「いえお客様。如何しました?」

さすがに、ダレンはさ、
気がついたよ。
振り返って見据えた目が言ってる

「よく知る人間に、似て非なるを
突き付けられたと、いうべきか」

上から下まで眺められて、
手を取られそうになった。時、

「Sorry。Lady マスカレード!
助けて下さい!」

また後ろからさ、
よく知る声よ!

アサミは、大きくため息をして

「What did you do?なんなりと」

ケイに 『ムラタ』として
応じるのに

今度は、後ろでダレンがさ、
何とも言えない低い声で、

「おや、これは
イリュージョニスト・ケイ殿。
パートナーは如何したか?
まさか、放り出しているとか?
意外に、紳士ではない方だ。」

ケイに、嫌味?言ってきたよ。

「Oho!マユはdaddyとトークだ
ダレンこそ、princes ケイトウを
エスコートしてないぞ。ん?」

本当ね、
わたしさ、巻き込まれ事故だよ。

「大体貴殿は、自由過ぎる。
只でさえ調子に、「ダーレン!」

明るいブラウンの巻き髪を
大人編み込みした、ケイトウが
スカーレットレッドのドレスで
現れた。

「ではお客様方、お伺いないよう
ですので、失礼しますね。」

アサミは角が立たないよう、
お辞儀をして その場を
離れる。
ケイトウが、ダレンに 電話をさ
指さして何か言い始めたのが、
救いになったよ。

「嫌 まだだ。Listen 、」

一瞬、ケイの勢いに飲まれて、
捕まれた手を アサミは、
振りほどけない。

「Lady マスカレード。
今、 パートナーがいない。
だから踊れない。please。」

pleaseの声が なんて色気だよ!

「お客様なら、すぐダンス
パートナーは 見つかりますとも
まあ、あちらの淑女様が、」

そう言ってるのに
あっという間にガセボに連れて
こられて、計算したように

照明が落ちる。

ここまできてさ、相手を置いて
逃げるような事は出来ない。

「Shall We Dance ?Lady 」

だから、
アサミは、一曲だけ踊る事を
決めた。

暗くなり、天井からの光源に
なれば、
アサミが選んだドレスは
独特の光方を放つ。

極めてダイヤモンドに近い石と
スパンコールが、
星を纏うように闇に浮かぶ。

それは、
グラデーションにライトが
明るくなると、
立っているだけで、

『女神が、降りてきたかのよう』

誰かが言った言葉そのまま。
ライトが明るくなる。

他のパートナー達と同じ様に
手を組んで、
ゆったりとした 足さばきをする
ブルース。

そのリードが踊り易くて、
アサミは ほうっと、思うと
ケイの下半身がぐっと押し付け
られた気がする。

気のせいかとケイを仰ぎ見ると、
そこに不敵な笑みが見える。

何?と思った瞬間、思いっきり
不埒な手で お尻を撫でられた。

コレ!敢えてよ!!

ならばと、アサミは
満面の笑顔で、ケイの足を
踏むべく、
ステップに紛れこませて、
エナメルの黒靴に
ピンヒールのかかとを
踏み抜いてやるっ!って、
即座に足を

上げやがったよ!

直ぐに次のステップで 足の甲を
再度、
狙ってかかとを 振り落とす!
くっ!
また足を後ろ、はね上げられた!

連続して ヒールで踏み込み、
エナメルに避けられ、
今度は反対にアサミの足先を?!

ケイが狙うかっ?!。ふつう!
ジェントルマンでしょ?

ブルースが、
異種格闘技戦の足の踏みあい
になって、
曲が終わる頃、またケイに

人のお尻をどれだけ撫でて!
ぐっ、と揉まれた瞬間?!

アサミを電撃のような記憶が
頭に浮上した。

こいつさ!!あの時のよ!!

その証拠に、

「アザミ。ワルツもいいか?」と

ケイがいい放ったんだもん!
間違いない!

アザミが、斜めに視線を
ケイに刺し抉る。
離れた位置から、再び手を
組んで、腰を互いに入れセット。

Oneーtwoーthree deep dance!!

そこからは、周りのパートナーが
置物のよう見えるスピードに、
いきなり
ケイが アサミをリード!して、
フロアの端から端までを
ザーーーーー!と、一気に
回り 駆け抜ける っっっっ!

アザミの
裾に 長くデザインされた
ビーズフリンジと
薄布のシンメトリースカートが

ブアリ、風を大きく張らんで
ケイとアザミの世界を
華麗に波開く。

大きくアザミの、上半身が
水面の白鳥のように
仰けて、、反らされて

それをゆっくりと、ギャラリーに
披露するかに回し見せる
ようにケイが 腰をホールドし、
暫く Vに別れた 互いの半身を
1つの 神体に戻した。

『カッ!』『タ、タタン!』

そこから、トップスピードに
ギアをMAXに 全開!!

アザミが ケイのリードに重ねて
足をはね上げたままに、
2人が多重旋回した。

ガセボのフロアを
めい一杯に泳ぐ2人は
フロアの多数のパートナーに
わずかも 当たる事なく、

もうスピードで ワルツという
超絶技巧なまでの優美な動きを
展開するを、

ボートからのゲストも
食い入るように見つめ、

自分達の間を
アザミのドレスが、シャランと
触るほどの近距離走行される様を
息を飲んで
動けずにいる。

フィニッシュに、完全なる
デモモードで

アザミを、ケイが、腰を掴んで
リフトに上げれば、

そのまま 回転を利かさせて、
スピンで放り投げれば
アザミは
見事、着地をして くるくると
廻わり終えると
優雅にカーテシーを
した。

楽団の音律だけが、流れる
EARTH POOL。

ケイが、パンパンと拍手をした。

それを合図に、楽団が
次のブルース曲を演奏、

ガセボのパートナー達は まるで
夢から覚めたように
踊り始めた。



「ケイ。貴方さ、そうなの?」

答え?そんなのは解ってる。

アザミは、目の前の魔術師を
マスカレードから 伺うように
見定める。

あんな真似するのさ、
後にも先にも たった1人よ。

「See you tomorrow?アサミ。」

なのにさ、
そのままケイは
その件には答えもしないで、
ガセボを去るのよ。

もう 回廊に向かう。

きっと、そう マユ嬢の元へ。

ケイの後ろ姿を 見送って、
アサミは、はあっと、
ため息をついた。


『ムーラーターーーー!!!』

瞬間。
アサミの耳にミズキの声が
無線中に響く音量で、聞こえた。

『いーまーすーぐ来い!デス!』

DEATH !!
不味い、本当に不味いよ。
とりあえずさ、
明日休みで良かったよ。

きっとさ、わたし、死んでるよ。

それにしても、
結局さ、もう、何がなんだかよ。