次の日はもっと厄介だと思う人達が組手の相手をしくれる事になった。

「何で……何で現役の龍皇とグウィバーさん同時に相手する事になったんだよ!?」
 そう、今日の組手の相手は龍皇夫婦だった。
 しかも2対1で俺がメッチャ不利な状況で。

「娘の頼みだったからな、どんな事でも協力したいと思い。ここに来た」
「お母様との手合わせは私が一番経験しています。なのでアドバイスも色々とできると思いますよ」

 ありがたいけど昨日のオルムさんとの組手でも大変だったのに二人同時にとか大変過ぎる。

「でもリュウよ。お前も出来るだけ強いドラゴンと戦い力をつけたいと言っていただろ?」
「でもなオウカ。これはやり過ぎだと思う」
 正直昨日もかなり疲れたのに今日もこれとかキツい。

「ちなみにオルムさんと龍皇ってどっちが強いんだオウカ?」
「オルム殿の方が強いのだ。ただお父様とお母様のコンビネーションはとても強いのだ」
 二人揃うと力も倍になるみたいな感じかな。

「あ~今日は夫婦コンボにボコボコにされるのか」
 早くもげんなりする。

「リュウ、貴方は私の義息子になるのですからしゃんとしなさい」
「そうだ。リュウは私達の娘婿になるのだから強敵を前にしり込みするようではオウカはやれんぞ」
「あんたら夫婦はどっちの味方ですか‼え、もしかしてティアマトさんからの刺客!?」
 セリフだけ聞くとどっちかって言うとティアマトさんサイドの言葉に聞こえる。

「私はどちらの味方でもない。あえて言うならオウカの味方だ」
「オウカが選んだ選択した事を応援するのが親ですか」
 親バカだ、どこまでも親バカな夫婦だ。

「恥ずかしいから止めるのだ!」
 娘は嫌がってるぞ。親バカ夫婦。

「そろそろ始めましょうか」
「そうだな」
「ええ」
 お互いに構え、2対1の組手が始まった。


『リュウ、どうしたの?』
『パパ何か嫌な事あった?』
 組手が終わって夜。
 俺はリルとカリンを獣状態で抱き締めていた。

 親バカ夫婦のコンボが滅茶苦茶しんどい。
 前にリルとカリンが共闘して俺と戦ったが、本当のコンビネーションと言うものを見せ付けられた。
 俺が龍皇を殴ったらグウィバーさんがすぐ助けるし、その逆もかなりあって俺の体力がガリガリ削れ、結果俺のぼろ負けだった。

 部屋に戻った俺は癒しを求めて獣状態のリルとカリンを抱き締めている。
「龍皇夫婦との組手がきつかった」
『負けちゃたの?』
「はい、情けなく」
『パパなら勝てると思ったけど?』
 カリンよ、それは期待し過ぎだ。
 流石にとんでもドラゴン二体には勝てません。

『リュウって身内には全力で戦ってないよね』
「どういう事だリル?」
 俺本気で戦ってだぞ?

『だってリュウは身内と戦う時傷付かないように手加減してる』
『あ、それ分かる!パパって私達とかオウカちゃんと戦うに思いっきり叩かないよね』
「それって組手の時の話だよな」
 俺普通に殴ってたと思うんだが……

『無意識なんでしょ。大事だから傷付けたくない、大切だから壊したくない。って心のどこかで思ってるんでしょ』
 それは……あると思う。
 そりゃ大切な嫁で家族のリルやカリン、爺さんや親父さんを殺す気で殴れない。
 多分それが手加減になっている気がする。

『悪い事じゃないけど今回みたいに身内の喧嘩の場合すぐ負けるよ』
 リルがそう締めくくった。

「甘えたい気分の時に言わないで欲しかった」
 これじゃ甘えられん。

『じゃあこのまま一緒に寝よ。パパも安心出来るでしょ?』
『それもいいわね。リュウも構わないでしょ』
「全く問題無い」
 嫁と一緒に寝る。
 何処に問題があるだろうか。
 いや、無い。

「それじゃお休み」
『お休み』
『お休みなさーい』
 リルとカリンも言って寝る。

 俺は少し考えてみる。
 大切な誰かに思いっきり殴った記憶は……ダハーカとの一戦か?

 そりゃダチになったのは戦いの後だったし、会ったばかりはそんな感情はなかった。
 殺しあっている内に気に入り、終わった後ダチになった。

 ……俺はダチになりたかった奴と殺しあっている。
 ……たまにはドンとぶつかってみるか。