アリス達と別れた後、俺達はエルフの村に向かっていた。
借りた野営道具を返しに行くのと、単にエルフ達にお呼ばれされていたからだ。
「あ~あ、嫌な事聞いちゃったな」
「先ほどのお話でしょうか」
「まぁね。勇者が爺さんとカリンを狙ってる以上無視できる内容じゃないからな。甘いとは分かってるけどぶつからない道があるならその道に進みたいって思ってるし」
ティアが魔物嫌いである限りそんな未来はかなり難しいのも自覚しているつもりではあるが回避できるなら回避したい。
そうなるとどうやってティアを避け続けるかを考えた方がいいか。
「心中お察しします」
「まぁ、あいつも今頃はタイガと上手くいって俺の事忘れてるかもしれないし、向こうは向こうで幸せになってると助かるんだけどな」
「勇者には好きな男がいるのか?」
オウカも聞いてくる。
「好き、というか俺のただの希望だよ。あいつにはいつも隣にいるタイガと一緒になってくれたらなぁ、っていうただの希望だよ」
ティアの周りの男は皆おっさんばかりのようだし、同年代の男はタイガしかいないんじゃないか?
たまに貴族の男がーみたいな話も聞いたがあまり乗り気じゃないようだし。
「………」
「リル、元気出せ。俺が絶対に阻止してやるから」
「でも友達なんでしょ?向こうの心配もしてるんでしょ」
「そりゃぁ、まぁ」
「リュウはどっちも傷付けない様にするって言うけど凄く難しいのは分かるつもり。でもどうしてもどちらかを選ぶ時が来たら、どうするの?」
「そん時はお前らを選ぶに決まってるだろ。俺は友より嫁だ」
口ではそう言えるけどまだぶれてるのは自分でもわかる。
だからリルは不安なんだ。
だからリルは何度も俺に言ってほしいんだ。
きっと他の皆も不安なはず、口に出さないのは俺への気遣い。
決めるときはきちんと決めないといけない気がする。
そしてそれは遠い未来の話じゃない。
きっと意外なぐらいすぐに来る。
そんなもやもやした気持ちのままエルフの村に着いた。
エルフの皆は俺たちを祝福してくれた。
運良く他の国に渡っていなかったのも幸運だったし、俺はただ裏ギルドを潰していただけだ。
「リュウ様、そしてリル様たちのおかげでまた皆で暮らすことができます。ありがとうございました」
アル長老が代表として俺達に言った。
その隣にはエレンとウィロスさん、多分ソロン一家が全員で一緒に礼をしていた。
こういう光景を見ると間違った事はしてなかったっと思えるがこれがティアと一緒に出来るか?と聞かれると怪しい。
エルフ達は亜人として認知されているから殺される様な事はないがなぜか不安を隠せない。
「俺はただ皆さんのお手伝いをしただけです。この勝利は皆さんのものです」
「ご謙遜を、五百人もの軍勢を退けたのは皆さんのおかげです。我々では質で勝っても量で押し潰されていたでしょう」
「それなら妻達に、俺は裏ギルドを潰しただけなので」
「それでも捕らわれていた同族を解放してくれたのはリュウ様です」
なんてやり取りを少しした後、少し不安になって聞いた。
「村は変わらずここに?」
「はい。先祖代々この森に住み、生活してきたので今更離れるつもりはありませんよ」
「しかしこの場所の事は悪い人間に見つかってしまいました。正直危険だと俺は思っています」
「しかし行く当てもない以上、村を移すのは難しいかと」
それは分かっている。
でも、もしかしたら、どうにかなるかもしれない。
「精霊王はここにいますか?」
「はい。直接お礼を申し上げたいと言っていましたのでこちらにいます」
そう言って向かったのは村の中央にある巨大な木だった。
「精霊王様!リュウ様をお連れしました!」
そう、アル長老が言うと巨木が光って小さな手のひらサイズの精霊が二人出てきた。
それはは虹色の翅をした少年と少女だった。
周りのエルフ達はいつの間にか跪いている。
「ありがとうねアル。初めましてリュウ、僕が精霊王だ」
「あんたが精霊王?子供の姿とは思ってなかった」
「そんなに意外かな?場所によっては僕たちを妖精と呼ぶ所もあるからね。その方がイメージが合うかな?」
言われてみれば童話で出てくる妖精の絵はこんな感じかも。
俺はてっきり髭もじゃもじゃの爺さんだと思ってた。
「君の王様のイメージはそうなのか。その方が威厳は感じられるのかな?」
「もしかしていま俺の頭の中覗いたのか」
「そのぐらいは出来るさ。それと彼女からもお礼が言いたいって」
そう言って俺の前に出てきたのはもう片方の少女だった。
少女は人見知りなのか目を合わせようとしない。
目を逸らしながら少女は言った。
「私はティターニアです。私の契約者であるウィロスを救っていただきありがとうございました」
そう言うとすぐに精霊王の背に隠れてしまった。
「ごめんね。彼女、精霊やエルフとならこんな風にならないんだけど人間はまだ苦手みたいで」
「いや、仕方ないと思う。エルフを私利私欲のために捕まえてたのは人間だし、すぐに仲良くはなれないもんだろ」
「理解してくれて助かるよ。それじゃあ君への報酬を決めよう。まずはお金だろ、ウィロスを買った代金と……何が良いかな?」
精霊王はこういう事に慣れてないのか苦笑いをしながら聞いてくる。
そういう時こそ人の心を覗けば済む問題だと思うが……
そうだな……特に今欲しい物は特にないし、かと言ってレアな素材も今の所はいらない。
となると……
「それならエルフの皆さんをもっと安全な所に住まわせてくれ。それが報酬だ」
「リュウ様!?」
アル長老が驚いたように言うがだって今欲しいのないし。
「それが出来ないならこの村の結界をより強くしてほしい、二度とこんな事が起こらないようにな」
「それでいいのかい?でも元々この村の結界を強化するのは決まっていたし他にないの?」
「思いつかん」
百パーセント善意の言葉という訳じゃないが二度とこんな面倒事はしたくない。
面倒臭かったし、時間かかるし、こういう尊敬の目線?みたいなのも嫌だし。
俺はもっとのんびりしたいんだよ。
「う~ん、そうなると僕達にできる最大の報酬でもいいかな?」
「いや、そんな大層な物は貰えないって」
「物じゃ無いよ。精霊だ。と言っても君に合った精霊をプレゼントする事になるから少し君の事を調べさせてもらうけどね」
「精霊?まぁ……それでいっか?」
精霊王はどうしても報酬を渡したいみたいだしこの辺が落とし所か。
あとは精霊王に任せよう。
「それじゃ調べるからね」
そういって俺の額に小さな手を置いた。
特に調べれられてる感じはしないが……
するといきなり手を引っ込めた。
「どうかしたか?」
「どうかって、ちょっとこっち来て!」
なぜか精霊王に引っ張られ巨木の裏に移動した。
「なんで君の中にアジ・ダハーカがいるの!?」
「あ、分かったんだ。やっぱただの子供じゃなかったのか」
「しかもアジ・ダハーカよりもヤバそうな奴もいるじゃん!なんで君の中は魔境のようになってるんだい‼」
「んなこと言われても、それならそのもっとヤバそうな奴に話聞きな。力はあるけど話は通じるから」
「本当だよね?僕、消されたら大変なことが起きるからね」
怖がりながらまたそっと俺の額に手を置いた。
その間ぼーっとしてたが精霊王は疲れたように俺の前に降りてきた。
「どうだった」
「僕が君の契約精霊になることで話は纏まったよ」
「え、精霊王が。問題起こったりしないのか?」
「無い訳じゃないけど仕方ないよ。彼、いや今は彼女か。彼女がそれを望んでいる、断ったら大変なことが起きるよ」
ウルの奴何言ったんだ?確かに格はウルの方が高そうだけど。
まさか脅したりしてないよな?
「どうすんだよ。エルフの人達だってお前が居なくなったら不安になるぞ」
「それは大丈夫だよ。契約したから必ず契約者と一緒に居ないといけないルールは無い。僕は僕で仕事があるしそこは彼女も認めてくれた、だから君が力を貸してほしい時は協力すれば問題ないさ」
問題ないならいいけど……
どっちにしろばらしちゃいけないスキルがまた増えるのは決定か。
「それじゃ向こうに戻って契約をしよう。ここでこっそり契約する訳にもいかないからね」
「え~皆の前ですんのか?暴動起きない?」
「起きないよ。逆に歓迎されるかもよ」
されたくない。
面倒臭い。
しかし精霊王は嫌がる俺を無視して契約を無理やり進めた。
エルフの人達になんか言われたりしないかな~と思ったがなぜか受け入れられた。
俺は疲れた笑みを浮かべながら手を振って宿に帰った。
借りた野営道具を返しに行くのと、単にエルフ達にお呼ばれされていたからだ。
「あ~あ、嫌な事聞いちゃったな」
「先ほどのお話でしょうか」
「まぁね。勇者が爺さんとカリンを狙ってる以上無視できる内容じゃないからな。甘いとは分かってるけどぶつからない道があるならその道に進みたいって思ってるし」
ティアが魔物嫌いである限りそんな未来はかなり難しいのも自覚しているつもりではあるが回避できるなら回避したい。
そうなるとどうやってティアを避け続けるかを考えた方がいいか。
「心中お察しします」
「まぁ、あいつも今頃はタイガと上手くいって俺の事忘れてるかもしれないし、向こうは向こうで幸せになってると助かるんだけどな」
「勇者には好きな男がいるのか?」
オウカも聞いてくる。
「好き、というか俺のただの希望だよ。あいつにはいつも隣にいるタイガと一緒になってくれたらなぁ、っていうただの希望だよ」
ティアの周りの男は皆おっさんばかりのようだし、同年代の男はタイガしかいないんじゃないか?
たまに貴族の男がーみたいな話も聞いたがあまり乗り気じゃないようだし。
「………」
「リル、元気出せ。俺が絶対に阻止してやるから」
「でも友達なんでしょ?向こうの心配もしてるんでしょ」
「そりゃぁ、まぁ」
「リュウはどっちも傷付けない様にするって言うけど凄く難しいのは分かるつもり。でもどうしてもどちらかを選ぶ時が来たら、どうするの?」
「そん時はお前らを選ぶに決まってるだろ。俺は友より嫁だ」
口ではそう言えるけどまだぶれてるのは自分でもわかる。
だからリルは不安なんだ。
だからリルは何度も俺に言ってほしいんだ。
きっと他の皆も不安なはず、口に出さないのは俺への気遣い。
決めるときはきちんと決めないといけない気がする。
そしてそれは遠い未来の話じゃない。
きっと意外なぐらいすぐに来る。
そんなもやもやした気持ちのままエルフの村に着いた。
エルフの皆は俺たちを祝福してくれた。
運良く他の国に渡っていなかったのも幸運だったし、俺はただ裏ギルドを潰していただけだ。
「リュウ様、そしてリル様たちのおかげでまた皆で暮らすことができます。ありがとうございました」
アル長老が代表として俺達に言った。
その隣にはエレンとウィロスさん、多分ソロン一家が全員で一緒に礼をしていた。
こういう光景を見ると間違った事はしてなかったっと思えるがこれがティアと一緒に出来るか?と聞かれると怪しい。
エルフ達は亜人として認知されているから殺される様な事はないがなぜか不安を隠せない。
「俺はただ皆さんのお手伝いをしただけです。この勝利は皆さんのものです」
「ご謙遜を、五百人もの軍勢を退けたのは皆さんのおかげです。我々では質で勝っても量で押し潰されていたでしょう」
「それなら妻達に、俺は裏ギルドを潰しただけなので」
「それでも捕らわれていた同族を解放してくれたのはリュウ様です」
なんてやり取りを少しした後、少し不安になって聞いた。
「村は変わらずここに?」
「はい。先祖代々この森に住み、生活してきたので今更離れるつもりはありませんよ」
「しかしこの場所の事は悪い人間に見つかってしまいました。正直危険だと俺は思っています」
「しかし行く当てもない以上、村を移すのは難しいかと」
それは分かっている。
でも、もしかしたら、どうにかなるかもしれない。
「精霊王はここにいますか?」
「はい。直接お礼を申し上げたいと言っていましたのでこちらにいます」
そう言って向かったのは村の中央にある巨大な木だった。
「精霊王様!リュウ様をお連れしました!」
そう、アル長老が言うと巨木が光って小さな手のひらサイズの精霊が二人出てきた。
それはは虹色の翅をした少年と少女だった。
周りのエルフ達はいつの間にか跪いている。
「ありがとうねアル。初めましてリュウ、僕が精霊王だ」
「あんたが精霊王?子供の姿とは思ってなかった」
「そんなに意外かな?場所によっては僕たちを妖精と呼ぶ所もあるからね。その方がイメージが合うかな?」
言われてみれば童話で出てくる妖精の絵はこんな感じかも。
俺はてっきり髭もじゃもじゃの爺さんだと思ってた。
「君の王様のイメージはそうなのか。その方が威厳は感じられるのかな?」
「もしかしていま俺の頭の中覗いたのか」
「そのぐらいは出来るさ。それと彼女からもお礼が言いたいって」
そう言って俺の前に出てきたのはもう片方の少女だった。
少女は人見知りなのか目を合わせようとしない。
目を逸らしながら少女は言った。
「私はティターニアです。私の契約者であるウィロスを救っていただきありがとうございました」
そう言うとすぐに精霊王の背に隠れてしまった。
「ごめんね。彼女、精霊やエルフとならこんな風にならないんだけど人間はまだ苦手みたいで」
「いや、仕方ないと思う。エルフを私利私欲のために捕まえてたのは人間だし、すぐに仲良くはなれないもんだろ」
「理解してくれて助かるよ。それじゃあ君への報酬を決めよう。まずはお金だろ、ウィロスを買った代金と……何が良いかな?」
精霊王はこういう事に慣れてないのか苦笑いをしながら聞いてくる。
そういう時こそ人の心を覗けば済む問題だと思うが……
そうだな……特に今欲しい物は特にないし、かと言ってレアな素材も今の所はいらない。
となると……
「それならエルフの皆さんをもっと安全な所に住まわせてくれ。それが報酬だ」
「リュウ様!?」
アル長老が驚いたように言うがだって今欲しいのないし。
「それが出来ないならこの村の結界をより強くしてほしい、二度とこんな事が起こらないようにな」
「それでいいのかい?でも元々この村の結界を強化するのは決まっていたし他にないの?」
「思いつかん」
百パーセント善意の言葉という訳じゃないが二度とこんな面倒事はしたくない。
面倒臭かったし、時間かかるし、こういう尊敬の目線?みたいなのも嫌だし。
俺はもっとのんびりしたいんだよ。
「う~ん、そうなると僕達にできる最大の報酬でもいいかな?」
「いや、そんな大層な物は貰えないって」
「物じゃ無いよ。精霊だ。と言っても君に合った精霊をプレゼントする事になるから少し君の事を調べさせてもらうけどね」
「精霊?まぁ……それでいっか?」
精霊王はどうしても報酬を渡したいみたいだしこの辺が落とし所か。
あとは精霊王に任せよう。
「それじゃ調べるからね」
そういって俺の額に小さな手を置いた。
特に調べれられてる感じはしないが……
するといきなり手を引っ込めた。
「どうかしたか?」
「どうかって、ちょっとこっち来て!」
なぜか精霊王に引っ張られ巨木の裏に移動した。
「なんで君の中にアジ・ダハーカがいるの!?」
「あ、分かったんだ。やっぱただの子供じゃなかったのか」
「しかもアジ・ダハーカよりもヤバそうな奴もいるじゃん!なんで君の中は魔境のようになってるんだい‼」
「んなこと言われても、それならそのもっとヤバそうな奴に話聞きな。力はあるけど話は通じるから」
「本当だよね?僕、消されたら大変なことが起きるからね」
怖がりながらまたそっと俺の額に手を置いた。
その間ぼーっとしてたが精霊王は疲れたように俺の前に降りてきた。
「どうだった」
「僕が君の契約精霊になることで話は纏まったよ」
「え、精霊王が。問題起こったりしないのか?」
「無い訳じゃないけど仕方ないよ。彼、いや今は彼女か。彼女がそれを望んでいる、断ったら大変なことが起きるよ」
ウルの奴何言ったんだ?確かに格はウルの方が高そうだけど。
まさか脅したりしてないよな?
「どうすんだよ。エルフの人達だってお前が居なくなったら不安になるぞ」
「それは大丈夫だよ。契約したから必ず契約者と一緒に居ないといけないルールは無い。僕は僕で仕事があるしそこは彼女も認めてくれた、だから君が力を貸してほしい時は協力すれば問題ないさ」
問題ないならいいけど……
どっちにしろばらしちゃいけないスキルがまた増えるのは決定か。
「それじゃ向こうに戻って契約をしよう。ここでこっそり契約する訳にもいかないからね」
「え~皆の前ですんのか?暴動起きない?」
「起きないよ。逆に歓迎されるかもよ」
されたくない。
面倒臭い。
しかし精霊王は嫌がる俺を無視して契約を無理やり進めた。
エルフの人達になんか言われたりしないかな~と思ったがなぜか受け入れられた。
俺は疲れた笑みを浮かべながら手を振って宿に帰った。