憑き物を落とす日~大正編

1ちゅう秋に言われて皆が集まったのは○○が解体されてる現場で、僕は松葉杖をつく負傷した足の痛みよりも心に出来たばかりの傷が痛くて痛くて堪らなかった。
現場に居るのは僕ら二人以外に徒名「処女」「プレイボーイ」「朴念仁」「あばずれ」の四人他だった。何故この様な徒名をつけたかは個人機密を守るためとうつ病の僕が各人の名前を忘れてしまうからだ。だから絶対に差別を感じないでほしい。そうして暗闇にちゅう秋が用意したスポットライトが○○をグロテスクにした姿を「逃さない」と言わんばかりに明るく照らしていた。
2発端は僕の本業ではない金の為のカストリ記事の仕事の取材から始まる。いいネタが無いかなと妻がいれたお茶を楽しむ僕の耳にラジオからある残虐非道な事件の話が届いた。
○○の残虐非道な死体がランダムに決まった区域内で犯人にお披露目されているというのだ。鳥獣を虐待する事は犯罪ですとラジオは言うが、それは被害者が人間ではない為に、大正の警察が本腰をいれて捜査していないのだが、平和の象徴のソレを人がよく通る歩道に放置する重罪(器物破損と他だけなんて僕の正義)が許せなかった。だから僕は土鳩バラバラ殺人事件の記事を書こうと想った。一緒にお茶をしていた、くされ縁のちゅう秋は「君は本当に」と、はあとため息をこぼすのだが。
3本業の小説の執筆スケジュールも無いことから、僕は早速、土鳩が残虐な姿をさらしていたという現場に赴いた。住宅街ではない為に、通勤通学のサラリーマンや学生しか通らないと知ったのは、後からなので、その少女に会ったのは何の奇跡だろう?わからないまま僕は清楚で美しい少女に彼女にインタビューをしてみた。
4彼女の僕が決めた徒名は「処女」見るからに好感度に溢れており彼女は妻をもつ身の僕にすらため息と恥じらいをおぼえさす。綺麗な黒曜石の如し黒目と腰まで伸ばされた烏の羽毛の光沢を思わす黒髪が雪の様に白い肌を強調する。そのじわりと染められた頬の赤みを見ていたら、声がどぎまぎする緊張のあまりに、拙くなってしまう。「君は何故、こんな昼過ぎに、土鳩供養をしてるの?」と僕は高校生らしい美少女に声をかけた。
5「時間がありません」今は何も聞かないでくださいと言って彼女は昼休みの学校に戻ろうとする。僕はまた彼女に会いたいなと想ったから彼女の制服の腕を握った。「では、近くの神社によく居ますので」その時に声をかけてくださいと彼女恥じらいながら言う。解放したとたんに彼女は学校に向かって駆け出していた。綺麗だなと妻に詫びる僕だった。
6「それで、君は何しに来たんだ」ちゅう秋の家の居間でお茶請けの煎餅をぼりっとかじる僕に彼は言った。「あまりにも暇だったので帰ってきた」と喋る僕のトーンがとんちんかんだったのだろう?ちゅう秋は「誰かに会ったんだな」と顎に手をやると「美しい女性だろう」と挑む彼に僕は「まだ高校生だよ」と弁明するも「頬が赤いよ」と言われて居心地が悪くなった。それを聞いていたちゅう秋の奥さんが、「奥さんに恥じる想いをされてるのなら」告げ口しますよ。と笑われて「それは勘弁してください」と懇願する情けない僕だった。
7それにしても比べる事が間違ってるとはいえ僕は年中顔をあわす親友の鰓骨がはって目玉がぎょろりとした意気込んでいる時は鬼の様な形相になる痩せた顔にあの彼女の顔を照らし合わせる。そしてその間違いにおえっとえづいていたら「君の猿顔も僕の鬼面とそう大差ないさ」とホームズみたいに言い当てられた。