「へぇ、Rose flowerは この季節も
咲くのか。アサミ、あれは、、
ビンディー じゃないか。?」

宮廷庭園風に植栽された
ローズガーデンには
沢山のテントと、
薔薇にちなんだ グルメやスイーツ
雑貨も軒を連ねている。

「そうだよ最近はさ、フェス
ファッションに、ビンディー
シールでお洒落したりもするよ。
セレブとかの、見たことない?」

ケイの目には
割りと自国で馴染みのある
『ビンディー』をつけた女子が
楽しんで映っていた。

サイクルボートで移動した
お茶屋で昼食を済ませて
アザミはそこから
ケイを 植物園で開催されている
ローズフェスティバルに
案内している。

「ほらさ、ローズウォーターの
テイスティングもしてるよ。」

珍しそうに
張られたテントをみるケイに、
アザミが声をかけたから、

「アサミのぶん、Tasting tea、
取ってくるか ?」

ケイがアザミに、
彼女が指し示したテントへと
試飲をもらいに 離れた。

スタッフに声を
かけようとして、
後ろから来る気配を
ケイは慣れた面持ちで
待つと

「My road。いつまで、このまま
いるのでしょうか?
今日、お相手に 話されるの
ですよね?イライラしますが。」

そう、揶揄してくるのは
影にいるはずの護衛で、
彼は 願掛け指輪の島も、
10年前の学生交流も、
ケイの学友として
警護してきたのだ。

「My road。先ほどの川で 思いを
伝えて、お話されるはずでは?」

今更、怖じ気付きましたかと
護衛であり、
自国で待つ側近と同じく、
幼馴染でもある
隣の男はケイに容赦がない。

試飲スタッフが
ケイと護衛にローズウォーターの
入る容器をトレーから
渡す。

ケイは、追加でもうひとつ
ローズウォーターを
スタッフに所望して、

「解らなくなった。何と言えば」

護衛を見ずに 重い口を開いた。
ケイは俯いている。

それを、珍しいモノを見たと
顔をして護衛は

「王子としてですか?それとも、
運命の花嫁を連れて帰る伴走者
としてですか?My road?」

やはりケイを見ずに
真っ直ぐ前を見ながら 諭す。

並ぶ2人の前に、追加の試飲が
置かれて、護衛はそれを
ケイに渡す。

「プロポーズは契約です。自分を
提示して、ゴールは相手の承諾を
勝ち取る事。My roadの双肩には
あらゆる重責がございます。」

ふと、
ケイは 護衛がアザミの方を
見るのを 捉える。
アザミは薔薇製品や、薔薇を売る
テントで買い物を
している。

「 私は、富める自国において、
普通の男性の方が 王族よりも
よほど自由に生きていると
思ってしまう程に、My roadは
結果を出す事を求められる。」

ケイは、幼馴染としての
眼差しを向けられていると、
感じて、俯いていた顔を
護衛に 正だす。

「だからせめて、この国でなら
カイザーのままで、
彼女にそのまま伝えたらいい。

『好き』だ
という気持ちには、
勝ち負けはない。そこには
カイザーの
『 自由』だけが、ある。」

そう言うと、ケイの胸に
グッと親指を立てた拳を
トンと当てて、
9年前のミニブーケも
ローズだったろと笑うと

礼のポーズを取って
気配を消すと
再び影になった。

「 I'm here 、、」

アイツ、本当にsame year か?

呆然するケイは
少し目頭を拭って

両手にローズウォーターを手に
アザミが買い物をする
テントに戻った。
途中、遅れた理由を
ローズアイスで誤魔かせるよう
隣でそれも買ってから。



「なんだか、men's は居にくい」

散々薔薇のアイテムを試して、
尚且つローズアイスを手に、
眉を潜めるケイを

「魔術師ケイならさ、必須アイ
テムなんじゃない。ローズは!」

アザミは笑いながら、さっき
見つけて買った
ローズキャンディを
自分の口に放り込んだ。

「なら アサミ、手書きビンディー
をしている。body make するぞ」

さっきのローズウォーターテント
からすぐのテントに、
見つけたケイが 、

半ば強引に アサミを
本格ビンディを額に書くブースへ
引っ張って、
中の女性から ビンディー粉や
筆を借りてくる。

「え?!やってもらうんじゃ
ないの?自分で、ってケイが?」

あっという間に
芝生に座ったケイの膝を枕に
アサミをそのまま寝かせて

「知らないのか?ビンディは
Husbandが書くものだろ。」

短くなった髪を開いて
アザミの 白い額を露にした。

真っ赤な褐色の粉を溶いた筆先を
額に 落とすと
アザミがくすぐっそうにして
ケイは口の片端を上げてしまう。

Heee、確かにこれは、 husbandが
書くモノだな。
For the first time 気がついた。
これは

口が緩むとケイは考えながらも、

「それってさ、マリッジビンディ
だよね。ケイが書かなくても」

アザミが言う事を
受け流して
慣れた手つきか、上機嫌で
筆を滑らす。

性感帯は背骨を柱に
人体の中心にportがある。
その感覚が集まるのは
勿論、脳だ。
集められた感覚を、脳が
快楽へと受け止めるなら、

脳に直接触れるportは
男女問わずに、額だ。

「クマリ。ローカルクマリという
マスターがいる。国王でさえ膝ま
付く、国の運命を予言する者だ。
出会えれば、こうしてビンディ を
つけてもらえる。そのmiracleな
ビンディを『ティカ』と呼ぶ。」

目を閉じていた、アザミが
ケイの膝の中で 瞳を開く。
彼女の中でも 何かが
解ったような光が
そこにある。

「もしかしてさ、『ティカ』っ
て、そこから名前をつけてる?」

噎せる薫りのローズガーデン。

流れるBGMが変わるのが
ケイにも、解って

「それは、どうかな?」

ケイが 徐に膝に乗せた アサミに
褐色の整った顔を 被せる。
音にならない

好きだ を、唇の触りに乗せて

アザミの口に入っている
ローズキャンディを
舌で絡めとり、
そのまま アザミの耳朶にも
音にならない
I loveを噛んだ。

「薔薇の taste だな。」

上から覗き込む口をケイは
微笑ませて

「アサミ、出来たぞ。似合うな」

その額に
自ら描いた印を

サヤ スカ アワッ となぞってから

アザミを膝から、起こした。

それまでの考えていた事が
ケイには霧散して、

Blessingー祝福を与えるとは、、
見返りとかではないんだな。

確かに freedom だ。

アザミの瞳を見つめていた。

What。この sense は。

時間が永遠に思えたそんな
錯覚がした時、
曲調が変わりボルティックな
音楽が何故か流れてくる。

「そんなに大事な『ティカ』を
貰うなんてさ、出来ないよ。」

ケイの前から立ち上がって、
アザミはカバンから、
ショールを取り出し
その体に巻く。

ケイは、訳がわからない顔で、
まだ情けなく芝生に座したまま。

次の瞬間、周りのテントで
売り子をしていたスタッフや、
ショールを巻いた客が、

踊り出す!!のを見ると

「フラッシュモブか?!」

ケイがアサミの頷く顔に
予感した。

アザミは、そのまま 踊りに
加わって、大勢の団体の一部に
紛れ込む。
そこから 一気に踊る!団体は
うねりを造る。

濁流のような 狂喜踊る人ごみに
押し流されて、ケイは、

「おい!ここに置いていくのか!
最後までエスコートしろ!
コンダクターだろ?!アサミ!」

アザミに向かって叫ぶ。

「ケイはさ、魔術師だしさ、
小人も、着物の令嬢もいるから
大丈夫だよ。だから行くね。
ああ、
明日頑張ってよ。『カイザー』」

どこかケイには、無情に感じた
そんなアザミ笑顔に
強張って 動けない 。

目の前で マジックのように
ショールを
頭まで スッポリ被せ

インド映画さながらの、
ボリウッド音楽に合わせて
シンクロダンスをする
フラッシュモブへと

アザミは
消えていく。

『カイザー』と呼ばれた。

その単語の含みを
感じると、ケイは
固まってしまった。

モブダンスに、薔薇の花弁が
舞と、もう見えない 探してた姿。

この event をオレから
逃げるのにUseしたのか?
Rose gardenを選んで?

「追え!!「My road!!」

ケイが叫び切る前に
影から2人の男が 飛び出て

「出来るわけないでしょう!!
この人数の人手です!我々が
離れるわけには!拒否します!」

ケイの前後に立つ。

「My road。アサミ様は 『契約』
を躊躇われただけです。
後の者を呼んでます。住んでる
場所もわかります。明日に支障が
出る命令は、我々は聞けません」

護衛の言葉を、自分を
取り戻したケイは 一言だけ
呟やく。

「口を、読んだのか。」

目の前の幼馴染は、
すいませんとだけ、頭を下げた。