肉を卸さず骨と皮だけを卸すと周りからブーイングが来たが無視して外に出た。
 食うのは俺らだけだ。
 余った時は卸してやってもいいが。

「リュウさんどこで食べるんですか?私お腹減っちゃって」
「すぐそこの森で食おうと思ってな、まぁあれだ、炭火用意したからそこで食おう」
 あらかじめ準備しておいた場所に向かう。
 そこにはエルフの人たちに頼んでおいた野営セットがあった。

「ここでお肉を食べるんですか!」
「そうそう、どうせなら景色が良い方が良いだろ?」
「それよりお肉‼」
「はいはい、今焼くからな~」
 仕舞ってた肉を取り出し焼いていく。
 特にこれといった調理法はないから適当に焼いていく。

「リュウ様、それではせっかくのお肉が勿体無いです。私が調理します」
「ってなんで出て来てんの!」
「どうせなら美味しい方が良いと言っていたではありませんか」
「そのリュウさんその方は?」
 突然出てきたティアマトさんに戸惑いながらアリスが聞いてきた。
 さて、どう言ったものかな?
 仲間って言っても簡単に信用してくれるか?

「初めまして、私はお付きのアオイと言います。今までは別な方面からリュウ様をお支えしていました」
「あ、どうも、アリスです」
 自然と挨拶したティアマトさんについ流されたアリス、すげーなティアマトさん。
 こうなるとうちの嫁たちも出てきそうだが覚悟しておこう。
 あとアオイって何?

「リュウさん。あれって奥さんとかですか?」
「違うってあの人は前の国でお世話になった人」
 小声で俺に聞いてくるアリス。
 余計なことは言わないでこのぐらいなら問題ないだろ。
 それにティアマトさんの料理が美味いのは知ってるし。

 それといつの間にか獣状態で出てきたリルとカリン、あと見慣れない小さなドラゴンが足元にいた。
 小さなドラゴンはピンクで可愛らしい。
 まさかこのドラゴン、オウカか?
 ドラゴンはカリンとは逆の肩に乗って顔を俺の顔に擦り付ける。
 うん。これ多分オウカだ。

「リュウさん今度の子達は?」
「俺の従魔だよ。旅の最中で出会ってそのまま仲間になったんだ」
「赤ちゃんとは言えドラゴンを従魔にできるなんてやっぱりリュウさんは只者じゃなかったんですね」
「まぁ…な」
 アリスの赤ちゃん発言でオウカが軽く威嚇してるがアリスは全く気付かない。
 その目線は肉に釘付けだった。
 アリス、腹減ってるのは分かったから取りあえず涎拭け。

「皆様、料理ができました。お取りください」
 その一言で飢えた獣のように群がる情報部達!
 そこまで食いたかったかお前ら!?

「うう、リュウさん。こんな美味しいお肉初めてです。ありがとうごじゃいます……」
 食いながら喋ってるせいで最後変だったぞ。
 しかもほかの連中も泣きながら食ってるし!?

 何言ってるか耳を澄ましてみると、「久しぶりの肉だ……」「お肉なんていつぶりだっけ?」「ハグハグ」ってな感じで夢中になって食ってるし。
 あとそこ、ボアはちゃんと焼かないと腹下すぞ。レアで食うのは止めておけ。

「お嬢様達もお食べ下さい」
 ティアマトさんはリル達に肉を渡してた。
 いつもすみませんねティアマトさん。

「リュウ様もお食べ下さい。無くなってしまいますよ」
「ありがとティ……アオイさん」
 なぜか言い直すととてもいい笑顔で返された。
 なんでだ?

『お祖母様の真名はアオイなのだ。リュウに真名を言われたのが嬉しかったと思うのだ』
『へ~、ティアマトさんの真名ってアオイだったのか。てか真名をそう簡単にばらしていいのか?』
『リュウなら問題あるまい。既に魂の契約は済んでいるのだし今更の問題なのだ』
 ふ~ん、なら今度からアオイさんとでも呼んでみるか。

「あの、今日はありがとう。素敵なパーティーに誘ってもらって」
「ん?ああいえいえ、そんな大層なもんでもありませんよ」
「いえ個人的にもアリスの事でお礼を言いたくて」
 急にお礼を言ってきたアリスの先輩さん、この気配は多分アリスと一緒にいた人か。
 女性だったのか。
 アリスと違って女性らしい姿と短い茶髪、年は二十代半ばってところか?
 感じの良いねーちゃんて感じ。

「特にお礼を言われるような事はしてませんよ」
「その特にが嬉しいのよ。あの子私たち以外で話す機会はまるでなかったから」
「かなり頭抱えてたように見えましたが」
「当り前よ。いきなり私達が何者か話しちゃうんだから。頭抱えるわよ」
 笑いながら言うこの人は本気でアリスの事を心配しているとわかる。
 今もアリスから目を逸らさない。

「あの子、元々影が薄いってのもあるけど基本引っ込み思案だから」
「そうなんですか?」
「ええ、初めて会った時は本当に子供としか思えなかったぐらいだから」
 へ~よくツッコミ入れてくるイメージしかないから意外だ。

「だけど貴方のおかげで自己主張が出来る子になってきたから私は嬉しいのよ」
「あ~、はい」
 それ多分ツッコミパワーだ。
 ある意味常識外の俺がいたせいだ。

「貴方気を付けた方が良いわよ。最近の勇者様は暴走気味だから」
「暴走?それと俺に何の関係が?」
 いきなり話が変わったが、ティアに気を付けろって?

「貴方の従魔の事よ。最近の勇者様は魔物退治にかなり力を入れてるからね。貴方が見てない内に殺されちゃうかも」
「気を付けます」
「それに最近伝説級の魔物と一戦やらかす可能性があるからさ」
「……どの魔物でしょうか」
 内容によっては止めないといけない。
 もしそれが俺のダチに関係するものだとしたら。
 他はいい、とにかく俺のダチとティアがぶつかるのは見たくない。

「狙いはフェンリルとガルダ。見つかり次第作戦を立てて討伐する気だって」
「……………」
「貴方何か関係あるの?伝説の魔獣と」
「……少し見ただけですよ。なぜ勇者がフェンリルを?」
「なんでもフォールクラウンで危険な魔物がいるって聞いて躍起になってるそうよ。それがたまたまフェンリルとガルダだっただけ」
 ……ドワルの野郎、ティアに適当な事ぬかしやがったな。
 恐らく危険と聞いたのはロウの試し切りの時にした模擬試合のことだ。
 その時にドワルから聞いたのか?いや、あいつにとって俺はレア素材を持って来るいい客だ。
 そのドワルが言うとは思えないから町の噂か?
 まさか一か月たった今でもまだそんな事言ってる連中がいるとは思ってなかった。

「……貴方面白い情報を持ってそうね。私にくれない?」
「欲しかったら国と勇者を裏切りな。そうしたら教えてやる」
「それはリスクが大き過ぎるから止めとくわ。あ~あ面白そうなのにな~」
 そう言ってまた肉を食いにティアマトさんの所に行った。

『リュウ……』
『大丈夫だリル。俺が絶対阻止する』
『うん……』
 リルの不安そうな声に俺は気を引き締める。
 もしどちらか一方だけを選ぶことになったら俺は……