時は少々遡り裏ギルド。
黒牙の狼のメンバーがティターニアの契約者の捕獲が失敗した事が伝わった。
黒牙の狼以外の裏ギルドは黒牙の失態を笑っていたが黒牙のメンバーは突然現れた男を警戒していた。
殺されたメンバーとは魔道具による情報共有によって、一人の冒険者に瞬殺されたのを確認していたからだ。
「今すぐスパイにこの男の情報を送るように連絡を入れろ」
黒牙のギルドマスターが言った。
裏ギルドは表ギルドの上位冒険者は完全に把握しているし、将来的に脅威になる存在も把握していたがあれ程の実力者はマーク出来ていなかった。
「情報来ました。マスター、奴はフリーの冒険者のようです。名前はリュウ、カード情報では職業調教師となっています。」
黒牙のギルドマスターと上位メンバーは奴の存在を確認するため表ギルドでスパイ活動をしているメンバーに確認の連絡を送ったが表ギルドに奴は登録されいない。
しかし売買書から奴の情報が出た。
名前はリュウ、職業は調教師、と言う強さとは矛盾した情報が出てきた。
「調教師だと。奴らはそこまで強いわけではないが調教師に負けるほど弱くもないはずだ」
「はい、ですがこれを見てくださいマスター。この国ではポイズンスパイダーを二十匹も納品しています。更に調べさせたところ、フォールクラウンでは『鉄鎧鳥《アイアンバード》』や鉱山特有のリザードマンなど多くの魔物が狩られ納品されています」
「……ただの調教師ではないという事だな」
ポイズンスパイダー二十匹だけではなく、硬い鉱山のリザードマンや飛行する厄介なアイアンバードまで一人で仕留めたとなると実力は計り知れない。
「おいおい、その情報は本当に正しいのか?いくらなんでもポイズンスパイダーやアイアンバードを一人で仕留めるなんざ無理だ」
「しかし実際に仕留める瞬間を見た者がいるらしい。どこにでもある剣に『覇気』をまとわせ首を切り落としたそうだ。しかもそれを見たのはフォールクラウンのギルドマスターだ」
「おいおい、マジかよ。マスターどうします?そんな奴がもしも今夜の事で俺達に報復する気があったら大問題ですぜ。エルフ以前の問題だ」
マスターは思考を巡らせる。
今回の件は明らかに賽を投げたのはこちらだ。
アイアンバードを一撃で仕留める奴に勝てたとしてもこちらの損害の方が大きいのは目に見えている。
「……恐らく、調教師のスキルを所有しているだけで本職を隠しているのだろう」
「ん?マスターそんな事が出来るんですかい?」
「出来たはずだ。しかし複数の『職業』を得るのはかなり無駄な行為になるから誰もしないだけだ。特に俺たちみたいな連中はな」
「確か複数の『職業』を得た場合、半端な実力になるから。でしたっけ?」
「そうだ、複数の職業を得るよりさっさと上位職にクラスアップした方が各能力や特性が上がりやすいからな。大体は引退した騎士や魔術師が趣味のために『園芸家』や『彫刻家』を取得するぐらいだ」
「だが奴はそんなに老けてなかったよな?」
「そうですね。ですがマスターの予想が一番近いと思います。恐らく戦闘に特化した職を隠すために『調教師』を所得していると考えた方がいいでしょう」
「そうだな、若い連中にもきつく言っておく。調教師だと思って殺されたらマスターの逆鱗に触れる」
恐らく調教師のスキルを前に出し、本職と言うべき職業を隠しているとギルドマスターと上位メンバーは決定した。
「問題は今回の共同作戦をどうやって辞めるかですが……」
「それは俺がやっておく。奴がエルフ狙いなら寧ろこの状況を使ってエルフを手放した方がいい」
「捨てちまうのかマスター?」
「戦力の増加に、と思ったが仕方ねぇ」
口の上手い黒牙のギルドマスターは今回の作戦から撤退、殺されたメンバーの補充と金銭の補填のためを理由に撤退する。
その際黒牙の所有するエルフを全て他の裏ギルドに渡す事で交渉は成功した。
この時の選択が彼ら裏ギルドの運命を分けたのは言うまでもない。
撤退しなかった他の裏ギルド連合は今回の作戦のため昼間に準備を進める。
準備中にも彼らの欲は止まらない。
女性のエルフ捕まえたらどうするか、売った金でどうするかなど、ろくでもない話をしていた。
彼らの職業は『盗賊』『暗殺者』などのあまり直接戦闘が得意と言えないが、彼らは夜目がきいたり、自身を隠れ潜むのに特化している。
なので彼らの作戦のほとんどは強襲になる。
不意打ちで毒付きの短剣で相手を切ったり心臓や頭を狙った攻撃ばかりになるが、今回は麻痺毒による捕獲になっていた。
強力過ぎない麻痺毒で相手の自由を奪う戦法は簡単に言ってしまえば相手に紙で切れた程度の傷でも負わせれば相手は麻痺状態になり、あとは牢付きの馬車に入れてしまえば自分たちの勝ちだと考えていた。
奴隷化したエルフから無理やり聞き出した情報では、エルフの村は霧の結界に守られているが同族を連れた場合は機能しない事と、エルフの村は百人程度の村だという事。
その五倍の数で強襲を仕掛け、確実にエルフを捕獲し尽す事が出来ると考えていた。
普通ならこの作戦で十分通用するが彼らはまだ知らない、大森林の強者が今か今かと待ち受けていることに。
黒牙の狼のメンバーがティターニアの契約者の捕獲が失敗した事が伝わった。
黒牙の狼以外の裏ギルドは黒牙の失態を笑っていたが黒牙のメンバーは突然現れた男を警戒していた。
殺されたメンバーとは魔道具による情報共有によって、一人の冒険者に瞬殺されたのを確認していたからだ。
「今すぐスパイにこの男の情報を送るように連絡を入れろ」
黒牙のギルドマスターが言った。
裏ギルドは表ギルドの上位冒険者は完全に把握しているし、将来的に脅威になる存在も把握していたがあれ程の実力者はマーク出来ていなかった。
「情報来ました。マスター、奴はフリーの冒険者のようです。名前はリュウ、カード情報では職業調教師となっています。」
黒牙のギルドマスターと上位メンバーは奴の存在を確認するため表ギルドでスパイ活動をしているメンバーに確認の連絡を送ったが表ギルドに奴は登録されいない。
しかし売買書から奴の情報が出た。
名前はリュウ、職業は調教師、と言う強さとは矛盾した情報が出てきた。
「調教師だと。奴らはそこまで強いわけではないが調教師に負けるほど弱くもないはずだ」
「はい、ですがこれを見てくださいマスター。この国ではポイズンスパイダーを二十匹も納品しています。更に調べさせたところ、フォールクラウンでは『鉄鎧鳥《アイアンバード》』や鉱山特有のリザードマンなど多くの魔物が狩られ納品されています」
「……ただの調教師ではないという事だな」
ポイズンスパイダー二十匹だけではなく、硬い鉱山のリザードマンや飛行する厄介なアイアンバードまで一人で仕留めたとなると実力は計り知れない。
「おいおい、その情報は本当に正しいのか?いくらなんでもポイズンスパイダーやアイアンバードを一人で仕留めるなんざ無理だ」
「しかし実際に仕留める瞬間を見た者がいるらしい。どこにでもある剣に『覇気』をまとわせ首を切り落としたそうだ。しかもそれを見たのはフォールクラウンのギルドマスターだ」
「おいおい、マジかよ。マスターどうします?そんな奴がもしも今夜の事で俺達に報復する気があったら大問題ですぜ。エルフ以前の問題だ」
マスターは思考を巡らせる。
今回の件は明らかに賽を投げたのはこちらだ。
アイアンバードを一撃で仕留める奴に勝てたとしてもこちらの損害の方が大きいのは目に見えている。
「……恐らく、調教師のスキルを所有しているだけで本職を隠しているのだろう」
「ん?マスターそんな事が出来るんですかい?」
「出来たはずだ。しかし複数の『職業』を得るのはかなり無駄な行為になるから誰もしないだけだ。特に俺たちみたいな連中はな」
「確か複数の『職業』を得た場合、半端な実力になるから。でしたっけ?」
「そうだ、複数の職業を得るよりさっさと上位職にクラスアップした方が各能力や特性が上がりやすいからな。大体は引退した騎士や魔術師が趣味のために『園芸家』や『彫刻家』を取得するぐらいだ」
「だが奴はそんなに老けてなかったよな?」
「そうですね。ですがマスターの予想が一番近いと思います。恐らく戦闘に特化した職を隠すために『調教師』を所得していると考えた方がいいでしょう」
「そうだな、若い連中にもきつく言っておく。調教師だと思って殺されたらマスターの逆鱗に触れる」
恐らく調教師のスキルを前に出し、本職と言うべき職業を隠しているとギルドマスターと上位メンバーは決定した。
「問題は今回の共同作戦をどうやって辞めるかですが……」
「それは俺がやっておく。奴がエルフ狙いなら寧ろこの状況を使ってエルフを手放した方がいい」
「捨てちまうのかマスター?」
「戦力の増加に、と思ったが仕方ねぇ」
口の上手い黒牙のギルドマスターは今回の作戦から撤退、殺されたメンバーの補充と金銭の補填のためを理由に撤退する。
その際黒牙の所有するエルフを全て他の裏ギルドに渡す事で交渉は成功した。
この時の選択が彼ら裏ギルドの運命を分けたのは言うまでもない。
撤退しなかった他の裏ギルド連合は今回の作戦のため昼間に準備を進める。
準備中にも彼らの欲は止まらない。
女性のエルフ捕まえたらどうするか、売った金でどうするかなど、ろくでもない話をしていた。
彼らの職業は『盗賊』『暗殺者』などのあまり直接戦闘が得意と言えないが、彼らは夜目がきいたり、自身を隠れ潜むのに特化している。
なので彼らの作戦のほとんどは強襲になる。
不意打ちで毒付きの短剣で相手を切ったり心臓や頭を狙った攻撃ばかりになるが、今回は麻痺毒による捕獲になっていた。
強力過ぎない麻痺毒で相手の自由を奪う戦法は簡単に言ってしまえば相手に紙で切れた程度の傷でも負わせれば相手は麻痺状態になり、あとは牢付きの馬車に入れてしまえば自分たちの勝ちだと考えていた。
奴隷化したエルフから無理やり聞き出した情報では、エルフの村は霧の結界に守られているが同族を連れた場合は機能しない事と、エルフの村は百人程度の村だという事。
その五倍の数で強襲を仕掛け、確実にエルフを捕獲し尽す事が出来ると考えていた。
普通ならこの作戦で十分通用するが彼らはまだ知らない、大森林の強者が今か今かと待ち受けていることに。