先月あたりにフォールクラウンでとてつもない武器が造られたらしい。
報告によればこの大陸の空を切ったとか。
冗談のような報告だが実際に雨雲を切った事で雨が止んだ……と言うか雨雲が吹き飛んだのを見た人が大勢いたので認めざる終えない。
今回の大騒ぎで私の国はこの武器を購入することに決定した。
私がより強力な魔物を退治するため、いずれは魔王を滅ぼすための先行投資としての購入だと言っていた。
確かにありがたい話だが、それならもう少し市民の生活にもお金を使って欲しいと考える私は甘いのだろうか?
いやきっとそんな事は無い。
どんな国だって民がいなければ成立しない。
これは事実だ、問題無い。
「ティア、また考え事?」
タイガが私の隣まで馬を進めて聞いてきた。
「……私ばっかり優遇されてるみたいで落ち着かないの」
「その事か。ティアは勇者として一番危険な所で戦ってる、その分多少良い武器を買って貰っても文句を言う人は少ないと思う。僕だって精霊の樹木を使った杖を買って貰ったしね」
「でも本当にみんなは豊かに暮らしてるの?安心して暮らしてるの?」
「ティアは心配性だね。大丈夫、みんな安心して暮らしてる」
タイガは私を安心させるように言う。
やっぱり私はメンタルが弱いと思う。
すぐ不安になり、気弱になる。
そしていつも助けてくれるのはタイガだ。
素直に嬉しい。
でも私が一番落ち着く相手は、と聞かれるとリュウと答えてしまう。
何故だろう?いつも近くで守ってくれるタイガよりリュウを選んでしまうのは。
「ティア。もう着くよ」
タイガに言われて顔を上げたとき、フォールクラウンの門が遠くに見えた。
フォールクラウンに到着後直ぐにドワル王に会うことになった。
一応国家間での話し合いになるので今回は滅多に着ない儀式用の鎧を着て謁見する。
噂ではドワル王はとても厳格な方で会うことが出来ても気に入らなければ二度と会えない、とまで言われる。
そんな王様相手に商談とは私の国も馬鹿なのではないかと疑ってしまう。
「勇者様とそのお仲間様、ドワル王様がお待ちです」
「みんな行こうか」
王様が時間を作ってくれたのだ、無駄にはできない。
みんなで謁見の間の門まで来ると緊張した表情になった。
ここに居るのはほとんどが前線で剣を振るう者ばかり、失礼が無いように気を付けなければならない。
そして門が開いた。
私達は王様を守護する兵士の人達を横目で見ると皆上等な鎧ばかりだった。
流石鍛冶師の国だ。
私達の国の鎧よりずっと良い物を身に付けている。
私達は玉座の前で跪く、そのままじっと待つ。
しばらくして近くから足音が聞こえた。
「面を上げよ」
声の指示のままに顔を上げた。
そこにはドワル王と弟のドルフ次期国王だった。
「我が造った剣を欲していると聞いた。どの剣を所望している」
ドワル王は厳かに聞いた。
「ドワル王様、我々は」
「我は勇者に聞いている」
パーティの魔術師団長が答えようとして止められた。
私を指名してきたので私が答えるしかない。
「先日、空を切ったと言われる剣を所望しています」
「ほう、あの剣か。何故あの剣を所望している。今の勇者の剣も中々の業物だと聞いている」
「確かに、しかし常に状況は動くもの。より良い武装で挑めば更に戦死する者は減り、世界の平和に繋がるでしょう」
ドワル王は何か考えるような素振りで私を見た。
「では一つ、いや二つ条件を出す。この条件を満たす事が出来たら造ってやろう」
「造る?売ってはくれないのですか」
「売ってやらん。しかし素材さえ手に入れれば同じ物を造ってやろう」
つまり自分達で素材を用意しろ、って事ね。
「その素材とは?」
「何勇者から見れば大した事は無い。フェンリルの牙とガルダの炎を用意すれば出来る」
「なっ‼」
フェンリルとガルダなんてどうやって倒せって言うの!?
ただでさえ伝説上の魔獣を二匹、見付けるだけでも大変だと言うのに!?
「ドワル王、それは勇者一人でという事ですか!」
「タイガ!」
「貴方失礼ですよ。今は兄上と勇者が話しているのです」
「まぁ待てドルフ。この者の質問は勇者にとっても大切な質問、目を瞑ってやれ。そして質問の答えだが無論パーティで向かって良い。だが忠告として精鋭のみ連れて行った方がよいぞ、ただの兵など肉壁にもならない。それとガルダは炎さえ手に入れれば構わない、無理に倒さなくてもよい」
つまり倒すのはフェンリルだけね。でも居場所は?それすら私達は知らない。
「その二匹の棲息地は分かりますか?」
「残念ながら」
「………そうですか」
「もう良いかな?」
「はい、お時間を作っていただきありがとうございました」
そして私達はドワル王に無理難題を押し付けられた。
報告によればこの大陸の空を切ったとか。
冗談のような報告だが実際に雨雲を切った事で雨が止んだ……と言うか雨雲が吹き飛んだのを見た人が大勢いたので認めざる終えない。
今回の大騒ぎで私の国はこの武器を購入することに決定した。
私がより強力な魔物を退治するため、いずれは魔王を滅ぼすための先行投資としての購入だと言っていた。
確かにありがたい話だが、それならもう少し市民の生活にもお金を使って欲しいと考える私は甘いのだろうか?
いやきっとそんな事は無い。
どんな国だって民がいなければ成立しない。
これは事実だ、問題無い。
「ティア、また考え事?」
タイガが私の隣まで馬を進めて聞いてきた。
「……私ばっかり優遇されてるみたいで落ち着かないの」
「その事か。ティアは勇者として一番危険な所で戦ってる、その分多少良い武器を買って貰っても文句を言う人は少ないと思う。僕だって精霊の樹木を使った杖を買って貰ったしね」
「でも本当にみんなは豊かに暮らしてるの?安心して暮らしてるの?」
「ティアは心配性だね。大丈夫、みんな安心して暮らしてる」
タイガは私を安心させるように言う。
やっぱり私はメンタルが弱いと思う。
すぐ不安になり、気弱になる。
そしていつも助けてくれるのはタイガだ。
素直に嬉しい。
でも私が一番落ち着く相手は、と聞かれるとリュウと答えてしまう。
何故だろう?いつも近くで守ってくれるタイガよりリュウを選んでしまうのは。
「ティア。もう着くよ」
タイガに言われて顔を上げたとき、フォールクラウンの門が遠くに見えた。
フォールクラウンに到着後直ぐにドワル王に会うことになった。
一応国家間での話し合いになるので今回は滅多に着ない儀式用の鎧を着て謁見する。
噂ではドワル王はとても厳格な方で会うことが出来ても気に入らなければ二度と会えない、とまで言われる。
そんな王様相手に商談とは私の国も馬鹿なのではないかと疑ってしまう。
「勇者様とそのお仲間様、ドワル王様がお待ちです」
「みんな行こうか」
王様が時間を作ってくれたのだ、無駄にはできない。
みんなで謁見の間の門まで来ると緊張した表情になった。
ここに居るのはほとんどが前線で剣を振るう者ばかり、失礼が無いように気を付けなければならない。
そして門が開いた。
私達は王様を守護する兵士の人達を横目で見ると皆上等な鎧ばかりだった。
流石鍛冶師の国だ。
私達の国の鎧よりずっと良い物を身に付けている。
私達は玉座の前で跪く、そのままじっと待つ。
しばらくして近くから足音が聞こえた。
「面を上げよ」
声の指示のままに顔を上げた。
そこにはドワル王と弟のドルフ次期国王だった。
「我が造った剣を欲していると聞いた。どの剣を所望している」
ドワル王は厳かに聞いた。
「ドワル王様、我々は」
「我は勇者に聞いている」
パーティの魔術師団長が答えようとして止められた。
私を指名してきたので私が答えるしかない。
「先日、空を切ったと言われる剣を所望しています」
「ほう、あの剣か。何故あの剣を所望している。今の勇者の剣も中々の業物だと聞いている」
「確かに、しかし常に状況は動くもの。より良い武装で挑めば更に戦死する者は減り、世界の平和に繋がるでしょう」
ドワル王は何か考えるような素振りで私を見た。
「では一つ、いや二つ条件を出す。この条件を満たす事が出来たら造ってやろう」
「造る?売ってはくれないのですか」
「売ってやらん。しかし素材さえ手に入れれば同じ物を造ってやろう」
つまり自分達で素材を用意しろ、って事ね。
「その素材とは?」
「何勇者から見れば大した事は無い。フェンリルの牙とガルダの炎を用意すれば出来る」
「なっ‼」
フェンリルとガルダなんてどうやって倒せって言うの!?
ただでさえ伝説上の魔獣を二匹、見付けるだけでも大変だと言うのに!?
「ドワル王、それは勇者一人でという事ですか!」
「タイガ!」
「貴方失礼ですよ。今は兄上と勇者が話しているのです」
「まぁ待てドルフ。この者の質問は勇者にとっても大切な質問、目を瞑ってやれ。そして質問の答えだが無論パーティで向かって良い。だが忠告として精鋭のみ連れて行った方がよいぞ、ただの兵など肉壁にもならない。それとガルダは炎さえ手に入れれば構わない、無理に倒さなくてもよい」
つまり倒すのはフェンリルだけね。でも居場所は?それすら私達は知らない。
「その二匹の棲息地は分かりますか?」
「残念ながら」
「………そうですか」
「もう良いかな?」
「はい、お時間を作っていただきありがとうございました」
そして私達はドワル王に無理難題を押し付けられた。