さて、とりあえず部屋でごろごろしてるが………暇だ。
 とりあえず余った俺達はそれぞれ部屋を与えられ皆近くの部屋にいた。

 更に一人一人に担当の世話役、と言う見張りの人付きで。
 龍皇と爺さん達の会談が終わるまでかなり時間掛かる様だし少し城の中でも見て回るか。

 ………部屋を出ると俺担当の世話役って人がいた。

「お出掛けですか」
「ああ、と言っても軽く城の中を散策するぐらいだが。よく分かんないから案内してくれないか?」
 勝手に入っちゃいけない部屋に入った!とか言われるのも面倒だし。

「分かりました。ではご案内します」
 案外あっさりとしていた。
 ただこの人あの隊長さんより強そうなんだよね。

 動き方に体内の魔力量、かなり高い。
 多分だがこの人はドラゴンだと思う。
 でも誇り高いドラゴンが客人とは言え仕えるか?と言う疑問はあるけど。

「……あまり女性をじっと見ないものですよ。リュウ様」
 おっと、どうもこの人をじっと見すぎてたらしい。

「あーごめん。何かこう言うの慣れてなくてさ、それにあんた純血のドラゴンだろ?良いのか?客人とは言え人間に仕えるのは嫌だと思うが」
「仕事とプライベートは区別していますのでご安心を」
 つまり内心やっぱり嫌なのね。
 なら俺も余り質問とかはしない方が良いか。

「こちらは食堂になります」
 って感じで案内が始まった。


「こりゃ絶景かな絶景かな」
 予想よりかなり広くてデカかった。
 食堂だ、図書館だ、兵士の訓練場だと色々見て回ってる内にデッカい中庭を見ていた。

「お気に召した様でよかったです」
「いや本当にスゲーよ。こんな立派で綺麗な場所は初めてだ」
「それはグウィバー様も姫様も喜びます」
「あれ、お姫様居たんだ」
「当たり前です。グウィバー様には我々配下の者のためにもお子を遺していただきませんと」
 この人意外としたたかだな。
 自分達のために子供遺せって。

「まぁ、国としては大事な事だよな。うん大事、子供大事」
「分かって頂きありがとうございます」
 この人ヤりずれー‼
 それといい加減言っていいかな。

「後質問良いか?」
「何でしょう」
「俺の後ろにずっと居るのは誰だ?」
 俺の『魔力探知』そして『第六感』にずっと反応があって気になっていた。
 一定の距離を保ちながら俺を観察し続けている。
 正直余りイイ気はしない。

「…………」
 黙りか。

「おーい。話ぐらいならしてやるから出てこい」
 後ろをじっと見ていると出てきた。
 ピンクの髪をツインテールに括った女の子だった。

「よく私の気配がわかったな!」
 …………何こいつ、どっかのガキんちょか?

「で俺に何の用だ」
「その腰に付けた物をくれ」
 腰ってまさか俺の脇差のことか?

「くれてやるわけねーだろガキんちょ」
「な!ガキんちょだと!?」
「ガキはガキらしくおままごとの包丁でも振り回してな」
 しっしと手を軽く振る。
 それを見ていた世話役さんがため息を付きながら言った。

「出来るだけ持ちこたえて下さい。今保護者を呼んで来ます」
「あ、よろしくお願いします」
 世話役さんは直ぐに消える様に居なくなった。
 やっぱあの人かなりの達人だよ。

「貴様私を馬鹿にしたな……」
「いいからチャッチャと帰れ。保護者が来るぞ」
「なら無理矢理奪ってやるのだ‼」
 さて、意外な形で意外な奴と闘う事になったがまぁ良いか?
 相手はガキんちょ、軽く遊んでやるか。
 真っ直ぐ突っ込んで来るガキ、俺は軽く避ける。

「てい!」
 こいつの狙いは脇差であることは分かってるから避けるのは簡単簡単。

「ええい、さっさと奪われるのだ‼」
「嫌なこった」
 流石にいくら気に入らないガキでも殴ったりするわけにはいかないからな、とにかく避ける作戦で行ってます。

「う~、さっさと寄越すのだ!」
「あらあら、嬢ちゃんは泣き虫だな。べそかいてんの」
 せせら笑う。

「うがー‼」
「わー、嬢ちゃんが怒った」
 更にせせら笑う。

「もう完全に怒ったのだ‼‼」
「ってちょ‼」
 怒ったからって直接人を狙うか?
 人様の鳩尾狙って来やがった!
 こいつどんだけ我が儘に育ったんだ!絶対こいつの親は馬鹿親だな。気に入らない。

「あんまり馬鹿な事してっと殴るけど良いか?」
「私を殴れる者などお父様とお母様しかいないのだ!」
「のだのだ煩い‼」
 殴れないらしいので思いっきり蹴り上げた。

「え?」
 嬢ちゃんが驚いた様にしてるがまだ全力は出してないぞ。

「きっ貴様~‼私を蹴ったな‼」
「だからどうした?糞ガキを蹴って何が悪い?」
「平然と言わぬものだろそこは!?それに私は決っして糞ガキでは無い‼」
「いや糞だろ。人の物を奪おうとする奴は」
「私は許させるのだ‼」
「俺は許さない」
 いくら言っても聞かないガキはもう潰そう。
 後で親がなんて言ってこようが知ったこっちゃねぇ。

『身体能力強化』『覇気』を発動。

「悪いな糞ガキ。何度言っても聞かないガキは」
 拳を構え、更に魔力を集中させながら言った。

「殴って無理矢理分からせる主義なんだ」
 殴ったと同時に魔力放出で威力を上げる!

「っが‼」
 そのままガキは城にぶち当たった。

「ふー」
 ガキが軽いせいか意外とよくぶっ飛んだな。

「う、うう……」
「あれ?気絶してなかったか。頑丈だな糞ガキ」
「うえーん‼」
 うお‼いきなり泣いた‼

「何で、何で勝てないのだー‼私の方が、私の方が魔力も、血統も優れているのに何故なのだ‼」
 うっわー。血統とか言ってきたよこのガキ。

「血統なんて関係無いだろ。ただ単に今強いか弱いかだけだろ」
 ってこの考え方完全に魔物思考だ。

「こっこうなったら意地でも……」
「あら、意外な結果ですね」
 ……やっぱこの人ただ者じゃねぇ。

 俺の『魔力探知』を掻い潜っていやがる、『五感強化』と『第六感』には反応があったが、それでもあやふやな反応だった。

「あ、あわわわ!?」
 ガキんちょが世話役さんを見て怯え始めた。

「知り合いですか」
 とりあえず聞いてみる。
 するとため息を付いて「私の孫です」と言った。

 って孫!?

「十分保護者じゃん‼」
「嫌です、あんな躾の成ってない孫など」
 これはこれで辛辣なお言葉、なら親は誰だ?

「その、娘がすみません………」
 そう言ったのは。

「グウィバーさん?」
 つまりこいつこの国の王女かよ‼