その日
朝からメディアは
これから執り行われる
国家式典の中継をスタンバイし、
多くの人々は
その様子を 固唾を飲んで
見守っていた。

近づく開始時間にむけ、
厳かな空気が 映し出される中。

祝い 列席するため来日していた、
世界各国の王族や首脳などが
続々と
古風で奥ゆかしい宮殿に
到着する。

その度に、
テレビのコメンテーターが
称賛の解説をし、
国民はその優美な様子を
喜々と眺め。

男性は
燕尾服やモーニングコート、
紋付羽織袴。
女性はロングドレスに、
デイドレス 、白襟紋付。
それに輝く勲章が胸元に見える。

世界各国から集まった来賓は
伝統着や歴史ある衣装になどにも
彩られていた。

そんな中、現れた 王子の姿に
一同メディアは騒然となる。
褐色の肌に麗しく整えられた
黒髪は、好感がもてて、
純白軍服。
そのイケメンぶりに
惚れ惚れとした空気が色めく。

各国の王子達も見目麗しの中
特に話題になったその人物は
オセアニア地域の国、第6王子

『カイザー王子』

と、報道された。

褐色の王子の登場で、
来賓の入場は完了し、
晴れた空に、虹が掛かるという
神秘が起きて、式典は
開始された。


「ダーレーンー!!あれ!ケイ
イリュージョニスト・ケイ
ですわ」

中継を見ていたケイトウが、
オフィスで大声を上げて
ダレンを呼ぶ。

「成る程な。偽り者同士か。」

顎に片手をやって呟くダレンを
何かワメいて、ケイトウは

「Oh!アサミ見てないかも!
すぐにコールすべきだわ!↑
NO!!出ないガッデム!」

いいですわ!下のオフィスに
直接行ってやりますわ、と
ケイトウは非常階段を
バタバタと降りて行った。

「やれやれだな。」

ダレンは、オフィスの
大画面モニターに映る、王子を
見つめながら、腕を組んで
いたが、すぐにオフィス電話が
コールされ、表示に訝かしむ。

『ダーレン!!スキャンダル!』

さっき降りたばかりの
ケイトの大音量が 受話器から
ガナル。

『アサミいない!課長いない!
ミズキパニック!ヘルプ!!』

ケイトウの声に眉を寄せた
ダレンが、その内容を理解すると、即座にケイトウに指示をした

「ケイトウ!シオン姫に知らせ
ろ。ハジメオーナーもヨミ女史も
今なら一緒に同伴して船で向か
ってるはずだ。まず知らせろ」

警察に連絡する案件か?
判断が難しい。そもそも、
あの課長も?一体何が起きてる?

ダレンは、黙って目まぐるしく、
頭を回転させた。

大画面には 大写しされる、
『カイザー王子』の凛々しい
横顔が、国王の隣に 佇んでいる。