず、
義理弟家は、未だにその詐欺話の
恨みを根に生きていた。

その証拠に、こうして
私に、『西山王の娘』を
捕まえろと脅してくる。
本当に、一体いつまで
栄華の亡霊にすがり付くのか。

しかしながら、
そのような輩は 義理弟家だけでは
ないらしい。
何故なら、こんなに早く
その人物の足跡を
10年経て尚追うという、結束の会
があるぐらいなのだから。

それでも、
指定された人物に、覚えが
最初なかった私は、
早朝の電話を切って
出勤した我がデスクに、
辞表が乗せられているのを
見て、悟る。

部下の 『タムラさん』が
その人物だったのだと。

それでも 私は、まだまだ
迂闊だった。
そもそも義理弟家に脅された
とはいえ、部下である彼女も
その父親による被害者だ。

妹を保護する為にも、
又、義理弟家のような輩 から
一時的に彼女を囲うにも、
彼女の行方を隠して
交渉をするしかない。

そう判断をして、
先手を、打てていたのが。

まさか、海外の手からも
横槍を入れられるとは
考えが及ばなかった。

その浅はかさが
いまだ課長で位置付けされる
私の性分の
所以かもしれない。


「アサミが消えただと?!
どういう事だ!ヤマモリは!」

式典が終わり国王と 兄王子が
晩餐会に出席する支度を
始める中
1人晩餐会には
参加しない
ケイが
ヤマモリを呼べと叫ぶのを、
護衛が受け答える。

「ヤマモリは お分かりだと思い
ますが、こちらには参れません。
重要警備の厳しい宮殿です。
報告を受けた事項だけ 、私から
申し上げます、My road。」

国王と、兄王子達に礼を取って
ケイは国賓控室の1つを
退出した。

赤絨毯のひかれた 重厚な長い廊下

ケイは足早に玄関エントランスに
向かう。

「 アサミが会社に辞表を出して
いたのは パーティーの日か?」

晩餐会は夕方から、3回に
分けて行われる。
それまでを 賓客達は 歓談や
控室での準備に 動く。

「さようです。もともと次の日は
My roadとの約束で、お休みを
取られていましたから辞表が
机に出されていたのを 昨日、
気がついたのは、
彼女の上司である課長です。
パーティーの日は個別 解散を
しているので、
オフィスには上がらなかったと」

前後についた護衛の1人が、
ケイに説明をしながら
玄関に寄せている警護車の
ドアを開けた。

「連絡が誰もとれないと?」

開けられドアから防弾ガラスの
厚い、後部座席に身を沈めて
ケイが 問い返す。

「 はい。職場の先輩や、連絡を
最近とっていた友人が、
電話をしていますが、電源が
切れている様です。また、昨日
辞表を確認したという、課長が
住んでいる場所に行くといっ
てから、今日まで
消息を断っています。」

宮殿を出た警護車は、ほどなく
大使館について、
ケイと警護は その中に入る。

「昨日は、朝からオレといた。
上司が昨日会えるわけはない。
が、昨日から上司も連絡が
とれないのは偶然か?
巻き込まれたか、、元凶か」

大使館の1つの部屋を入ると、
そこには ヤマモリが
礼を取って佇んで

「御主人様、申し訳ございません
アサミ様の行方を捜索しており
ますが、未だ見つかりません。」

と、苦々しく謝罪した。

初めから晩餐会は、国王と
兄王子達に任せて
ヤマモリが連れてくるだろう
アザミと合流する為の
着替えを 大使館に用意していた
ケイは、
純白の騎士軍服を脱いで、
ヤマモリに渡していく。

「This was also bad。昨日オレ
の wasn't caught 事態失敗だ。」

警察にも連絡はしているが、
すぐに動く体制ではないと、
報告しつつ、ヤマモリは

「あと、気になる事項で、
住之江 繭子様が、課長に
パーティーの終了後に、問い
合わせた際、『田村 あさみ』
様を『はなねえさま』と言って
しまったと話されています。」

続けたが、
その内容にケイの眉間に皺が
寄ったのを 見て

やはり、課長が事態に関わって
ますねと、電話の表示を
確認する。

「ギャラリー 『武々1B』のダレン
さんが、アサミ様の住まいを
見に行かれましたが、家財道具は
全くなく、賃貸契約を解除して
いたと連絡をくれました。」

それを聞いた 護衛が驚いて

「はあ?随分計画的だな?!」

声にした。

「辞表を出していた。昨日の
アサミを考えれば、行方を 隠す
つもりだ。そこに 重なって 何か
起きたのかもしれない。」

そんな護衛を
宥めるように ケイが 呟いて
考える服装は、かなり軽装に
着替えられていた。

「ヤマモリ、アサミのfatherで、
Danger person に課長なるヤツは
list されてないのか?」

ケイが ヤマモリに依頼していた
アザミの父親の行方を探す
輩達の調査で 確認する。

「はい。直接関わりがあった
債権者達の現状把握ですが、
その中には入っていません。
ただ、親族関係では 、まだ
調査が追い付いていません。」

10日そこそこだからなと、
ケイはヤマモリを
追及はしないが、手詰まりかと
息を吐いた時、

ケイの電話がメッセージ点滅
している事に気がつく。

『カスガですっ!
執事のヤマモリさん宛てに、
タムラアサミを探して助けて
と伝言頼まれました!
課長にラチられるとか言って
ますっ!勘弁してください!
なんでもかんでも こっちに
クレームを回さないで下さい』

開いたメッセージに ケイは
目を見張ってから 静かに
ヤマモリに 見せる。

「これは?!アサミ様からの
SOSですよね?!なぜ?!」

ヤマモリが動揺するのを
ケイは 電話のメッセージを
再読して

「ヤマモリ、『課長』のhome
addressが 解るか?」と

詰めるが

「御主人様、さすがに自宅に
監禁はしてないと。専業主婦の
奥方や、家族が課長にはいます」

ヤマモリは あり得ないと
首を振って、

「ただ、課長の部下をはじめ、
個人的に所有する場所がないか
あたってみます。一時 私は
御主人様より 離れますこと
お許し下さい。」

とケイに許可を取って
出てい行こうとした。

そこに
再び、ケイの電話がコールを
告げる。

声の主は 軽快な声で、

『Hello emperor。Assocくん
からのメッセージでぇ、
アサミくんの 拉致が解ったと
思うんだけどぉ、課長さんがぁ
個人で鍵出入りできる場所を
こっちで探してるよ~。
うん、ヤマモリ?解ったよん、
合流してぇ、捜索だねん、
今? 海の上~もうすぐかな~』

あと少しで首都の湾に入ると、
続けつつ ノンキに話たのは、
ギャラリー探偵といわれる

武久 一こと ハジメだった。



『ドン、、ドン、、』

「ヤマモリ!ドア、音するわ!」

「ミズキ、退いておけ!
鍵こわすぞ。おい!タムラさん
ドアから 離れろ!ノブを蹴る」

漆黒の執事姿でヤマモリが 、
革靴の踵をドアノブに勢いよく
落とす。

「課長さん?!あんたが、どうし
て?タムラさんは?おい!
あんたが、タムラさん連れてっ
たんじゃねぇのか!何があ、」

拘束されて、ガムテープを口に
貼られる男を、ヤマモリが
せめると、

「ねぇ、課長、ここにあった
クリアボートは?あんなに
あった透明ボート全部どうし
たんですか?タムラさん、
ここに
いたんですよね?課長!!」

ミズキが
周りを確認して、声を震わせた。

地下、EARTH POOLの
手前にはボートの収納している、
倉庫。奥には水量管理室。

倉庫はもぬけの空で、
水量管理室の机には、食べた後の
食器が乗ったままに、男が1人
閉じ込められていた。だけ。


キュイ---ィィィィ… キュイィィィィィィ … キュイ…

タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~、、、

波だよ。
波に揺られてるよ。

何だっけ、絵にあったよ。
ボート、違う、そのまま水に花に
囲まれて浮かぶ
女の人の絵よ。

食事食べて、考えてたらさ、
入ってきた人に今度は毛布に
くるまれて、その後に入れられたのが棺だと思ってたよ。

棺ごと縛られてるってさ。

まさか、あのクリアボートなんて
思ってないから、
ああ、棺ごと埋められるのを、
配信でもして、パパを引き摺り
出そうってしてるんだってさ。
なんとか毛布を解いて、
顔を出したら、
ボートは、、海!!。

だって、あれ工場夜景の
クルージングで有名なとこだよ。


タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~、、、

「ハジメオーナー。
先ほどケイトウから地下には、
課長さんが拘束されており、
一足違いで
アサミさんは 別の人間に
ボート20艇と共に拐われた
様だと連絡ございました。」

瀬戸内から走らせた
メガヨットが
湾内に入った事を
ギャラリースタッフのヨミが
甲板のハジメに伝える。

「シオンくん~、ネットにさぁ
ボート 関係、近隣でぇ、
何か呟いてる人はいない~?
海かぁ、川、道路でぇ~」

トレードマークの、白スーツ姿。
ギャラリー武々1Bのオーナー
ハジメは垂れた目を、
同じくスタッフのシオンに
投げ掛ける。

「あっ!光るボートの行列がっ
クルージング観客からアップ
されてますっー。ハロウィン
イベントみたいな感じで 写真!
でもっ、場所が いろいろあって」

検索をかけた、シオンの答えに

「やっぱりぃ、人の呟きが~
1番さぁ 早いね、
どこかな~?全部言ってぇ。」

ハジメの垂れた目が細くなる。

「えーっ。海浜離宮、レインボー
橋、日の出橋、 隅田テラス、
両国水上乗り場、メッセンジャー
像、 みつまたわかれ、キリン
クレーン埠頭ですっ、てー
なんだかバラバラ過ぎですね。」

その答えに、満足そうにハジメ
が頷いた。

「いやぁ?そんな事ないよん。
2つのクルージングルートだね。
雷門方面とぉ、空港方面だ~。
さて、本丸は空港方面だけど、
ヨミくん行けるかなぁ~?」

ハジメの問いにヨミが、
手のファイルを 閉じて、
勢いよく

「無茶言わないで下さい。
今の湾内から川は、海の渋滞
時間 です。一方通行!我々は
湾内を 内陸に進む一択です!」

食いついた。

「じゃあ~、可能性を潰すって
ことでぇ、雷門へ乗り込もう!」

「 本気ですか?!よりにもよって
隅田川は銀座一丁目みたいな
ものですよ!川に無許可で
メガヨットが入れるかどうか」

「ならシオンくん~、
パーティードレス積んでる
よねぇ、仮装しよっ~!
船上パーティーしてたら~
迷い混んだってことで。アザミ
ちゃんの為だよん。さあ~、
ハロウィンメイクだよん。」

ハジメは楽しそうだが、

「ハジメオーナー!!」

ヨミの額には青筋が立つ。

「ヨミくんヤマモリ執事に連絡。
空港方面のライトボート列をぉ
追跡って。ボクらは~、
『風雷神門』側のライトボート
列を目指すよん。いいかい?」

それでも、ハジメの言葉に
メガヨットは 速度をあげる。

ググーーバシャッザーアーー

タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~、、、


凄いね。考えたね。
逃げようない
真っ黒い海に、頼りないボート。
先頭にモーターがあるんだよね、
プレジャーボートってさ、
リモート?いっか。

ライトに照らして、
バックルの電話を見たけど、
充電は切れている。

心細いはずなのに、
そうじゃないのは、きっとこの
LEDライトのお蔭よ。

前と後ろに ライトが輝く
光の舟。上からLED点滅ライトも
かけられて。

今、わたしさ
光の舟の列に乗せられて、海を
進んでいる。

空には栗満月。
波に揺られて、ハロウィンだよ。


タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~

『えっえっ!!マジッすか?!
無理に決まってるっすよ!
水上ボートなんてチャーター
するしかないっす。無理っす』

電話の向こうで戦く男の声。

「カスガとか言ったか?使えない
Assocだな。うちのオーナーは
もう片方のボートを追跡中だ。
ヤマモリ執事は、ケイと連絡で
手段を考察すると見るが、
急を要する。最善を願い出る」

それをダレンは容赦なく
食い下がる。

『もう!!暴君王子にかかわると
録なことないっすよ!あ先輩?!
そうなんすよ、ギャラリー武々1B
のダレンとかいう人が、船出せって無茶苦茶いうんすよ。えー?!
そりゃ、空港海域っすから、
重工から、飛べるなら、でも、』

どうやら、電話の向こうで風向き
変わったか?

「カスガ氏!何か出せるのか?」

ダレンの問いに、

『いや、うちの先輩が 海浜の重工
に、国内製防災ヘリを開発した
ヤツが、テストで出せるって
言うんすけど、飛ばしても、、』

Assoc!歯切れが悪い!!


タプン~トプン~タプン~トプン~トプン
~タプンタプン~~トプン~~


空港近いとさ
飛行機の裏側が間近に見えて
凄かったよ。
夜の海に未知との遭遇。
UFOが降りてくるみたいでさ。

空港の桟橋に行くって
思ってたのにまだ沖に進むよ?
沖に大きい船影が見える。
あれに、拿捕されたら?

寒さでさ、毛布にくるまって
仰向けになって
空を仰ぎ見る。悟りだよ。


キュイ---ィィィィ… キュイィィィィィィ … キュイ…

小鳥は夜に海を渡るって聞いた
かも?て、思ってた、けど、
あれは ティカ?

白い鳥達が光ってる。
と、
パタタッ。
胸の上に 一匹が降りてくる。
傾げた頭の後ろに、ハート柄。
足に小さなライトを着けてた。
だから、あんなに
白く光って見えるんだよ。

ティカ達は
上がったり、下がったりして

栗満月の海に、光る点が
流れ星になって動く。

右から現れ、左に向かい現れて、
光る編隊飛行は、
音もなく、月光を反射して。
見てると、
涙がツーと流れた。
だってさ、ほら、音がする。

『タクタクタクタクタクタク』

独特の旋回リズム、下降の音。

『シュゥーーザ、カチャカチャ』

ゴーゴーと低音の風に
煽られ波うち始めた海面から、
わたしは、飛び起きて

何で。と呟く。

離れてスーッと海面に
落とされた
ワイヤーの先で、ヘリに
ボート寄せを指示しているのは
信じられない人間なんだよ。

「ケーーイーー!!」

ボートのヘリに手を掛けて
海面から、自分のベルトに
引っ掻けた救助ベルトを

膝立ちする
股下に手早くかけるのは、
褐色の王子なんだよ!!

「なんでさ、貴方が来るのよ!」

「黙ってろ。舌をbiteする。」

ベルトを回して、
股下からのベルトと繋ぐと、
引き上げの合図。

凄い衝撃と共に
アザミとケイの体は、海飛沫を
撒きながら、1つになって
夜空に舞い上がった。

浮遊感に悶えて
アザミが瞼を閉じると、
目元にヒヤリと感触がする。

ケイがアザミの涙跡を吸って

「 Use magic、他に誰がいる? 」

ヘルメットから妖艶に笑った。

「王子なのに?」

きっと、前髪ボサボサだね。

「Military trainingだろ。いつもの
事だ。なんだアザミ元気だな」

ん?と思った瞬間、ケイの片手がしっかり、
アザミの胸を下から掴んだ。

「信じられないよ!ケイさ、
本当、エロ王子だよね!」

弄ぐる相手の手を叩くアザミに

「10年前から nice bodyな君
が悪いな。Sorry、アザミ 」

飄々と更にバックバグする王子は
さあ、機内に着くぞと、
上を仰ぐ。
ヘリの足が見えて、

「やあ、タムラさん。ご無事で
何より。大分、心配したよ。」

場違いな執事服が見えた。

「ヤマモリさん、救助アシストも
出来るって、どんなP.Bですか?」

呆れてその顔を見上げるアザミに

「お褒め頂き。SS級なのでね。」

執事は、手を出して
2人の体を機体に引き上げた。