「ただいまー」
 久し振りの帰宅、いつもと違うのはあの山と皆の表情だった。

『リュウ、リルおかえりなさい。その子は?』
「こいつはカリン、種族はガルダで俺の従魔です」
『は、初めましてカリンです……』
 カリンは鷲の姿に為って俺の腕の中にいた。
 どうもカリンは自分より強い相手にはいつもの天真爛漫さが緊張で出てこなくなる様子、別に嫌になるようなものじゃないんだがな。

『初めまして、リルの母です。リルとは仲良くしてくれてるかしら?』
『お姉…じゃ、なくてリルさんにはいつも優しくして貰ってます』
『そう、これからもリルと仲良くしてね』
『は、はい!』
 とりあえず奥さんとは仲良く出来そうだ。

「それで奥さん。あの山みたいにデカイあれは?」
『あの方はミドガルムズオルム様、お父様のご兄弟なの。ただ今回は少し訳有りのようで……』
 やっぱり何か問題が合ったのか。

「で、内容は?」
『それは今お父様が聞いてるわ。あまり良く無い内容の様子だけど』
 一体どんな内容なんだかな。
 群れ中が不安な気配で充満してるぞ。

『おおリュウ。帰っておったか』
「ただいま爺さん。何か問題が起こったみたいだな」
『うむ。大変厄介な奴が起きかけておるそうじゃ』
 厄介な奴?爺さんが厄介って言うぐらいの化物がいるのか……

「そいつの種族は?」
『奴は『魔賢邪龍《アジ・ダハーカ》』三つの頭に白亜の巨体、更に古今東西あらゆる魔術を使用するとてつもなく厄介な奴じゃ』
 ……………うっわー。
 伝説が厄介って呼ばれる奴も伝説かよ。

 アジ・ダハーカ、邪龍の中でも特に厄介と呼ばれる邪龍。
 大昔どっかの英雄だか勇者だかが退治しようとした時、ダハーカを傷付ければその血肉が眷族を生み出すは、魔術で広範囲攻撃はするはで、仕方無く封印と言う形でしか退治出来なかった本物の化物。

 あえて言うなら爺さんは牙と爪に特化した存在なら、ダハーカは魔術特化のチートスキル持ちだと言える。
 特に何だよ傷付ければ傷付けた分だけ敵が増えるとかそりゃ封印するしかないな。

「で、その化物はどっから来るんだ?」
『龍皇国の近くにある封印の洞窟に居るらしいが、どうも戦力を少しでも多く集めたいらしくてのう』
「てか魔物とドラゴンって仲が悪いって聞いてるが共闘出来んの?」
『ん?そりゃ一体何の事じゃ?特別仲が悪い事はないぞ?』
 え、マジで?
 人間《こっち》側じゃ普通に言われてるだけど。

「ならいいや、それで戦力はあとどのぐらい欲しいんだ?」
『相手が相手じゃからのできるだけ多くと言うだけで決まった数は無いぞ』
 これじゃまるで戦争じゃねぇか。

「……なら大雑把でも作戦は?」
『そこは龍皇に聞くしかないのぉ』
 むー本当に戦力を集めに来ただけか。

『珍しいねぇ。フェンリルが人間と話してるなんてぇ』
 ふと上から声がした。
 上を向くとドデカイドラゴンの頭があった。

『君は何者かなぁ?』
 随分とのんびりしたドラゴンだな。
 こいつがミドガルムズオルム、爺さんの義兄弟。
 ミドガルムズオルムの目玉が俺を捉える。

「初めまして、俺はリュウ。爺さんの……弟子ってとこだ」
『弟子ぃ?そうなのフェンリルゥ』
『弟子と言うか孫娘の婿じゃ』
『へ~ぇ、あの子のお婿さんかぁ。よくあいつが許したねぇ』
『あいつは許しとらん。儂が認めたからいいんじゃ』
『ふ~ん、フェンリルが良いなら良いけどぉ、その子も戦力の一つとしてぇ連れて行って良いのかなぁ?』
 え!俺も行くの!?帰って来たばっかりですけど‼

『うむ。どうせ人間は必要になるしの』
『それじゃぁ明日また迎えに来るねぇ。バイバイフェンリルゥ』
『明日は頼むぞ、ミドガルムズオルム』
 そしてミドガルムズオルムは蜷局を巻いていた身体をゆっくりと動かしながら去って行った。
 と言っても尻尾の先が見えなくなるまで大分時間を使っていたが……

「……俺も行かなきゃダメ?」
『ダメじゃ。あれは本当に厄介なんじゃ』
 はいはいわかりましたよ。付いていきますよ、コンチキショウ。

「それで俺と爺さんの他には誰が行くんだ?」
『若い衆と雌を除いた雄だけで行く』
 となるとざっと十匹前後ってとこか。

「本気でヤバいだろこれ。龍皇国はどのぐらいの戦力が集まってるんだ?」
『さあのう。ほとんどは『龍亜人《ドラコ・ニュート》』だとミドガルムズオルムは言っておったがの』
 へー、龍皇国は純血のドラゴンばっかりだと思ってた。
 人間の形した連中も居るんだ。

『と言ってもただの人間よりは強い』
 あっそ、どうせ俺はただの人間ですよ。

『とにかく明日には発つ。準備は入念に頼むぞ』
「分かった。死なないように頑張るさ」
『それでよい』
 全く、俺の周りはイベントが欠かさないなコンチキショウ‼