『アサミ姫は、
件の イリュージョニストと、
一体、どういう 関係なのだ。』

次の日の午前中。

かかってきた、電話の向こう
から聞こえたのは、
不機嫌なさ
ダレンの声だったんだよね。

もしかして ダレンってさ
昨日ケイと出掛けたのも
知ってるわけ ?
怖いよ。え、違うみたい。


『別に、、ただ、 何処か観光。
見れる所、 紹介、頼まれた』

おずおずとさ、 答えておくけど。

ケイトウならまだしも
ダレンから わざわざ通話って。
最初、だれ?って
躊躇したんだよ、これでもさ。

『イリュージョニストから、
アサミ姫に伝言だ。約束の
ランチタイムマジックを 披露
してくれるそうだが?
どうやら、我々にも 礼がてら
同席の許可が出ている。』

ダレンってさ、こんな押しの強い
、、タイプなんだ

なんでケイは、ダレンに連絡
したんだろうって思うけど、
もともとはさ、ハジメさんから
窓口を受けて、なんだった。

忘れてたよ。

『とりあえず、ランチタイムで』

わたしはさ、早めに、
切り上げの言葉をダレンに
投げる事にしたらば。

『場所は、庭園茶室だ。』

端的に、カンって投げ返されて、
今に至るわけ。

↓↓↓↓↓↓

「アサミ!!マイガッ!これは
ミラージュ、Why??」

隣にいるはずの、
ケイトウの狼狽えが半端ないし、

「騒ぐなケイトウ。スモークだ」

そのまた 向こうにいる
ダレンの顔さえ、わからなく
なりつつある これって
スモーク!!

「ダレン!NO!
エマージェンシーレベルですわ」

ハハ、確かに、
茶室に入るなり、突然
かーなーり、濃い霧になって。

ここは本当に、お昼の 日本庭園
なのかってぐらいに、
隣のケイトウ達が
一瞬、見えなくなった。

前後不覚、視界不明瞭。
ドクドクと
心拍数が上がるのが 自分でも、
分かる中

ユラリと 濃霧の空間に、
いつくもの人影が
伸びれば、わたし達
3人を 人影が並んで取り囲んで
ギョッした。

視界が奪われると
鼻腔を くすぐる深い薫りが
より強くなる。

「白檀の薫り」

ダルンが 低く呟くと、

横笛の高く細い音色が
霧の中に 聞こえてきた。

パタタ

風が 扇がれて
空気に、道の流れが出来る
のが わかる。

フア~サ~ッ~

霧が 左右に別れ、空いた空間。
庭園に 『和笛』を吹きながら
すくッとたつ

黒のローブ姿のマジシャンが
シルエットから 現れた。

しかも、その
傍らには ギロチン台がある
のだから 三度 驚く。

「Uwu!?」

アサミの隣で、ケイトウが
体を強張らせて、おののいた。

ローブのマジシャンは、
横笛を、バトンのように

くるくると回しながらも
ギロチンの周りを
一周する。

そして?
空中から取り出した
一輪の『桔梗花』を スッと

銀光りする、ギロチンの歯に
当てた、れば
『桔梗花』の頭が、ポトリ
と落ちた。

霧めいたモノトーンの世界に
『桔梗花』の 鮮烈な青紫が
目に残る。

少しずつ辺りにまた、
霧が上り始め
ローブのマジシャンは
自分の首に
赤い布を巻き付けた。

静かに、屈んで
ギロチンの首置きに 自分の顔を
こちらに
向け 首から上を出すと、

横笛を奏でる。

間髪入れずに、 ギロチンの歯が
『ダン!!!』「ひっ」
と、落ちた。

ゆっくり 屈がめていた 体を
起こす動作。

もちろん、そこに頭はなく。
首の辺りに
巻かれた 赤い布より、
上には 空間がある。

マジシャンの頭は
首置きに乗ったまま。
頭と胴体が
切られ離れてしまってる。
そう、見えた。


首なしのローブ体が、
そこに 立ち上がる、異様な風景。
次第に、
グリーンのレーザー光線が
首なし体から
発光されて、さざめいた。

再び、首なし体が、
切られた マジシャンの頭に
持っていく。

グリーンの光が 更に放たれ
目がくらむ間に、
また濃い霧に覆われる。

笛の音色、霧の中から
聞こえてた。

『ブアッ!』

茶室に 爆風が吹き込むんだ!!
たちまち
濃霧とギロチンは 泡と消えて、
そこには、
『桔梗花』を胸にあて、
礼のポーズをする
ローブのマジシャンが
いた。

3人は 唖然としつつ、庭方向に
パ、ラ、パ、ラ
拍手を贈るしかない。

茶室に、足を踏み入れたとたん
どこか、陰陽師の作る
霧の空間で 幻を、
みているような 短い
イリュージョンだったのだ、、。

立ち込めていた
霧はもう、茶室からは
それは、きれいさっぱり
無くなっているけど、

とても、声を上げるところでは
ない 3人。

けれど 静寂を破って

茶室の戸が開く。

茶室を借りるオプションとして
お願いしていた、懐石弁当が
コンシェルジュから
運ばれたのだ。

呆然とする 3人の前に
お膳に 全て整えられた。
昼食が 四角く
4つ並べられて、きちり
急須の日本茶も セットされた。



「イリュージョニストは、
アサミ姫と 如何な関係か?」

綺麗に仕切られた
枡の弁当に
あしらいの 紅葉が
添えられてるのを
ケイトウが 喜んでいてたり、

「たまに、こんな
正統派、 お弁当、いいよね。」

と、アサミが ケイトウに
おしゃべりをしていた時、

出し抜けに ダレンが
向かいの ケイに聞いてくるのに、
ケイは お弁当を
口に運び
ツイッと応えた。

「アサミさん には、パーソナル
コンダクターをお願いしたのです
ダレンさんに話すべきでしか?」

それを、聞いた
アサミの 隣に正座する
ケイトウが 面白そうに

「Ohー 事件ですか?↑↑」と
アサミに小突いて 揶揄してくる。

「貴方は、どうも好きに
やり過ぎるようだ。皆、日常の
仕事があるのだから、普通に
然るべき会社にでも、頼まれる
が良いのではないだろうか?」

これは、
ものすごく 硬い拒絶を、ケイは
アサミでない 人物
ダレンから 手厳しくされた
ようなモノ。

そんな言い方をした ダレン
なのに、
ケイは 笑みを湛えつつ

「I see、however 初めて 会った
アサミさんに助けられました。
信用する人のリードを 希望する
のは、ダメでしたか。」

やっぱり綺麗に、お弁当を
食するダレンを
真っ直ぐ見据えて負けていない。

ケイの台詞を理解した
ダレンの
『そんな事があったのか?』と、
言わんばかり、
アサミへの視線が 痛すぎる。

「なるほど。其処まで仰有る
なら、ほんの8日9日程の滞在。
すぐ自国に戻るのだろうなら
口出しは止めましょう。」

ケイと ダレンは さ
それでも、向きあって
構えていたけど、

その後は終始よ
さっきのイリュージョンや
この日本庭園の
見所なんかをさ
口々に話して 普通だったから
ようやく、ホッとした。

んだったはずが。


「アサミが迷惑なら『ケイヤク』
無しにしても、いい。」

ケイは、食事を終えて、
ケイトウと ダレンが 茶室を
出た瞬間、
後に続いて 部屋を出ようとする
アサミの手を引いた。

ダレンの 言うことはさ、
全く 正しい。
9日もすれば、また日常なんだよ

わたしは、ケイと 手を繋いだ
ままで、

「『ケイヤク』した、から、
やります。
イリュージョニスト・ケイ。」

と応える。そうすれば

「アリガトウ。次は『オンセン』
に、行きたい。ヨロシク。」

良く聞くと、とんでもない
リクエストを 今度はされ。

わたしは、ケイから繋がれた 手を
ほどいた。