今日が、
ケイをツアコンするのはさ、
最後になる。
あと、急だけど、
ヒルズビレッジから わたしもさ
消える日になる、つもり。
「凄いな。bicycleボートになる
のか。知らなかった。」
アサミは、ケイの目の前で、
さっき乗ってきた
レンタルサイクルに
バナナボートみたいな浮きを
2本膨らませて、
互いに装着する。
簡易着脱ボートの自転車仕様。
自転車のペダルを動力にした
ボートになるのだ。
「これさ凄いでしょ?
ボートより動かすのも
スマートなのよ。じゃ行くよ。」
鉄道で1本、1時間も乗れば、
山や、渓谷が広がり、その景色を
彩るのは 鮮やかな 紅葉。
川面まで紅葉が生い茂るような
非日常な風景を、
自分たちが漕ぐペースで、
愛でていく。
「美しいな。ああ、この国も 神に
愛された国だな。この風景 は
祖国にはないモノで、美しい。」
そうなんだよ、ケイの国には
ない紅葉の景色。
今日は朝からだからさ、
いろんな風景を
ケイには見せてあげたい。
「朝に行った、農耕地域とはさ
また違う景色だよね。」
渓谷にくるまで走らせた
サイクリングは、秋の田畑が
牧歌的だった。
「ドローンを あんな風にtake in
しているのは 驚いた。」
紅葉の間を水の路に乗って、
下流にゆっくり向かう。
「この辺りはさ、ドローンを農業に使ってたんだね。海の赤潮対策とかに使うのはさ、わたしも
テレビで見たことあるけど。」
午前中は有機農場の体験を
ケイにしてもらって、
室内で魚介養殖をしている施設も
見学した。
最後にさ、体験ツアー出来て
良かったよ。これで契約的に
『JAPAN good point旅』は満了。
「アサミは 今日はよく話すな。」
ケイが サイクリングバックから
水筒を出す。
今日の朝に アサミが用意した
味噌汁入りの水筒だ。
あの、ペットボトルシップで
会った朝と同じ。
「今だけよ。」
紅葉を目の前に、自転車ボートに
またがったまま、ケイは ついでと
マヨおにぎりも出してきた。
「もしかしてさ、水の上でランチ
するつもり?落ちるよ。」
「せっかくのhand made だろ?」
可憐な モミジを前に食べたいと、
ケイが言うからさ、
わたしも 水筒から温かいお味噌汁
を口にするよ。
風に揺れて紅葉が水に落ちる。
課長のデスクに 辞表を
出した事を 思い出す。
髪が短くなった自分を見た時には
決めていたよ。
だから、昨日のうちに 部屋も
解約したし。
もともと、荷物なんて無いからさ
「ヒルズビレッジみたいな
urbanな場所から遠くないのに、
自然が多い。surprising だな。」
ケイがアサミの様子を伺うように
見る。
「ヒルズビレッジはさ別格だよ。
とくに洗練されてるアーバンな
場所 だもん。よけいだよ。」
本当にさ、夢のみたいな場所で、
働いてたのが嘘みたいよ。
「ねぇ、ケイはさ、ボトルシップ
を芸術祭に 持ってくるだけが、
来日の理由じゃないでしょ?
いいの?ここに来てても?」
「そうだな。To meet the bride、
花嫁候補に会いにきた。
それが1番の理由だ。
他もあるがNo problem だろ?」
やっぱりさ、そうなんだよ。
「じゃあさ、今日はちゃんと
お昼食べてから、この先である、
ローズフェスティバルに
川を下って行こうと 思ってる。」
これも 最初ヤマモリさんからさ、
聞いていたんだよね。
そうして、予定する茶屋に
踵を返して漕ぎ出すアサミを
ケイが並走して 間を詰めてきた。
「背中に モミジがあるぞ。」
並ぶ、自転車越しに
手を廻されると 抱きしめられる
みたいにして、取られた背中の
紅葉を見せられる。
「あのさ、そーゆーの!やめてよ
だいたいさ、普通ダンスの時に
人の体!触らないでしょ!
本当、後に先にもケイぐらいよ」
「10年前には、足を骨折したな。
昨日は、Play revenge!満足だ」
サイテーだよ!!信じられない!
全然かわってない、
かつての交流相手に
アサミは 非難する視線を投げる。
それを
受けながらケイも 方向転換して、
水車が目印の茶屋で
お昼を満喫した。
「へぇ、Rose flowerは この季節も
咲くのか。アサミ、あれは、、
ビンディー じゃないか。?」
宮廷庭園風に植栽された
ローズガーデンには 沢山のテント
薔薇にちなんだ グルメやスイーツ
雑貨も軒を連ねている間を、
「そうだよ最近はさ、フェス
ファッションに、ビンディー
シールでお洒落したりもするよ。
セレブとかの、見たことない?」
やたらビンディーをつけた女子が
楽しんでいる。
まあ、それだけじゃないんだよ。
自前のショールとかを
それっぽく巻いてる 女子も多い
のはさ。
「ほらさ、ローズウォーターの
テイスティングもしてるよ。」
アルコールを禁じる国は、
ローズウォーターソーダを
シャンパンにしたり、
白コーヒーとして飲んだりする
らしい。
世界トップクラスの薔薇の生産国
インドと薔薇の説明をカンバンで
読みながら、薔薇製品や、
薔薇を売るテントを
いくつも 軒先をまわる。
「なんだか、men's は居にくい」
散々薔薇のアイテムを試した
くせにさ、ローズアイスを手に、
眉を潜める?
「魔術師ケイならさ、必須アイ
テムなんじゃない。ローズは!」
ケイに、アサミは笑いながら
今度は ローズキャンディを
自分の口に放り込んだ。
「なら アサミ、手書きビンディー
をしている。body make するぞ」
ケイが 半ば強引に アサミを
本格ビンディを額に書くテントへ
引っ張っていって、
中の女性から ビンディー粉や
筆を借りてくる。
「え?!やってもらうんじゃ
ないの?自分で、ってケイが?」
芝生に座ったケイの膝を枕に
アサミは そのまま寝かされた。
「知らないのか?ビンディは
Husbandが書くものだろ。」
真っ赤な褐色の粉を溶いた筆先が
アサミの額に 落とされて
へんに、くすぐったい。
あー、確かにこれはさ、 旦那が
書くよ。感触も 構図も
どうしようもないよ。
「それってさ、マリッジビンディ
だよね。ケイが書かなくても」
慣れた手つきで、筆を滑らす
ケイが
「クマリ。ローカルクマリという
マスターがいる。国王でさえ膝ま
付く、国の運命を予言する者だ。
出会えれば、こうしてビンディ を
つけてもらえる。そのmiracleな
ビンディを『ティカ』と呼ぶ。」
目を閉じていた、アサミは
瞳を開く。
「もしかしてさ、『ティカ』っ
て、そこから名前をつけてる?」
その辺りから、ローズガーデンに
流れるBGMが変わるのが
アサミには、解った。
「それは、どうかな?」
ケイが 徐に膝に乗せた アサミに
褐色の整った顔を 被せて、
アサミの口に入っていた
ローズキャンディを 舌で絡め
とり、そのまま アサミの
耳朶も噛んだ。
「薔薇の taste だな。」
上から覗き込む口を 微笑ませて
「アサミ、出来たぞ。似合うな」
膝から、アサミの上半身を
起こした。
その間、なぜがアサミは
恥ずかしさとか、嫌らしさとか
胸の高鳴りとかが霧散して
ケイの瞳を見つめていた。
なんだろう。この感覚は。
時間が永遠に思えたそんな
錯覚がした時、
合図の音が流れてきた。
夢の終わりだ。
「そんなに大事な『ティカ』を
貰うなんてさ、出来ないよ。」
立ち上がって、アサミは
カバンから、ショールを取り出し
体に巻く。
ケイは、訳がわからない顔で、
まだ芝生に座っていた。
次の瞬間、周りのテントで
売り子をしていたスタッフや、
ショールを巻いた客が、
踊り出す!!
「フラッシュモブか?!」
ケイがアサミの頷く顔を見た。
アサミも、そのまま 踊りに
加わって、大勢の団体の一部に
紛れ込むのを、
ケイが
「おい!ここに置いていくのか!
最後までエスコートしろ!
コンダクターだろ?!アザミ!」
叫ぶのをアサミは そのまま
「ケイはさ、魔術師だしさ、
小人も、着物の令嬢もいるから
大丈夫だよ。だから行くね。
ああ、
明日頑張ってよ。『カイザー』」
笑顔を見せながら、
ショールを 頭まで スッポリ被せ
インド映画さながらの、
ボリウッド音楽に合わせて
シンクロダンスをする
フラッシュモブへと
消えていく。
『カイザー』と呼ばれて、ケイは
固まったまま、動かない。
モブダンスに、薔薇の花弁が
舞と、もう見えない姿。
今日さ、ここで参加型のさ
フラッシュモブイベントがある
のを、教えてもらった時は
まさかね、来るとは
思ってなかったんだよ。
おかげで、
イリュージョニスト・ケイが
出現した時みたいさ、
わたしも 華やかに
消えれるね。
ケイをツアコンするのはさ、
最後になる。
あと、急だけど、
ヒルズビレッジから わたしもさ
消える日になる、つもり。
「凄いな。bicycleボートになる
のか。知らなかった。」
アサミは、ケイの目の前で、
さっき乗ってきた
レンタルサイクルに
バナナボートみたいな浮きを
2本膨らませて、
互いに装着する。
簡易着脱ボートの自転車仕様。
自転車のペダルを動力にした
ボートになるのだ。
「これさ凄いでしょ?
ボートより動かすのも
スマートなのよ。じゃ行くよ。」
鉄道で1本、1時間も乗れば、
山や、渓谷が広がり、その景色を
彩るのは 鮮やかな 紅葉。
川面まで紅葉が生い茂るような
非日常な風景を、
自分たちが漕ぐペースで、
愛でていく。
「美しいな。ああ、この国も 神に
愛された国だな。この風景 は
祖国にはないモノで、美しい。」
そうなんだよ、ケイの国には
ない紅葉の景色。
今日は朝からだからさ、
いろんな風景を
ケイには見せてあげたい。
「朝に行った、農耕地域とはさ
また違う景色だよね。」
渓谷にくるまで走らせた
サイクリングは、秋の田畑が
牧歌的だった。
「ドローンを あんな風にtake in
しているのは 驚いた。」
紅葉の間を水の路に乗って、
下流にゆっくり向かう。
「この辺りはさ、ドローンを農業に使ってたんだね。海の赤潮対策とかに使うのはさ、わたしも
テレビで見たことあるけど。」
午前中は有機農場の体験を
ケイにしてもらって、
室内で魚介養殖をしている施設も
見学した。
最後にさ、体験ツアー出来て
良かったよ。これで契約的に
『JAPAN good point旅』は満了。
「アサミは 今日はよく話すな。」
ケイが サイクリングバックから
水筒を出す。
今日の朝に アサミが用意した
味噌汁入りの水筒だ。
あの、ペットボトルシップで
会った朝と同じ。
「今だけよ。」
紅葉を目の前に、自転車ボートに
またがったまま、ケイは ついでと
マヨおにぎりも出してきた。
「もしかしてさ、水の上でランチ
するつもり?落ちるよ。」
「せっかくのhand made だろ?」
可憐な モミジを前に食べたいと、
ケイが言うからさ、
わたしも 水筒から温かいお味噌汁
を口にするよ。
風に揺れて紅葉が水に落ちる。
課長のデスクに 辞表を
出した事を 思い出す。
髪が短くなった自分を見た時には
決めていたよ。
だから、昨日のうちに 部屋も
解約したし。
もともと、荷物なんて無いからさ
「ヒルズビレッジみたいな
urbanな場所から遠くないのに、
自然が多い。surprising だな。」
ケイがアサミの様子を伺うように
見る。
「ヒルズビレッジはさ別格だよ。
とくに洗練されてるアーバンな
場所 だもん。よけいだよ。」
本当にさ、夢のみたいな場所で、
働いてたのが嘘みたいよ。
「ねぇ、ケイはさ、ボトルシップ
を芸術祭に 持ってくるだけが、
来日の理由じゃないでしょ?
いいの?ここに来てても?」
「そうだな。To meet the bride、
花嫁候補に会いにきた。
それが1番の理由だ。
他もあるがNo problem だろ?」
やっぱりさ、そうなんだよ。
「じゃあさ、今日はちゃんと
お昼食べてから、この先である、
ローズフェスティバルに
川を下って行こうと 思ってる。」
これも 最初ヤマモリさんからさ、
聞いていたんだよね。
そうして、予定する茶屋に
踵を返して漕ぎ出すアサミを
ケイが並走して 間を詰めてきた。
「背中に モミジがあるぞ。」
並ぶ、自転車越しに
手を廻されると 抱きしめられる
みたいにして、取られた背中の
紅葉を見せられる。
「あのさ、そーゆーの!やめてよ
だいたいさ、普通ダンスの時に
人の体!触らないでしょ!
本当、後に先にもケイぐらいよ」
「10年前には、足を骨折したな。
昨日は、Play revenge!満足だ」
サイテーだよ!!信じられない!
全然かわってない、
かつての交流相手に
アサミは 非難する視線を投げる。
それを
受けながらケイも 方向転換して、
水車が目印の茶屋で
お昼を満喫した。
「へぇ、Rose flowerは この季節も
咲くのか。アサミ、あれは、、
ビンディー じゃないか。?」
宮廷庭園風に植栽された
ローズガーデンには 沢山のテント
薔薇にちなんだ グルメやスイーツ
雑貨も軒を連ねている間を、
「そうだよ最近はさ、フェス
ファッションに、ビンディー
シールでお洒落したりもするよ。
セレブとかの、見たことない?」
やたらビンディーをつけた女子が
楽しんでいる。
まあ、それだけじゃないんだよ。
自前のショールとかを
それっぽく巻いてる 女子も多い
のはさ。
「ほらさ、ローズウォーターの
テイスティングもしてるよ。」
アルコールを禁じる国は、
ローズウォーターソーダを
シャンパンにしたり、
白コーヒーとして飲んだりする
らしい。
世界トップクラスの薔薇の生産国
インドと薔薇の説明をカンバンで
読みながら、薔薇製品や、
薔薇を売るテントを
いくつも 軒先をまわる。
「なんだか、men's は居にくい」
散々薔薇のアイテムを試した
くせにさ、ローズアイスを手に、
眉を潜める?
「魔術師ケイならさ、必須アイ
テムなんじゃない。ローズは!」
ケイに、アサミは笑いながら
今度は ローズキャンディを
自分の口に放り込んだ。
「なら アサミ、手書きビンディー
をしている。body make するぞ」
ケイが 半ば強引に アサミを
本格ビンディを額に書くテントへ
引っ張っていって、
中の女性から ビンディー粉や
筆を借りてくる。
「え?!やってもらうんじゃ
ないの?自分で、ってケイが?」
芝生に座ったケイの膝を枕に
アサミは そのまま寝かされた。
「知らないのか?ビンディは
Husbandが書くものだろ。」
真っ赤な褐色の粉を溶いた筆先が
アサミの額に 落とされて
へんに、くすぐったい。
あー、確かにこれはさ、 旦那が
書くよ。感触も 構図も
どうしようもないよ。
「それってさ、マリッジビンディ
だよね。ケイが書かなくても」
慣れた手つきで、筆を滑らす
ケイが
「クマリ。ローカルクマリという
マスターがいる。国王でさえ膝ま
付く、国の運命を予言する者だ。
出会えれば、こうしてビンディ を
つけてもらえる。そのmiracleな
ビンディを『ティカ』と呼ぶ。」
目を閉じていた、アサミは
瞳を開く。
「もしかしてさ、『ティカ』っ
て、そこから名前をつけてる?」
その辺りから、ローズガーデンに
流れるBGMが変わるのが
アサミには、解った。
「それは、どうかな?」
ケイが 徐に膝に乗せた アサミに
褐色の整った顔を 被せて、
アサミの口に入っていた
ローズキャンディを 舌で絡め
とり、そのまま アサミの
耳朶も噛んだ。
「薔薇の taste だな。」
上から覗き込む口を 微笑ませて
「アサミ、出来たぞ。似合うな」
膝から、アサミの上半身を
起こした。
その間、なぜがアサミは
恥ずかしさとか、嫌らしさとか
胸の高鳴りとかが霧散して
ケイの瞳を見つめていた。
なんだろう。この感覚は。
時間が永遠に思えたそんな
錯覚がした時、
合図の音が流れてきた。
夢の終わりだ。
「そんなに大事な『ティカ』を
貰うなんてさ、出来ないよ。」
立ち上がって、アサミは
カバンから、ショールを取り出し
体に巻く。
ケイは、訳がわからない顔で、
まだ芝生に座っていた。
次の瞬間、周りのテントで
売り子をしていたスタッフや、
ショールを巻いた客が、
踊り出す!!
「フラッシュモブか?!」
ケイがアサミの頷く顔を見た。
アサミも、そのまま 踊りに
加わって、大勢の団体の一部に
紛れ込むのを、
ケイが
「おい!ここに置いていくのか!
最後までエスコートしろ!
コンダクターだろ?!アザミ!」
叫ぶのをアサミは そのまま
「ケイはさ、魔術師だしさ、
小人も、着物の令嬢もいるから
大丈夫だよ。だから行くね。
ああ、
明日頑張ってよ。『カイザー』」
笑顔を見せながら、
ショールを 頭まで スッポリ被せ
インド映画さながらの、
ボリウッド音楽に合わせて
シンクロダンスをする
フラッシュモブへと
消えていく。
『カイザー』と呼ばれて、ケイは
固まったまま、動かない。
モブダンスに、薔薇の花弁が
舞と、もう見えない姿。
今日さ、ここで参加型のさ
フラッシュモブイベントがある
のを、教えてもらった時は
まさかね、来るとは
思ってなかったんだよ。
おかげで、
イリュージョニスト・ケイが
出現した時みたいさ、
わたしも 華やかに
消えれるね。