さて大雑把な褒賞は決まったので少しゆっくりする。
 しかし褒賞ねぇ。

 そりゃダハーカ相手に頑張ったよ俺、でも最後はリルとカリンに手伝ってもらったしなぁ。
 ゆっくりしてる時もリルとカリンは俺に添い寝をする。
 寝てはいないがとにかく今はくっついていたいのだろう。
 そんな二人を抱き寄せて頭を撫でる。
 これが一番落ち着く。

「ねぇねぇ、私達にも褒賞ってあるのかな?」
 カリンが急に言ってきた。

「何か欲しい物でもあるのか?」
「欲しいって言うよりこの国でいろいろ見て回りたいなって思って」
「いやそのぐらい褒賞無くても出来るだろ」
「だって皆私を見るとビクビクして面白くないんだもん」
 あ~。それってあれだ。
 オウカが言ってた天敵の話だ。

 やはりと言うか当然と言うかガルダはドラゴン達に恐れられてる。
 種族の特徴としてドラゴンや蛇を好んで食べると言われる存在が恐く無いはずがない。
 せいぜい恐がらないのはティアマトさんや龍皇クラスの大物達だけで、ドラコ・ニュートは恐いはずだ。
 更に言ってしまうとダハーカの眷族を焼き殺していたのを見ていれば余計恐いと思うのは当然だと思う。

「まぁそれは長い目で見てもらうしかないだろ」
 そう言ったが不満を隠さないカリン。
 仕方ない。

「リル、カリンちょっとどいて。渡す物があるから」
 そう言って部屋にあった机の引き出しを開ける。
 その中から二つリルとカリンのプレゼントを取り出した。

「はいこれ、プレゼント」
「え?」
「ん?」
 あれ?反応が鈍い。
 おっかしいな~もっとこう喜ぶイメージだったが実際は違うもんなのか?

「これ、貰っていいの?」
「そりゃあげるために買ったわけだし」
「私も?」
「当たり前だろ?」
 あれ?物を贈るのは人間限定だったのか?
 でも店員さんとか普通に対応してたしな……
 何だかいそいそと開ける二人。

「あ、スカーフだ……」
「私はリボン……」
 固まる二人。
 あれ?失敗した?
 いやさぁ女の子に贈り物なんて初めてだからさちょっとは失敗するのも覚悟してたよ、でも固まるほど失敗するってどういうこと?
 そんなにセンスないか!

「リュウ、これ巻いて。つけ方わかんない」
「私も、今まで人化のついでで付けてたからよくわかんない」
 大爆死‼
 付け方わかんない物を贈るとか大爆死じゃん‼
 ああああぁぁぁぁぁぁぁ。店員さんごめん、大爆死しました。

 でも一応店員さんにスカーフの巻き方とかリボンの付け方は教わっていたので、ちょいと不格好な気もするが何とか付けた。
 そのまま二人は部屋に備わってた姿鏡の前でじっと見ていた。

「リュウ、似合ってる?」
「パパ私は?」
 何か期待した瞳、これはあのセリフしかないだろ。
 ちょいと正面からいうのは気恥ずかしいが。

「リル、カリン二人とも綺麗だよ」
 言い終わったら思いっきり抱き付いてきた!

「リュウありがとうね!大事にする‼」
「パパありがとう!ずっと着けてるね‼」
 良かったぁ~。
 爆死してなかった。
 しばらく固まってたからてっきり大爆死したのかと思ったぞ。

「喜んでもらえてよかったよ。ただ次はもう少し早めに反応頼む。後カリン、着けっ放しは髪もリボンも汚れたり痛むだろうから寝る前は外せよ」
「はーい」
 あ、これしばらく着けてそうだ。
 ま、そのぐらい喜んでもらえたなら男冥利につくがな。

「失礼します。リュウ様、ドライグ様がお呼びです」
 復活したティアマトさんがいた。
 たぶんお仕事状態なら大丈夫だろう。

「今行きます。ほらお前ら少し離れろって」
「やだー」
「私もー」
「後でいっぱい愛でてやるから少しだけ我慢しなさい」
 それでも離れなかったので無理矢理ひっぺ返してからティアマトさんについていった。

「それで呼ばれた理由は?」
「褒賞についてのご相談だそうです。ドライグ様は褒賞として爪をお渡しする予定だそうです」
「ちなみに誰の爪なんですか?」
「様々な龍族の爪を集めたので実際に見て決めてほしいのだと申しておりました」
 龍の爪ね、効果とかどんなもんなんだか。

「爪のサイズとか分かりますかね?」
「どれほどの大きさをご所望でしょうか?」
「できれば1mぐらいは欲しいですね」
「わかりました。聞いてみましょう」
 そして龍皇の所についた。

「リュウか、一応様々な龍族の爪を用意したがどれがいい」
 見るからに大量にある様々な爪が柔らかそうなクッションの上に置いてある。

「様々って?」
「種族によって特徴が違うのだ。地龍なら重く硬い、水龍ならしなやかで美しい、風龍は軽く鋭く、火龍はとにかく攻撃重視の爪だな。他にも俺や妻のような特殊個体の爪も用意しておいた」
 確かに一部異様な力を感じる爪がある。
 正直歓迎してない物の方が多い気がするが、前にドワルが言ってた素材の声ってこの事か?

 とりあえず気に入ってもらえてない爪はすべて無視し、俺のことを気に入ってくれる素材を探す。
 そしてそれは意外な事に特殊個体の爪ゾーンにあった。

「これ良いかも……」
 誰の爪かは分からないがこの爪が一番何となく俺に馴染んでくれそうな気がした。
 大きさはざっと90㎝ぐらいの爪、太過ぎず細過ぎず、固過ぎず柔らか過ぎず、手に持てばちょうど良いぐらいに重い。
 初めて持ったのにしっくりとくるこの感覚は爺さんの牙をもった感覚に似ている。

「これが良い。これをくれ」
 すると龍皇とグウィバーがニヤニヤとして笑い、ティアマトさんが顔を赤くする。
 何の反応だそれ?

「それはティアマトの爪だ。よかったな弟子に自身の一部が常にいる事になる」
 あ、あ~そういう事。
 案外龍皇も下世話な話が好きなのね。

「ならいっそのことティアマトさんごと俺にくれよ」
 さらなる爆弾投下!

「どうするティアマト?褒賞としてリュウに付いていくか?」
 多分ここぞと言わんばかりにティアマトさんに攻撃してるな。
 普段からティアマトさんの尻に敷かれてるみたいだし。

「私にはオウカ様を立派に育てる使命があります。ですので辞退させていただきます」
「残念、一緒にいてくれれば色々助かるのに」
 しかしそれは一応予想していた。
 ティアマトさんは常に国のことを一番に考えていたし、そのために頑張ってきたのもちょっとだけだが分かる。

 だから仕方ないと俺はティアマトさんを諦める事にした。