晩飯を食ってた時に龍皇からも連絡があった。
 もうすぐアジ・ダハーカが復活するかも知れないって。

 正直最前線は伝説級の方々に頑張ってもらい俺は溢れた眷族狩りにでも力を注ぎたい。

「リュウ様。そろそろ参りましょう」
 ティアマトさんが迎えに来てくれた。
 昼間に言ったアジ・ダハーカを封印している場所に今から行く。

 勿論王女はお留守番。
 国の外に出て東南にしばらく歩く。

「ティアマトさんはアジ・ダハーカと戦った事はありますか?」
 俺はなんとなく聞いた。

「戦った事はありますがその時は私もまだまだ若輩者でしたので直接戦った事はありません。しかしあれが出した眷族とは戦いましたがあれも強敵でした」
 若い頃のティアマトさんが強敵か、俺本当に戦えるのか?
 しかも本人じゃ無くただの眷族に。
 俺その眷族にすら勝てるかわかんね。

「もう少し自信を持ちなさいリュウ。貴方は強いのですから」
 ティアマトさんが初めて俺を呼び捨てにした。
 意外と悪くない。

「リュウ、貴方の弱点は人間である事では無くその自信の無さです。もし貴方が信じられないなら私が代わりに信じましょう」
 穏やかで、安心感のある声。
 全く、弱っちい人間を信じるとかドラゴンがすることじゃねーよ。
 でもま。

「わかりましたよティアマトさんがそこまで言うなら俺は強いって事にしておきます」
 ティアマトさんは満足そうに頷いた。
 でも向こうの気配はかなりヤバい。
『第六感』が逃げろと警告し続けている。

 あ~あ、本当にこれからこのヤバいのと正面からぶつかって行かないといけないのかね~。
 そしてついに封印している洞窟に近付いた。

 いや本当に嫌な気配しかしないわ~マジヤバいわ~帰りたいわ~。

「ご苦労様」
 扉を監視しているドラコ・ニュートにティアマトさんがねぎらいの言葉を掛ける。
 一部封印が解けるのを遅らせようとしている連中以外が敬礼で答えた。

「邪魔する気もないのでさっさと帰りましょう」
「いえ本当に見て終わりですか。確実に何時扉が開くか聞くためにここに来たのですよ」
「なら俺が言います。この扉直ぐ開きます」
 最初はただ危険な場所に近付いているからだと思ったが。
『第六感』が警告していたのはもうすぐアジ・ダハーカがこの扉から出てくるから。

「今すぐ周りの人達を逃がして下さい。その人達死にます」
 俺はロウを構え臨戦態勢に入った。

「全員待避‼今すぐ此処から逃げますよ!リュウも一緒に」
「いえ俺は残って時間稼ぎます。多分1分持てば良い方だと思うので早く逃げて下さい」
「なら私も」
「いえティアマトさんには眷族の迎撃をお願いします。多分眷族が大量に出てくる可能もあるのでそちらから皆さんを護って下さい。それにティアマトさんの言葉なら皆素直に聞くでしょ?」
 ちょっと笑いながらティアマトさんに言った。

「………全員急いで!道具類はみな置いていって構いません‼リュウ……御武運を。そして直ぐに戻ります」
 ティアマトさんはドラゴンの姿に成りながら周りの人達を国に帰す。
 本当に出来る限り早く帰って来てくださいよ、俺弱っちい………いやここは自信持って迎撃しますか。

 ………ん?スキルが変化してる。
『五感強化』『第六感』が統合して『生存本能』になってた。
 効果は二つのスキルに『限界突破』が追加された感じか?
『限界突破』の効果は自身の脳内リミットの解除?なんだそれ?もしかしてあれか、火事場の馬鹿力的な感じか?

 …………それって潜在能力しだいの運スキルじゃねーか!?

 あーどーしよ、土壇場でスキルを手に入れたのは良いが内容がビミョーだ、これって強くなったのか?

 すると突然扉が光った!
 これって完全に封印が解けた合図か!?
 光が収まると扉が少しずつ扉が開いてきた。

 中から出てきたのは白亜の巨体に何処かの民族衣装の様なズボン、太く長い蜥蜴の尾、一対の……表現し難い翼、そして三つの蛇の様な頭と顔が三つある二足歩行のドラゴンがいた。
 これに勝て?無茶苦茶言うな昔の人は‼無責任過ぎるだろ‼
 ドラゴンは三つの頭をばらばらに動かし何かを見ている。

『お前だけか?私を待っていたのは』
 ………まさか言葉を話すとは思って無かった。

「そうだよ、残りの人達は先に逃げてもらった。あんたが復活した事を知らせるためにな」
 俺も良く言い返せたもんだ。
 てかこれリルと初めて会った時と似てるな。

『そうか、それでお前は何の為に残った』
「時間稼ぎだよ。あんたがここに留ませるためにね」
『………蛮勇だな』
「でもやらなきゃいけないのが今だ」
 俺はずっと構えを崩してない。
 一応何時でも動けるように体勢を保っていた。

「このままお喋りで時間稼ぎ出来るならその方が俺も嬉しいが、そっちはどうよ」
『なら始めよう勇者よ。我が試練を受けるといい』
 アジ・ダハーカが構えた。
 あ~あ負けしか見えない戦いに首突っ込むようになったとは俺も成長したのかね?

「俺は勇者じゃなくてただの調教師だ。ダハーカ」
『そうかそれは失礼した。それと名を教えて貰えるだろうか?』
「リュウだ」
『ではリュウよ。我が試練受けるといい‼』
 ダハーカの周りに攻撃魔方陣が三桁で展開された。

「やってやるよダハーカ‼」
 絶望しかない戦いが始まった。