エルフの村を目指して数分。

「この木の根っこのせいで歩きづらいな」

 大森林南側は鬱蒼とした特に木々が多い場所だ。
 人が入り込む余地が全くないせいで木の根っこが重なっている場所も多く、岩場とはまた違った歩きづらさがある。
 手入れされてない森がここまでキツいとは知らなかった。

「リュウ様。この木々は中心部に近い場所のみです、エルフの村は森の中間付近の浅い場所に有ります。もうすぐ歩きやすくなります」
 ありがたい情報だ。流石に根っこの上をずっと歩くのは正直大変だと思っていた。

 しかし歩き馴れない俺より苦戦しているのがいた。

「だってよオウカ!」
「聞こえていたのだ!……はぁ……はぁ」
 オウカはまだ子供なので木の根をよじ登るように上がっていた。
 最初は危なっかしいので手伝おうとしたが「これも修練です」とティアマトさんに止められた。
 オウカも俺に実力で近付きたいと言っていたので文句言わずに頑張っている。

 ちなみにリルは根っこの上をピョンピョン跳んで攻略、カリンは木の間を飛んで攻略、ティアマトさんは俺と同じく歩いていた。

「それにしても俺、南側は初めて来ました」
「普通の方は皆そうですよ。普段は上位精霊がここ周辺に結界を張っていますから」
 そう普段はここいら一帯は霧状の結界が張ってあり、中心部に近付けないようになっている。
 つまりこの辺に精霊たちの住みかがあると言っているようなものだが、まあ防衛のためなら仕方ないか。

「精霊って本当に自然の中から生まれるって本当ですか?」
「そのようです。あくまで聞いた話ですが自然界に存在する木々や水、風や地面から生まれるそうです。話を聞かせてくれた本人もよくは分からないようですが」
 ふーん。俺も分からん。

 俺はしょせん人間で二親いないと生まれることすら出来ない存在だし、そんな自然界の幽霊みたいなのは全く分かりません!

 さらに少し歩くとようやく森が開けてきた。
 多分ここが中間か、となればエルフの村ももうすぐなはずだ。

 森が開けたおかげで俺たちはようやく地面の上を歩けた。
 オウカも息を上げていたがしばらく歩くと落ち着いている。

「ティアマトさん。エルフの村は中間の森の浅いところって言ってましたよね」
「はい。ですのであと少しですよオウカ」
「わかったのだ」
 一番体力を使っていたオウカを気遣うティアマトさん。
 しかし普通に終われないのが俺たちである。

 緑色の蝶のような翅をもった精霊がどこからか現れて俺の袖を引っ張り出した。
 遠くから犬の鳴き声が聞こえるのはどうも気のせいではないらしい。
 精霊自ら助けてほしいと来たよう。
 多分その犬が精霊の一種なんだろう。

「精霊じきじきの救援願いっぽいから行ってくる」
「私達はどうする?」
「先にエルフの村に行っててくれ。相手は人間みたいだし簡単に片付けられるよ。あと相手がエルフの村を捕捉してるかもわからないから一応警戒しといて。じゃ、行ってくる」
「「「「行ってらっしゃい(ませ)」」」」
 皆からの行ってらっしゃいを聞いて俺は走る。

 精霊が案内する必要もなく、目的地に到着した。
 そこには二人の男が頭に石を乗っけた犬を追い詰めていた。
 俺は二人の頭を切り落とす。

 あっさりと死んだ二人の服を見ると何かの紋章が描かれた服を着ていた。
 まだ何の紋章かは分からないがヒントぐらいにはなると思ってそこだけ破って仕舞った。

 精霊は犬を安心させるように犬と仲良くする。
 しかしまだ鳴き声は聞こえる、おそらく一点に集められている。
 多くの鳴き声が集まっていて気に入らない。

 俺はすぐそこに行くと荷馬車が三台あった。
 じっと見ると精霊だけではなく、エルフの女子供も馬車の一つに集められている。

『魔力探知』で調べると見張りは六人、狩りを行っているのは十人か。
 仕方無いので馬車に閉じ込められているのは後にする。

 始めに狩りを行っている連中を全員狩る。
 二人一組で行動してるので五回繰り返す。
 殺してる間に気が付いたのはこいつら全員同じ紋章を付けてた事、下手すれば犯罪系ギルドが関わっているか、どっかのとんでも貴族が関わってくる可能性がある。

 そうなったら俺一人じゃどれだけ守っても意味が無い。
 とにかく今は目の前の連中を助けるか。

 俺は馬車を守る見張りを六人さっさと殺す。
 死体はお子さまに見られないように消し飛ばしておいた。
 流石にお子さまにグロいのは見せられん。

 まず囚われたエルフ達の檻の鍵をぶっ壊す。
 エルフ達は俺を見てビビってたので勝手に出てくるのを待つ。
 その間に精霊達の檻、と言うか虫籠?みたいなのを壊して逃がす。

 精霊はとにかく手当たり次第と言った感じで、虫っぽいのや、獣っぽいの、爬虫類っぽいのと様々な精霊が捕まっていた。
 もちろん獣っぽいのは鉄製の檻に入ってたが。

「ほれ、さっさと行きな」
 と、言いながら逃がすとエルフの子供が俺を見てた。

「私も……お手伝いします……」
 小さな声で言った。
 俺は見張りから奪った鍵を渡して「もう片方を頼む」と言ったらぺこぺこしながらもう片方の馬車で精霊を逃がし始めた。

 全ての精霊を逃がした後、俺に知らせた精霊が犬と一緒に来た。
 精霊はアクロバティックに飛んで喜んでいるし、犬はキャンキャン鳴いて喜ぶ。

「さてと、エルフの村に行っても大丈夫だよな?」
 一応精霊に聞いたらまた袖を引っ張るので大丈夫なようだ。

 エルフの長老さんには今回の事をどう説明するかな?