龍皇国でしばらくゆっくりした後、俺達は精霊の住みかに行く。
 爺さん達とはここで別れるし、正直もっとゆっくりしたかったのもある。

 けど恩を売っておくって言っちまったし、仕方無い。
 それに精霊王の頼みを無下にする訳にもいかない。

 精霊の住みかは大森林の南側の森だ。
 そこには精霊を崇拝しているエルフも住んでいる。
 エルフはドワーフのように長命な種族のため数は少ないが、ほとんどのエルフは精霊と契約しているので力はあるが、しかしエルフは何故か美形が多いためよく犯罪奴隷商から狙われている。

 男なら戦力として、女なら楽しむために奴隷として買う連中はそれなりに存在するらしい。

 と言ってもエルフは亜人として受け入れられている以上国際法、簡単に言うと基本的に奴隷は借金まみれになった人か、犯罪を犯した人しか奴隷にしてはいけないと言うルールがあるので、それ以外の人間や亜人の売買は禁止されているのだが……

 それを無視して売買するバカはどこにでもいる、と言う事だ。

 あ~面倒臭ぇ。

「面倒臭ぇはないでしょ。自分で恩を売っておくか、って言ったくせに」
 リルが俺に注意する。
 てか心の声を『念話』で聞くのやめて。

「パパ、ダメだよ。約束破っちゃ」
「相手は精霊王だしな」
「反故にした際、どんな事が起こるか……」
「分かってるって。行くし助けるだけ助けて来ますよ」
 全く、別に約束破るとかじゃないのに。

「それじゃ龍皇、爺さん。行ってきます」
「オウカを頼む」
『リュウよ。相手は人間、やり過ぎてはいかんぞ』
「はーい」
 そうだよな、今回の敵は人間。
 同族を殺す事になる可能性大、なんだよなぁ。

「ま、罠に気を付けておけば大丈夫でしょ?」
「私としては勇者に気を付けろ。だがな」
 ……本当にティアは嫌われてるなぁ。
 そりゃ有無を言わさずぶっ殺しに来る相手に好感持てって無理な話だけどさ。

「話は直接精霊王に聞けば良いのか?」
「いや、エルフの村に行ってくれ。エルフの長老が精霊王の代役としてリュウと話すそうだ」
 精霊の住みかには連れて行きたくないってとこか。

「了解。エルフの村は南にどのぐらい歩けばいい?」
「人間の足でおよそ一時間だが、お前達ならそう掛からないだろう」
 そりゃフェンリルとガルダとドラゴンだしね。
 一時間どころか三十分も掛からないと思う。

「それでは皆さんお世話になりました!」
「今度は俺の群れに来いよ」
「儂の村にも来るとよい」
「勇者が来たときは助けてくれ」
 うん。最後の奴以外はオッケー。
 各長老達に別れを告げる。

「リュウよ、オウカと仲良くしてくれ。気に入ったら嫁にしてもよい」
「ドライグ、そこは父としてまだ娘はやれん‼とでも言うべきでは?」
「しかしリュウもなかなかの実力者になっていたし、問題無いだろう」
「もう。リュウ殿、私からもオウカをよろしくお願いします」
「はい。責任を持って護ります。後ティアマトさんにも一言どうぞ」
「「どうせ大丈夫でしょ?」」
「あなた達……」
 魂の眷族になった二人は護らせてもらいます。
 だからティアマトさん、二人から手を離してあげて。二人とも顔青くなってる。

「爺さん達も何かある?」
「儂と言うよりは義息子から一言あるそうじゃ」
 親父さんから?
 なんだろ?

「あーリュウ。お前……強くなったな……」
「えっと、はい」
 なんだこの空気、なんか痒い。
 爺さんが親父さんを小突いて何か言わせようとしてる。

「一度しか言わないからよく聞いておけ。……私もリュウを娘の婿として認める」
「………え」
「………お父様」
「今回の戦いと決闘で力を付けたのは分かった。だから認める。以上だ」
 素っ気ない態度だが認めてくれた。
 これ以上嬉しい事はない。

「親父さんありがとうございます。必ず幸せにします」
 何も言わないがこれは言っておかないといけない。
 そしてリルを大切に、幸せにしないといけない。

「リュウ様、そろそろ参りましょう」
「あ、ちょっとだけ待って」
 そう言ってから爺さんと親父さんに一つずつ渡した。

「これ婆さんと奥さんに渡しといて」
「これは?」
「家族サービスのプレゼント。帰れないから爺さん達から渡しといて」
「中身はなんだ?」
「色違いのスカーフ。婆さんが水色で、奥さんが黄緑だから」
 いつぞやのプレゼントを先に渡した。

「分かった。渡しておく」
 なら後は特に無いな。

「それじゃ行ってきます!」
「行ってきます!」
「行ってくるね!」
「行ってくるのだ!」
「行って参ります」
 こうして五人に増えた俺達はエルフの村に向かって出発した。