ゴミ箱から出るのを待って嬢ちゃんは言った。

「どうか情報だけでもお願いします」
 まさかのリピートかよ!

「うう、だってあんなセリフをゴミ箱の中で終わらせたくありませんもん」
「それは分かるが……」
 どうしよ、哀れみしか出てこねぇ。

「それで協力していただけますか?」
「まぁ……俺の依頼と被る部分もあるから構わないがそっちの目的は何だ?」
「はい!世界平和です!」
「やっぱ止める」
「何でですか!?立派な目的ですよね?」
「そんなフワッとした理由で組むほどお気楽な脳ミソしてねぇよ」
「それは最終目標です!今回は精霊の乱獲をどうにか止めるのが目的です!」
 こいつ、いじればいじる程情報を出すが本当に情報部の人間か?
 後ろの方で相方っぽいのが等々頭抱え始めたぞ。

「まぁいい。とにかくそっちの情報を寄越せ、情報の共有は大事ぐらいは習ったろ?」
「え、そ、それはちょっと……」
「なら俺も喋らない」
「うう、規則なんですよ……」
 そっか規則は守ってたのか。

「てか情報部って、こう話術でどうにかするイメージがあるがお前出来ないのか?」
「私、影の薄さを使って見張りや盗聴ばっかりだったので話術はちょっと……」
 残念すぎる。

「よくそんなんで情報部に就職できたな」
「私、運と隠れる技術だけはあるので」
「その運も尽きたように見えるがな」
 嬢ちゃんはへこたれるとアホ毛も弱った様に垂れた気がする。
 嬢ちゃん自身はともかく、情報部とつるむのは悪い選択ではないはず。
 嬢ちゃんを窓口にして情報部から情報を引き出すぐらいには役立つか?

「あの貴方はどういう方ですか?普通の冒険者には見えませんが」
「ん?ああ俺はただの調教師だよ」
「え?調教師の方がこんな危険なことに首突っ込んでたんですか!?今すぐ止めた方が良いですよ!」
「問題ない、俺そこそこ強いから」
「調教師が強くなったって精々オークとかゴブリンとか弱い魔物に勝てる程度ですよ!」
 ……調教師ってそこまで弱いイメージしかないのか。
 そりゃー馬とか家畜とか育ててるイメージ強いのは分かるけど嬢ちゃんよりは確実に強いぞ。

「なら俺じゃなくて別な冒険者に協力を頼むか?ぜってー誰も協力するとは思えないけどな」
「それは……」
「なら話せる所まででいい。相方にでも聞いてこい」
 俺は特に目線を変えるはしなかったが、嬢ちゃんは目を泳がせた後右耳のピアスに触れた。
 多分魔術具で念話に近い効果があるんだろう。
 会話中なのか、ただ手を当てたまま動かない。

「……許可が出ました。全ては話せませんが一部情報をお話ししても良い、と返されました」
「なら何処かに行こうか。立ち話もなんだしな。どこか移動するか?」
「ならどこかの宿がいいです。上の方から出来るだけ一緒に行動するようにと言われたので」
 どっかの宿か、あと出来るだけ一緒ってのは困ることになるかもしれないな。
 今夜奴隷商からエルフを購入する時まで一緒に行動するとなると問題が起きる可能性が高い。
 エルフの方も人間は邪魔だと思うし。

「まあいい。お互いプライベートな所と仕事の邪魔をしないなら俺は構わない」
「了解です。では宿に行きましょう」
「俺まだ宿取ってないんだけど?」
「先輩たちからこの宿に行けと指示がありました。その宿なら問題無いでしょう」
 情報部が指示した宿ね、俺には不利な気がするけど今は大人しくしておくか。

 嬢ちゃんを先頭にその宿に向かう。
 嬢ちゃんは普通に歩いているように見えるが確かに音があまり出ない歩き方、そして体の軸が動かない歩き方をしていた。
 一応情報部に属してるのは本当みたいだな。

「あの、お話しいいですか?」
「ん?何だ」
「そのなぜ調教師のあなたがこんな危険なことを?」
「ただの依頼だよ依頼。一仕事終わった後にこの仕事を頼まれてな、特に次の予定も今すぐって訳でも無いから受けてやっただけ。それと俺のことばかり聞いてくるのはフェアじゃない。そっちのことも何か話せ」
「えっと個人的な話でしたらお答えできますが……」
「なら何でお前はこんな仕事してんだよ。直接戦闘は少なくても危険なのは変わらないだろ」
 子供と見間違えるような体形の女がこんな暗い仕事を好んでするとは思えない。

「えっと、お恥ずかしながら最初は勇者様への憧れです。私より小さい女の子が世界のために頑張っている、と思うと少しは世界のためになる仕事がしたいと思ったときにこの職を見つけまして。あとはそのままずるずると頑張ってます」
 あはは、と苦笑いする嬢ちゃん。
 ティアの影響を受けた人間の一人か、ならあの事を聞いておかないと。

「今の勇者は魔物を絶滅させようと思っているそうだがお前もその意見に賛成なのか?」
 ずっと聞いてみたかった。
 俺は知性ある魔物に鍛えられてきたから絶滅させる必要はないと思っている。
 けど普通の人間から見たらやはり絶滅すべき存在なのだろうか?
 嬢ちゃんは考えるように手を顎に置くがどうだ?

「私にはよく分かりません。魔物全てが悪い子なのか私には判断できないので情報をもっと集めてから判断しようと思います」
 俺に振り向いて能天気な顔をするこいつに気が抜けた。
 まぁ良いか、と思うことにする。
 魔物をよく知らない人間の方が多いのは目に見えているのだからゆっくりとティアと会うまでに考えておこう。

 そんな風に思っていたら後ろ歩きをしていた嬢ちゃんはマントの裾を踏んで後頭部から倒れて泣いていた。